純白と幻想と
高二終わりの春、急に転校生が来た。
もう少しで春休み、薄着にするにはまだ少し肌寒い頃、その子は教室に初めて来た。
このタイミングで?とは、思わなくはなかった。
白い肌と、白い髪。
先天性色素欠乏症、いわゆるアルビノらしい。
第一印象は、とっても儚げな感じ。
ふとした拍子に、いつの間にか消えてしまっていそうな。
指先に舞い降りた雪の結晶のような。
そんな子だった。
「白雪 響って言います、よろしく!」
自己紹介は、そんなイメージを、体感二割くらい吹き飛ばした。
眩しいくらいの笑顔で、目の横にピースサインを添えていた。
しばらく一緒に過ごすと、意外にも儚げという評価がぴったりというわけではないことが分かった。
気分によって他人に引っ付いたり、一人を好んだり。
たまに深そうで深くない、変な事を言ったり。
不思議な子だった。
そんなある日…その子が、たまたま私に引っ付いていた、春休みのある日。
その子は、屋外にも関わらず、真っ白な素肌を守るパーカーを脱ぎ捨てた。
その子にとって、日光は天敵。
しばらく当たっていると、酷い火傷になるらしい。
「太陽って、いいよね」
心配する私をよそに、その子はそう言っていた。
「あったかくて、優しく抱きしめてくれて」
その子の肌にはグサグサ刺さっているけど。
「自分には、ちょっと強すぎるけど」
分かってるなら止めようよ。
「自分、陽の光が好きなんだ」
うん、聞いてたら分かる。
「なんか、自分って生きてるんだなーって感じがして」
………?
それだけ話して、後は無言の時間を過ごした。
居心地は悪くなかった。
その子は帰ってから、両腕と顔の火傷で病院送りにされてた。
ベソかきながら、車に乗せられてた。
その日から、私に引っ付く頻度が増えた気がする。
高校卒業と同時に、その子とは疎遠になった。
その子とは、もう連絡を取ってない。
私のことなど、とっくに忘れているだろう。
意外だったのは、私以外の同級生は、その子の事の一切を誰も覚えていなかった事だ。
不思議な子だったなぁ。




