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『AIが管理する理想のVR世界でミュートされたらどうなるか』~幸福な王子編~  作者: バニラ味一択


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第26話:決戦




「兄貴……。教官とリンをお願い」


 ルナはサブの前に立ち短く告げた。

 ルナの声には、もはや迷いはない。彼女はゆっくりと、冷酷な眼差しで自分を見下ろす蓮司を真っ直ぐに見据えた。


「蓮司……。私はあんたの言う燕会の家族愛に勝てないと思った。……純粋で、死をも厭わないその絆に比べて、私は嘘ばかりの偽物なんじゃないかって」


 ルナの一歩が、リングの床を強く踏みしめる。


「……兄貴が教えてくれた。たとえ私が汚くて、醜くて、消えない落ち度があったとしても……それでもいいんだと。そのせいで、私が誰かを想う気持ちまで偽物になるわけじゃない!私は、みんなを愛してる。……この気持ちを信じることに、資格なんていらない。あんたに否定される筋合いなんて、一ミリも無い!」


「……フン、随分な言い草だな。なら、その青臭い愛とやらを、力で証明してみせろ」


 蓮司の不敵な笑みに応じるように、ワクがルナの傍らに並び立つ。


「……行くわよ、ワク。今度こそ、皆を守る」


 ルナの声には、もはや迷いはない。サブが繋いだ命、ルビーが守った魂――そのすべてを背負った彼女の瞳は、鋭い狩人のそれへと変貌していた。


「もちろんだ、ルナ。……フルアクセス開始。俺たち二人の視点からの演算だ。指示を頼む」


「エマ!お願い!」


『ルナ様、実行します。 武装生成のリミッター解除。シンクロ・ジェネレート開始。ワク、全力でルナ様を守ってください!』


 彼の右手に青い火花が散り、武装が実体化していく。


「ーー【伸縮式強襲用特殊警棒・雷電】」


 現れたのは、標準装備を遥かに凌駕する、超高圧電流を纏った帯電式特殊警棒。


「ほう……考えたな。俺の『絶縁』を受けるために帯電させたってわけだ」


「兄貴のお陰よ。『絶縁』で失われた特性は戻せる」


「組長、二種類の特性で同時攻撃すれば、片方は防げないんじゃないか?」


 ワクが警棒の先端を蓮司に向けて吠える。

 だが、蓮司は不敵に笑い、漆黒のドス『絶縁』を低く構える。

 その瞬間、空気が爆発した。


「左、45度! 袈裟斬りが来る!」


 ルナの脳内と視界に、エマの演算による未来予測線が走る。


「シッ!!」


 ワクはルナの指示と同時に踏み込み、最小限の動きで蓮司の斬撃をかわすと、超高速の攻撃を叩き込む。警棒とドスが激突し、電流が消失する。地下空間にキィィィィンと耳を劈く金属音が反響した。


「……速いな。だが、これならどうだ!」


 蓮司の振るう『絶縁』が、空間そのものを切り裂くような軌道を描く。触れれば存在を断たれる死の刃。


「ワク、もう一度電流を!!右!フェイントからの回転切り!」


「分かっている! 」


 ルナの的確な指示を受け、ワクは警棒で巧みに刃を逸らし、蓮司の死角へと回り込む。

 ワクの洗練されたCQC(近接格闘術)と超人的な反応速度。そこにルナの俯瞰視点による戦場把握が加わり、あの蓮司を相手に一歩も引かない、それどころか押し気味の攻防を繰り広げる。


「へぇ……。ただのAI犬かと思ってたが、なかなかやるじゃねえか」


 蓮司の瞳に、狂気混じりの愉悦が宿る。彼は一度大きくバックステップを踏み、『絶縁』を持たない空の手の方を大きく広げた。


「だが、いつまでもお遊戯に付き合ってられるほど、俺ぁ気が長くねえんだよ……」


 蓮司の全身から、これまでとは比較にならない濃密な『魔』のオーラが溢れ出す。


「来るわよ、ワク! 最大警戒!」


「あぁ……」


 その構えは、まるで獲物を捕らえる鳥の羽ばたきのようだった。


「――燕散条つばめさんじょう




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