25.ギルドと補充
ギルドで解体所、鑑定所、受付と回る。
解体所では獲物の少なかったことをセスに残念がられ、ワーウルフは仕方ないと逆に慰められた。
まだ7層以降の帰還者がいないため、解体所は暇している。脚ごと取ってきたウルフの爪と、ハンターウルフの解体だけお願いした。
「完全体! ありがとうございます!!」
「やったーいい毛皮!」
ぶつ切りじゃないハンターウルフ一匹は大変喜ばれた。
あとは全部、魔核。番号札をもらって、次へ。
鑑定所へ回って順番待ち。荷物を持たないフードの小僧は目立つらしく、周りからジロジロと見られるが知らないふりだ。
「こんにちは。今日も宝物ですか」
鑑定所は今日もハルシェだ。
「あとワーウルフの武器と籠手」
「もしかして11層から先はワーウルフが出るんですか? 怪我はありませんでしたか」
心配されてしまったが、怪我はない。首を振る。
「さすが魔術師ですね。ワーウルフの装備も取り扱っておりますよ」
鑑定してもらったところ、毒袋が高く売れた。これ自体が高いというより、情報として高く売れるらしい。解毒薬とかあると便利だもんな。
あとはリーダーの剣と籠手、アサシンのナイフがちょっと高くて、あとは安物。
次に宝物を鑑定してもらう。
「おや、今回は箱で持ってきたんですね」
「ワーウルフだったから」
持ち帰るものが少なかったんです。
「そういうときに中型箱が出てくれれば、私も箱を拝むことが出来ますのに」
「持ち込めるよう頑張る」
「ふふ、楽しみにしています」
ピッキングしてもらって、中身は予想通り魔導具と発動体。
でも俺はちょっと欲しい魔導具が出来た。
「『刃』があったら欲しい」
「『刃』は風の三等ですね……、今回は火の五等と発動体の五等がふたつでした。以前預けられた分に風の三等がありましたので、確認しておきましょうか」
「ん、買い取る」
『刃』は『切断』の魔導具だ。解体に使いたい。いちいち魔術触媒を消費せずに使えるなら、便利に扱える。戦闘に使わないなら、ネックレスで首にかけたりしておいて、付け替えて使えばいいだけだし。
それにワーウルフ相手だったら、『盾』と付け替えて使ってもいい。
んーー、こう考えると三つ使うことに習熟するべきなんだよな。手に入ったらちょっと練習するか。
探してもらうのをお願いして、鑑定所を後にする。鑑定所では本来、魔導具を買うことは出来ない。
なので、今回は俺が持ち込んだ魔導具の中に『刃』があれば買い取らせてもらえるが、なければ手に入らない、ということらしい。取り寄せとかは出来ない仕様。
しかしこうして欲しいと伝えておけば、入荷したときに連絡がもらえたりするんだって。
魔導具は街に専門店があって、そちらで買える。でももちろん高い。ギルドで持ち込んだものを売却額で買うのとはわけが違う。二倍から三倍するらしいと掲示板で見た。
その後は受付へ行き、やはり20層到達を驚かれ、守護者はワーウルフの混成集団といってまた驚かれた。
「ソロでワーウルフパーティーと戦って無傷とは、さすがエリークさんの推薦する人材ですね」
「ん」
エリークだったらもっと魔術触媒の消費も少なめで、スマートに倒すことが出来たんだろうな。俺も接近戦が出来るよう、鍛えた方がいいかもしれない。逃げ足と勘だけで生きてる。
鑑定所に毒袋を回したことも伝わったようで、それについてはかなり感謝された。やはり解毒薬や、耐毒薬が作られるらしい。
「新しい睡蓮の宝玉は、20層が壁になりそうですね」
受付嬢は憂い顔だ。ワーウルフの混成集団は、なかなか強敵らしい。俺だって初手魔術がきかなければかなり苦戦していただろうから、さもありなん。とにかくワーウルフはめんどい、嫌い。
俺が深層で暮らしていたときも、ヒト型はめんどくさかった。
俺がいたところにいたのはスケルトンだったんだけど、あいつ光膚と火牙の混合『聖火』でしか死ななくて、倒すまでにすごく苦労した。骨しかないから足が遅いのだけが救いだった。
でも聖なる火で焼き尽くすと浄化されるのか、骨は光の魔術触媒になる。だから倒せるようになると永久機関だったんだよな。まあ当時は武器とか落とされても、剣とか重すぎて振れないからゴミだったし、特に好んで戦いたい相手じゃなかったけど。一応、二刀流とかならないように、武器は安寧の間にまとめて放置してた。
もし深層へいく冒険者がいたら、役立ててほしい。
ギルドを終えたら魔術触媒屋へ行って、先日頼んだ分を受け取り、新しくウルフ類の爪と牙を預けた。手数料は銀貨2枚。
水鱗を大量消費したので買い求める。金貨3枚。
「高い」
「ロータスじゃ水鱗はあまり取れんからこんなもんだ。魔魚でも釣ってきてくれ」
「んん……」
水鱗が高いのは盲点だった。『氷結』便利だけど、他の魔術にしたほうがよさそうだ。『浄化』に使うのも悩ましい。
「多く入ってくるのは?」
「今後の魔物の分布にもよるが、浅層に角系が多いみたいだし、風角だろうな。あと10層がバイコーンらしいから、闇骨」
風角かあ。
風は『切断』に使うからありがたいけど、逆をいうと切れてしまうから血臭が強くなるし、『風刃』なんかバラバラになるからめちゃくちゃ使い勝手は悪い。
うーん、魔術を学びたい。俺の魔術は掲示板頼りで、あまりたくさんの魔術は知らないのだ。
「何かお困りか?」
頭を悩ませていると、カウンターに肘をつきながらニールが言う。
「『氷結』だと、金かかる」
「何かと便利だもんな。んー、行動阻害で闇なら『影縛』がある。攻撃力はないがな。あと風なら……、そう、『突風』は便利だな」
「っ、ありがとう!」
『影縛』は「止まれ」、『突風』は「吹け」だな。魔術を知った途端、呪文が浮かぶのは助かる。神聖語さまさま。しかしノアに感謝はしない。日常言語にまだ不自由してるんだからな……!
「坊っちゃんも早く杖が手に入ると、安心なんだがな」
ニールには俺が呪文使いだとは言ってなかったんだっけ。まあ今更だからいいか。
魔術師の憧れはやはり杖型の発動体だ。マージンが取れる分、接近戦をしなくてもよくなるし、指向性も高くなる。
杖を持っているのに接近戦をしてるエリークみたいなのもいるけど、やはり普通の魔術師は後衛だってさ。
「杖は中型箱?」
「らしいぞ。希少だから、貴族と金貨袋で殴り合いになるってよ」
「エリークは金持ち」
「そういうこった」
闇骨と風角は自分で取ってきた分があるので、買う必要はない。手持ちの魔術触媒を改めて考え直して、ちょっと少なくなっていた光膚も購入した。金貨1枚。こっちは安い。
「光の魔物、いる?」
「前の10層守護者は毛皮が光膚だったんだ。でもいなくなったからな。値上げするかもしれん」
んん、それは残念。バイコーンを『聖火』でこんがり焼けば光膚が入手できそうな気もするが、骨をこんがり焼ける場所がないしなあ。
街って、快適だけど不便だ。
魔術触媒屋を後にして、花の春風亭へ戻って就寝。
今日もお湯をもらって拭ったけど、髪がベタベタして気持ち悪い。手拭いで頭皮を拭うけど、限界がある。
『浄化』と風呂で揺れる。やはり風呂かな……。
風呂に入りたい!!




