第37話:心の決断
ドカァァァァァァァンッ!!
地上では、死闘が限界を迎えようとしていた。
「チッ……、取り込んだモモの権能を修復システムに直結してるな。爆破しても元に戻りやがる。ジュエル!残りの酸素は!」
『マスター、酸素残量30秒。……爆発の反動による回避も、次が最後です!』
無敵モードの輝きが薄れ、マスターは背後に迫る『鉛天太子』の巨大な拳を紙一重で爆破回避する。
耐火スーツの酸素残量がなくなり、ジュエルは、マスターから分離して自身の身体を形成すると同時に、余剰液体金属から大槍を生成して、鉛天太子へめがけ高速で投擲した。
大槍は巨像の胸部に直撃し、身体を構成する瓦礫を広範囲に粉砕するが、やはり、モモの『癒し』の権能が、新たな瓦礫を繋ぎ合わせ、元通りに修復してしまう。
「……最悪だな。……時間切れかよ」
マスターが毒づいた、その瞬間だった。
地響きを立てて迫っていた巨像の動きが、糸が切れた人形のようにピタリと止まった。
「……ふぅ、止まったか。ルナめ、危うくこの歓楽街に永住するところだったじゃないか」
「お疲れさまでした、マスター。……本当に残念です。あと三十秒あれば、あなたの大好きなこの地で、一緒の墓に入れるチャンスでしたのに」
「……もしかして、まだ怒ってる? 僕が遊びまくってたこと」
「……フフ、どうでしょう」
◇◇◇
一方、地下のシステムコア前。
襲いかかっていたクローンたちが、粒子となって霧散していく。
「……消えた? ……助かったぜ」
サブがその場に大の字になって倒れる。
傍らにいる蓮司も、肩で息をしながら両腕の黒い破門のエネルギーを解いた。
「終わったのね……ワク、エマ……!」
ルビーは祈るように、今もなお光の線を支え、絶叫に近い喘ぎを漏らすルナの背中を見つめた。
深層世界――。
鉛色の心臓が、その脈動を静寂へと変えていた。モモが心臓の声を聞き取り、驚きに目を見開いた後、ワクへと向き直る。
「……心臓が言ってるわ。自分が間違っていた、君たちの言う通りだって。……その刃物で刺せば、一体化した住人たちの縁は分断され、みんな元に戻ると言ってる……。……でも、そうしたらこの子は……。……償いとして、最後に過ちを正そうとしているのね」
ワクは、『魂の留置』により繋がれたパスを意識し、地上において、身を削ってそれを支えている少女へと問いかける。
「……ルナ。……俺たちの想い、感じられるか?」
モモは困惑する。
「あなたたち、一体何を……」
隣でエマが、慈愛に満ちた表情で心臓を見つめる。
「大丈夫。安心してください。ルナ様なら、きっとやってくれます」
――地下、光の奔流の中で。
鼻血を流し、全身の血管が浮き出るほどの負荷に耐えながら、ルナは力強く笑った。
「……私に、任せなさいッ!! ……やって……やるわよ!!」
その言葉が、光の線を伝って深層のワクに届く。ワクは確信を持って、手にした『絶縁』を逆手に構えた。
「……流石、俺の相棒」
ザシュッ!!
ワクが渾身の力で突き立てた『絶縁』は、迷いを断ち切る一閃となり、巨大な鉛の心臓を真っ二つに叩き割った。
まばゆい光が溢れ出し、すべてが飲み込まれていった。




