彼の語る昔話
どうしたんだ、眠れないのか?
なら、お父さんが面白いお話をしてあげよう。
むかーしむかしの話だ。あるところに平和な都があった。
たくさんの人が暮らしていて、たくさんの人が笑っていた。
だけどもあるとき、禍の森と呼ばれる場所に強くて恐ろしい妖怪があらわれたことによって、それまでの平和は崩れ去ってしまった。
禍の森で生まれた妖怪はそこに根を張って、次々と妖怪を増やしていった。その妖怪たちは人を襲い、人間たちは次々と殺されていった。
中には陰陽師っていう人がやっつけた妖怪もいたんだけど、数の違いってやつで次第に状況は悪くなっていった。
そうして都の人たちは困ったわけだ。
妖怪たちを退治するには、そもそも禍の森にいる妖怪の親分をやっつけなきゃいけない。でも禍の森っていうのは瘴気が強すぎる場所で、普通の人では近付けない。陰陽師なら近づけるんだけれど、彼らは都を守るのに精いっぱいだった。それに、陰陽師が力を合わせても妖怪の親分をやっつけられるかどうかは分からなかった。
その都で一番偉い人を帝というんだけど、実はその人は解決策を知っていたんだ。
代々史書に残されていた方法があってね、都にどうしようもないピンチが迫った時にの解決方法があったんだ。
どうするかって?
実はね、違う世界から強い強い人を呼び寄せる術を使えたんだ。どんなに強い敵でも倒せる強い人を。
帝たちはその呼び出した人のことを剛の者って呼んでいた。
剛の者は違う世界の人間だ。しかも承諾なしにいきなり連れてくるようなものだから、よっぽどのことがなければ使ってはいけないという決まりがあった。でも、そのときすでに帝に残された選択肢はほとんどなくて、悩んだ結果帝は剛の者を呼び寄せる決意をした。
史書には剛の者に冷たく当たって失敗した人たちの記録もあったから、帝は精一杯親切に優しく彼らをもてなして、妖怪の退治を頼んだんだ。
呼び出された剛の者は二人。まだ十代の男の子だった。彼らは渋ったけども、妖怪の親分さえ倒せば元の世界に戻れると知って、最終的に引き受けることにした。
彼らには苦難が待ち構えていたけれど、帝が彼らのサポート役にとつけた不思議な女官の働きもあって、強くなってなんとか禍の森にたどり着くことができた。
……もう眠そうだね。続きはまた明日。
おやすみ、若葉。