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春知らず。

作者: 夏野 海

私は生まれてこの方、春、なるものを知らない。


春とはどのような奴なのか、とても気になるものよ。


おや、またお前か。


「ねえキミ、寒くないの」


毎回毎回飽きぬ奴よ。


いいか、私は寒さなど感じぬ。

お前には理解できぬかもしれぬがな。


「感じないだけだろ」


む、屁理屈を。


ん、これはなんだ?


「貸してあげるよ、マフラー」


まふら、とな?

ほう、ふかふか柔らかく温いものよ…。


「ほら、やっぱり寒かったんだ」


ち、違う!私はそのような…


「ほら、頬もこんな冷たい」


な、な、人間の子供が私に触れるなど!

ええい、手を離せ!


「暴れないで、雪、掃ってんだから」


雪など掃わんでよいわ!


「いいわけないだろ…こうも毎日毎日キミは何をしてるの?」


私は待っているのだよ、春なるものを。

前の私が言うのだよ、春は暖かく穏やかな奴だと。

一度会って話したいと思ってな…まさかお前が春か?


「前の私…?…春ってやつの姿はどんな感じ?」


それは解らぬ。

ただ、暖かき風を運び、動物や虫たちを眠りから呼び起こす面倒見のいい奴、だと。


「…それ見れないよ」


何故わかるのだ。


「それは季節の春」


きせつ?


「うん、そうだなあもう一週間もすれば足音が聞こえてくるよ」


足音が聞こえる?


「そういう表現だよっと…そろそろ行かなきゃじゃあね」


あっ…おい!…まったく忙しないやつよ。

ふむ、春か…ますます会いたくなった。

しかし、最近は疲れやすくなった、前の私はどう過ごしていたのだろうか。

…まあ寝るに限るか。





「おはよう」


あ…ああ、お前か。


「どうしたの、元気ないね」


うむ、最近めっきり体力が落ちて…な。


「え、もう大分温かくなってきてるし、もうすぐキミの楽しみにしてる春が来るのにだらしないな」


なんと…それは、本当か。

ならば私も、気合いを入れねば…。


「具合悪そうだね、病院行きなよ」


無駄だよ、病院など私にはな。


「…注射が怖いのか」


何故そうなるのだ。

そう前の私が言い残しておるのだ。


「また、前の私って…なんなのそれ」


わからんが、前の私の言葉は絶対なのだ。

前の私が私に言い残しているのだ。


私は春と入れ替わり、春は夏と入れ替わり、夏は秋、秋はまた新しい私にとな。

巡っておるのだと。そう言っておった。私にはそれ以上の記憶が無いからな、それに縋ろうと思ってな。

残念ながら気づいたらここにおったから秋には会えなんだ。

ならば春に、と。


「…それって、」


あ、おい…お前が前言っておった、ちゃいむなるものが鳴っておるぞ。


「あ、うん、でも…」


早う、行け…今日は話し過ぎて、私も、疲れた。

ちと眠る。


「えっ…え、え、あ、あれ?消えた」


消えて、など…おらんよ。ただ、眠い…だけだ。

暖かくて、な。






奇妙な奴が、毎日通学路に座っている。

マフラーもコートも着ずに、座ってじっと何かを待っている変な奴。


最初は不審者かと思って知らないふりしてたけど、じっと黙って座ってるそいつを見てるとなんだか寂しそうだと思ったから声をかけてしまった。

声をかけてみると姿同様話し方も奇妙な奴だった。

だけど、春を待っていると純粋な瞳を見てると悪いやつじゃない事は解った。


そいつがある時言った。


自分は春と入れ替わり巡っているのだと。


あいつの正体ってまさか。


そう思った時にはもう奴はいない。

あんなに毎日いた場所にもいない。


俺はもうコートも手袋も着けていない。


春が来ていた。


そして冬が去っていた。

投稿させていただきました。

少しの方でも見ていただけると嬉しいです。

自分はこんな雰囲気作品が好きなので、なんだか自己満足のお話ですが。


意味が解らん!という方への訳

主人公は、季節の冬で、サブキャラの子は季節を見ることができる子。

冬は秋と春にタッチ交代されるっていう理を本能で知っていて春に出会いたがっている。

で、最後に主人公が季節の冬だと気づいた頃にはもう春が来ていた。

となります。

うーん、訳もいまいち!

すみません。かなりの自己満足でしたが、もしここまで読んでくださっている方がいらっしゃったら幸いです。


それでは有難うございました。

また出会えることを祈っております。

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― 新着の感想 ―
[一言] ほのぼのとした世界観が魅力です。 冬だけど、少年を通して温かさを感じました。 冬は春や秋を知る事は出来なくても、少年を通して春に似たものを得たんでは、とそんな気がしました。 どこか優しくて穏…
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