第九話 懐かしい雰囲気
大幅に遅れてしまってすいません!
ちょっと忙しかったのです……。
スーのキャラが書きやすいですね~。
では、第九話、どうぞ!
「これ、良いと思わない?」
「うん、可愛い! このリボンのところとか目立ちすぎないでワンポイントになってるしね~」
フィンとデューイは、リリーたちに半ば連れ回される形でたくさんの店を回っていた。
今は服とアクセサリーを見ている。
リリーとスーは互いに物を選びあいながら、会話を交わしてショッピングを目一杯楽しんでいた。
突然、スーが二着の服を持ってフィンたちの所へやってきた。
「ねえねえフィン、緑とオレンジ、どっちのが似合うかなぁ?」
「……どっちでも似合うんじゃないか?」
「もう! つれないなあ、フィンは……。デューイはどう思う~?」
急に話を振られて少し驚いたようすのデューイは、しかしきちんとスーに答える。
「僕はオレンジの方が明るくていいと思うよ」
「そっかぁ……。それも良いかも! よし、私はこの服にするよ~」
スーが買う物を決めたことで、リルが人知れず安堵のため息を吐いた。腕の中でずっと抱き抱えられて色々なところに連れて行かれたために疲れていたのだ。
次にスーと出かけるときは絶対に捕まらないようにしようと密かな決意をするリルであった。
「それで、リリーは決まったのか?」
フィンは心の中で早く決めてほしいと密かに思いながら、リリーの方に顔を向けた。
「うー……。これ、かな?」
リリーが手に持っていたバレッタを試しに髪につけてみる。
それは落ち着いた色合いのピンク色の太いリボンで、真ん中には淡い木のボタンがひとつ縫い付けてあった。
「いいね! 似合ってると思うよ。フィンもそう思うよね?」
フィンの先ほどのスーに対しての態度を間近で見ていたデューイが、すかさずフォローを入れた。
「うーんと……。ああ、良いと思うよ」
その答えを聞いてデューイが心の中でガッツポーズをしたのを、フィンは知る由もない。
「あ、ありがとう。じゃあ私はこれでっ!」
リリーがいそいそとつけたバレッタを外す。
フィンは二人の決めた物を受け取って会計に向かうのだった。
◆◆◆◆◆
店を出たフィンたちは宿に戻るべく歩を進めていた。
日も傾き始めて、辺りはオレンジ色の暖かい光に包まれている。
「ねえ、フィン」
「デューイ、なんだいきなり」
「次はどこに行く予定なの? 僕たちは護衛の仕事を引き受けて、そのままフリントに向かうんだ。その、良かったら……、一緒に行けないかな? 依頼主さんは頼めば大丈夫そうな雰囲気だしさ!」
「でも俺は護衛の仕事なんて引き受けたこと無いぞ?」
何しろ氷売りで生計を立てていたのだ。相場と比べればかなり安いとはいえ、飛ぶように売れるのだからフィンたちはお金にはあまり困らなかったのだ。
「じゃあ、万屋組合にも登録してなかったりする?」
「組合か……。聞いたことはあるけど、入ってはいないな」
「そういうことならこのスー様が教えてしんぜよ~う!」
「いちいち登場が突然だなお前!」
いまだにリルを抱き抱えたままのスーが話に入ってきた。
スーと一緒にいたはずのリリーは苦笑いを浮かべている。彼女の髪には先ほどの髪飾りがつけてあった。
「万屋組合っていうのはね、その名の通り所謂なんでも屋さんって感じだよ~。子守をしてほしーいっていう依頼もあれば、今回みたいに護衛の依頼もあるんだ。でもやっぱり腕っ節が強い人が集まっちゃうんだよね~。はいっ! フィン君、何故でしょ~うか?」
「……変異種がいるからだろ?」
「うん、正解! この世界は常に変異種の脅威にさらされていますからね~。じゃあリルちゃん、変異種ってな~んだっ?」
リルはスーにぐりぐりと頭を撫でられて少し不機嫌そうに尻尾を上下に振った。
しかしスーはしかめっ面になっているリルを知ってか知らずか、気にする様子は無かった。
「突然変異の動物で、知能が発達していたり、力が強かったり、毒を持っていたりする物のことだ。個体差が激しく、場所によっても変異種の出現率も違う。普通の人間にとっては紛れもなく危険な存在だな」
「正解正解大せいか~い! パーフェクトな答えで先生は嬉しいよリルちゃん! 話を戻すと、万屋組合に加入していれば、その場所ごとにある支部で依頼を受けられるんだよ~。変異種の討伐依頼から、町中の雑用まで依頼は様々! 手紙を辺境の土地に届けてほしいなんて依頼もあるくらいだしね~。私たちは万屋組合に登録していて、それを介して護衛の依頼を受けたんだ~」
「じゃあ、もしその護衛に加わるとしたら万屋組合に入る必要があるんだな」
スーはコクリとうなずいた。
デューイたちと一緒にいられるのは嬉しいが、護衛をするのはなんだかめんどくさそうだなあとフィンは小さく口に出す。フィンとしては嫌なわけでは無いのだが、口癖は言ってしまうものだ。
その声が聞こえたデューイは人好きのする笑顔を浮かべて、フィンの手を取って引っ張った。
「んっ?」
「近くに組合があるから今から行こう! 僕たちも登録するの手伝うからさ! フィンは戦力としても申し分ないし、追加でも護衛の依頼をきっと受けられるよ」
幼なじみたちに囲まれて、懐かしくてなんだか心の奥がほっこりとした気分になっていたフィンは手を引かれて小走りでついて行く。
そんな彼らを夕暮れが見守っていた。