6話
「ん……」
昨夜早く寝すぎたのか、真っ暗な時間に目が覚めてしまった。部屋を見回すと、時計が2:57と表示しているのが見える。
蘭奈はちゃんとゆりをギュってしてくれてて、ぐっすり眠ってるみたい。
「ひま……」
眠気はすっかり無くなって二度寝するのもな〜って感じです。本、読むかなって思うけどよく考えると動けないし。まあ、ベッドの方には繋がれなくなったから、その分楽なんだけど。
蘭奈を起こすわけにも…………
「ちゅー……」
したいな。
うう。このままじゃ届かない……。
「んーっ」
本人が気付いていないにしても、何だか緊張しちゃう。
……綺麗だな。蘭奈の髪。サラサラしてる。肌もすべすべ……食べちゃいたいくらい。柔らかい唇を指でなぞる。
「らな……」
今のゆり、変かも。
蘭奈、可愛い。触れたい。
我慢なんて出来ず、唇を奪う。
同時に、自分の中で、何かが外れた音がした。何度も何度も、繰り返し蘭奈の唇を奪う。
「んー……ひ、ゆり?」
「らなっ…らなぁ……」
薄く目を開ける蘭奈に覆い被さる。
蘭奈……どうしてこんなに柔らかいの? どうして蘭奈とのキスってこんなに甘いのかな。止められない……。
「はあっ、はぁ、はぁ……」
息が上がる。
「……っ、ひゆり、ずいぶん甘えん坊さんなのね…」
「らなぁ〜っ♡」
ゆり、どうしちゃったのかな?
何だか、変な気分だよ?
「眠れなくなっちゃった?」
「うん……」
ギュッと抱きつくと、頭をナデナデしてくれた。
「えへへ♪」
何でかな。今すっごく甘えたいの!
「じゃあ、久しぶりに絵本でも読んであげようか?」
蘭奈がベッドの傍に置いてある読書灯を点けながら言う。
「むぅ。ゆり、もう高校生だよ?」
確かに小学校の頃まで読んでもらってたけど。
「まだとってあるのよ。ちょっと待っててね」
まだ読んで欲しいなんて言ってないのに。
ベッドから離れた蘭奈は、部屋を出ようとする。
「あぅ!」
ダメだよ、ゆり、一人はやなんだよ。
「ゆりも行く」
「はいはい」
手を繋いで絵本の元へレッツゴー、なのです。暗いな。いっつもこんな時間に起きること無いから不安なの。蘭奈がいるから大丈夫だよね!
「蘭奈、これ重い……」
「……そう」
どこからともなく取り出された小さな鍵で、腕が自由になった。
腕を絡ませる。
「〜♪」
「機嫌が良いのね?」
「うん!」
辿り着いたお部屋に入るとたくさんの本棚。蘭奈はいっぱい本を読むから。難しそうな小説も、漫画も絵本もたーっくさん!
「えーっと、これ」
「懐かしい!!」
これ、大好きだった絵本!
お魚さんが海の中で大冒険するの! カニさんとか、タコさんとか、クジラさんにも出会うんだよね。
「見るの、小学校の頃以来だわ」
「読んで!」
「これもどう?」
蘭奈は同じ本棚から何冊か見覚えのある絵本を手にする。
「うん!!」
「部屋に戻りましょ」
「はぁ〜い!」
◆ ◆ ◆ ◆
「あら」
隣を見るとすぅすぅと気持ち良さそうに眠っている妃結梨が。
ついさっきまで目を輝かせていたのに、1冊も読み終わらないうちに寝ちゃった。妃結梨らしいわ。
「おやすみ」
額にキスをする。それから彼女の柔らかい身体をギュッと抱きしめた。どこにも行かないように。朝起きて、もし一人だったら……。それを考えて怖いと思うのは妃結梨も私も同じ。だから。
「ずっと一緒にいようね、妃結梨……」