山本の気持ち
声が聞こえる・・・。
俺を呼ぶ声なのかはわからない。
だがたしかに聞こえるのだ。
俺の名前は山本。24歳だ。
現在は仕事をしていないが、働く気はある。
ニートではない。無職ではあるが断じてニートではない。
先日は面接にも行ったし、立ち食い蕎麦だが外食もした。
面接以外ではほとんど外出していないし、家族以外とは口をきかない。
ひきこもりに近いがひきこもりでもない。
話したいが口がうまく回らないだけだ。
俺は一体どうしてしまったんだろう。
今月の家賃もそろそろ払えなくなってしまうぞ。
現在の俺はパラレルワールドにいるんじゃないか・・・?
だって中学までは別に普通だったし。
きっとそうだ。
次寝て目が覚めたら小学校からやり直しだ。
真面目に勉強を頑張ろう。
恥ずかしがってないで女の子ともっと話そう。
斜に構えないで自分に素直に生きよう。
アキ子ちゃんは可愛くなるから唾つけておこう。
・・・わかってるさ。
誰よりも俺がわかってる。
この世界はパラレルワールドじゃないし、パラレルワールドなんかない。
だからダメ人間はダメ人間なりに生きていかなきゃいけないのだ。
仕事が嫌いなんじゃない。
けどすぐ辞めてしまうのだ。
後先考えないで辞めるのはダメな事だとわかっているが、でも耐えられないんだ。
人にバカにされるのも耐えられないし、つまらなくなってくると時間が無駄に思えるんだ。
どんな仕事をしてもこうなってしまうとしょうがないんだ。
周りが結婚だなんだといってる時に無職で時間を無駄にしていることを考えると辛い。
職歴も何個かあるけど1年ちょいしかないのが辛い。
働く気はあるんだ・・・。クソッッ。
小学校から野球やってれば今頃プロ野球選手になってたかもしれない。
MLBに挑戦して年棒23億になってたかもしれない。
中学から野球始めたから3年間補欠だったんだ。
だから最後の試合で4番のマッサージをずっとしていたんだ。
試合に負けたときレギュラーは泣いていたけど、俺は泣かなかった。
お前よく泣かないなって言われたけど、3年間真面目に頑張ってきて、補欠なのに泣けるかよ!
背番号渡された時に泣いてたんだよ!
でも可能性はあったんだ。
誰にでも可能性はあるんだ。
俺にも、あなたにも。
これから俺が内定をもらえる可能性もあるんだ。
彼女ができて結婚する可能性だって。
人は変われるんだ。
俺は変わるんだ。
今日から変わるんだ。