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CODE: SILVER -世界を解く瞳-  作者: GODS04


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第2章:天才の定義

第2章【前書き】

前回、4歳で父・春雄の危機を救った佳乃。

時は流れ2028年、彼女は6歳になりました。


今回のターゲット(?)は、凄腕プログラマーである母・れん

プロのプライドと技術が、娘の圧倒的な「感性」の前に揺らぐ夜。


天才少女の覚醒、第2幕です。


◆ 2028年・6歳の修正パッチ


「……嘘。またエラー?」


深夜2時。蓮水家のリビングには、冷たいキーボードの打鍵音だけが響いていた。


母・蓮(35歳)は、愛用の高性能ラップトップを睨みつけていた。

彼女はフリーランスでありながら、大手セキュリティ企業の顧問も務めるトップエンジニアだ。

現在、彼女が取り組んでいるのは、某メガバンクの次世代セキュリティシステムの構築案件。

報酬も責任も、桁違いのプロジェクトだった。


「……ここも違う。論理構造は完璧なはずなのに、負荷テストでボトルネックが発生する……」


蓮は焦っていた。納期は明後日。

これまでの経験と知識を総動員しても、システムの深層部に潜む「見えない詰まり」が解消できないのだ。


「あー……神様、仏様、蓮ちゃん様……」


ソファで仮眠をとっていた父・春雄(36歳)が、寝ぼけ眼で起き上がってくる。


「まだやっとるんか? もう寝たら? お肌に悪いで。」


「寝て解決するなら3日前に寝てるわよ。……春雄、コーヒー淹れて。濃いやつ。」


「はいはい、仰せのままに。」


春雄がキッチンへ向かう。

蓮はため息をつき、再びコードの海へと潜った。

数万行に及ぶソースコード。そのどこかに、致命的な欠陥がある。


◆ 色彩の違和感


「……ママ、うるさい。」


ふと、背後から声がした。

蓮が振り返ると、パジャマ姿の佳乃(6歳)が目をこすりながら立っていた。

銀色の髪が寝癖で少し跳ねている。


「あら、ごめんね佳乃。キーボードの音が大きかった?」


蓮は慌てて手を止めた。

佳乃は首を振ると、ふらふらと蓮の膝元へ歩み寄り、画面を覗き込んだ。


「……音が、気持ち悪い。」


「え?」


「そこの青い線、ぐちゃぐちゃに絡まってる。……見てて痛い。」


佳乃は画面の中央、メインの認証アルゴリズムの部分を指差した。

そこは蓮が「完璧」だと自負していた、最も自信のあるコード部分だった。


「佳乃、そこはママが一番苦労して作った場所よ。間違ってないわ。」


「ううん。ちがう。」


佳乃は蓮の膝によじ登ると、小さな手でキーボードに触れた。


「……直していい?」


「え、ちょっと待っ――」


止める間もなかった。

佳乃の指が動き出した瞬間、蓮は言葉を失った。


速い。

そして、迷いがない。


6歳の子供がピアノのおもちゃで遊ぶような手つきではない。

まるで、最初からそこにあるべき音を奏でるかのように、流れるようなタイピング。

佳乃の碧眼は、画面上の文字列を追っているのではない。

彼女には、コードが「形」や「色」として見えていた。


(ママのコードは綺麗だけど、ここだけ色が濁ってる。……だから、ほどくね。)


佳乃がバックスペースキーを連打し、蓮が3日かけて書いた数百行のコードを消し飛ばした。


「ああっ!? 私の傑作が!!」


蓮が悲鳴を上げるが、佳乃は構わずに新しいコードを打ち込んでいく。

それは、蓮の記述よりも遥かに短く、シンプルで、そして残酷なほどに合理的だった。


「……できた。きれいになった。」


佳乃はエンターキーを「ターン!」と押し込むと、満足そうにあくびをした。


「……おやすみ。」


そう言い残し、彼女は再び寝室へと戻っていった。

嵐のような3分間だった。


◆ 敗北と誇り


「……おい、蓮ちゃん。特製コーヒー淹れたで。」


春雄が湯気の立つマグカップを持って戻ってくる。

しかし、蓮は椅子に深く背を預け、天井を見上げていた。


「……あ、ありがとう春雄。でも……」


蓮は力なく笑った。


「そのコーヒー、もう要らないかも。……私、寝ても大丈夫そう。」


「は? どういうことや? バグ、直ったんか?」


春雄が不思議そうに画面を覗き込む。


『SYSTEM STATUS: ALL GREEN』

『PERFORMANCE: 300% IMPROVED』


エラーは消滅していた。

それどころか、処理速度が以前の3倍に向上している。


「……嘘やろ。これ、蓮ちゃんがやったんか?」


「ううん。……佳乃よ。」


蓮は画面上の、娘が残した短いコードを指先でなぞった。


「私のコードを『気持ち悪い』って消して、書き直していったわ。……悔しいけど、完敗。」


「マジか……」


春雄も絶句する。

蓮は、娘のコードを見つめながら呟いた。


「あの子のコード、美しいのよ。無駄がなくて、透き通ってて……まるで詩みたい。」


「……そら、すごいな。」


「ええ。私たちが教えてあげられることなんて、もう何もないかもしれない。」


蓮は、マグカップを受け取らずに、そのままソファへと倒れ込んだ。

プロとしてのプライドが折られた痛みよりも、心地よい疲労感と、我が子の成長への驚きが勝っていた。


「天才がおる家は大変やなぁ。」


春雄が苦笑しながら、蓮に毛布をかけた。


「……おやすみ、蓮ちゃん。」


「……うん、おやすみ。」


その夜、母は技術者としての敗北を知り、同時に「この才能を誰にも潰させない」という、新たな覚悟を胸に眠りについた。


第2章・完


第2章【あと書き】

お読みいただきありがとうございます!


「色が汚い」という理由で、母が心血注いだ数万行のコードを全消しする6歳児……。

エンジニアの方が見たら冷や汗が出る展開だったかもしれません(笑)。


前回の父に続き、母もまた、娘の領域が「教えられるレベル」を超えていることを悟りました。

「詩のように美しいコード」という表現は、後の佳乃のハッキングスタイルの片鱗でもあります。


もし「面白かった」「天才すぎる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、いいね!をいただけると執筆の励みになります。

本編『ECHO』の方も、引き続きよろしくお願いいたします!


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