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8話

タイトル変えたが、何かしっくり来ないなぁ…。

「……」

 桃、おいしい。

 さすが桃。

 蘭奈が切ってくれた桃をフォークでひたすら食べる。

 桃最高。食べる時に黙っちゃうの。桃。

 熱があっても桃は食べられます。桃だから。


「…………」


 ……………………あ。

 無くなっちゃった。

「むぅ」

「やっぱり桃だとよく食べるのね。まだあるわよ」

「あるの!?」

 食べる!

「でも、食べ過ぎは良くないから次で最後ね」

 はーい!


 ◆ ◆ ◆ ◆


「あ、おばさんにも電話した方がいいわね」

 いやいや言いながらも頑張って薬をちゃんと飲んだ妃結梨はソファでぐっすり眠っている。少し苦しそうだけど、今ちゃんと休んでるし薬が効いてくれば楽になるはず。

 おばさん、今の時間ならまだ電話に出られるはずだけど。登録してあったおばさんの番号から電話をかけると、すぐにいつものおっとりとした声が聞こえた。

『もしもし蘭奈ちゃん? 何かあった?』

「あの、私がちゃんと看てるんですけど。妃結梨が熱出しちゃって学校を休ま……」


 ピンポーン♪


 あら? こんな時間に宅急便かしら。

 電話で事情を話しつつ玄関に向かうとおばさんが息を切らしてそこに立っていた。髪も、いつも見る時は絶対にきっちり着こなしているスーツも今は乱れている。本当に、電話で妃結梨のことを言ってすぐに飛び出して来たみたい。

 それにしても、あの。いくら近いとはいえ秒単位で着く程の距離ではなかったような…

「ゆりちゃんは!?」

「さっき薬を飲んで、今は眠ってます」

 ハッとして、おばさんが今度は小さな声で話す。

「ゆりちゃんがお薬を?」

「ええ。時間はかかったけどちゃんと飲んだんですよ」

 上がってください、と来客用のスリッパを差し出す。仕事もあるんだろうと思ったけど、多分それでも妃結梨の顔を見ないとこの人は帰らない。

「ありがとう」

「いえ。今はリビングのソファで寝てるんです。学校への連絡も朝食を作るのも、寝室じゃ出来ないから」

 何でソファなんかで、って言われそうだから先に説明しておく。おばさんなら妃結梨のことはよく分かってるし、これで十分。

「迷惑かけるわね」

「そんな! 私が、妃結梨と一緒にいたいだけですから」

 本来なら、妃結梨を家に送ってあたしは学校へ行くべきなんだもの。つまりただの我儘。

「ねえ、蘭奈ちゃん。朝ご飯は食べた?」

「え? いいえ」

「良かった。キッチン借りてもいい? 私が作るから」

「もちろんですけど。仕事は?」

「休み取れたの!」

 ウインクをしてるおばさんだけど、きっと会社に電話した時は鬼の形相だったに違いない。前に一度、同じようなことがあった。そして電話に向かって怒鳴り声をあげるおばさんを見てしまったのだ。運良く妃結梨は2階の自室で爆睡してたために気付かないままだったが。当然普段の様子から想像もつかない姿で、絶対にこの人を怒らせてはいけないと理解した瞬間だった。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

「妃結梨はベッドで寝かせてあげて。出来たら呼びに行くから。よろしくね」

「はい。ありがとうございます」

  抱きかかえた妃結梨を今度はあたしの部屋のベッドに寝かせる。ここなら水道も簡易な冷蔵庫もあるから。今度向こうの部屋にも置いてもらうことにしよう。引き寄せた椅子に座ってギュッと妃結梨の手を握る。

「らな……」

「ん?」

「ぎゅーう……」

「はいはい」

 ベッドに入り、両腕で彼女の小さな体を包み込む。安心したのかそれ以上は何も言わず、すっかり眠ってしまったみたい。

 こうすることで安心するのは、妃結梨だけじゃない。あたしも、妃結梨に触れてないと落ち着かないのかも。特にこうしていられるようになってから。いつかどこかに行くんじゃないかって。ううん。いつかは、離ればなれになる時が来るんだって思ったら。


 触れていない時間が、辛い。


 抱きしめる腕に力が入る。

「ん……」


 抱きしめ合っている。

 この時がずっと続けばいい。

 離れたくない。

 きっと、この想いは妃結梨も……


「同じ、なのかしら…………」

前半、妃結梨がひたすら桃を愛でるだけという……。

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