24.11層から20層
翌朝、今日は20層まで行ってみようと思う。
やはり混雑している宝迷宮の入口を越えて、さっさと転移の間へ移動。10層を選んで転移。
10層とはいうが、転移するのは11層だ。守護者の間へ転移するわけじゃない。
気配を探ると、疎らながら人はいる模様。エリークと同じように、途中の階層から肩慣らしに入った人たちかな。
どういう人たちかわからない以上、なるべく避けるに越したことはない。人の少ない道を進むことにした。
人を避けるために糸の示す方角とは違う方向へ行くのはドキドキするが、糸はいたるところに張り巡らされている。ひとつくらい手離したとしても、迷いはしない。
11層からの敵はウルフ系列だった。肉食獣は厄介だ。
なるべく避けるけど、向こうは鼻が利くのでどうしても戦闘になる。『槍』で一撃で倒せるとはいえ、魔核を抜かなきゃいけないのでどうしても血の臭いがついてしまう。そしてウルフを呼び寄せる悪循環。走って逃げても追いつかれるし、本当に厄介だ。
ウルフは牙と爪、骨が魔術触媒になる。毛皮が売れる。でも肉はいらない、食べられないこともないが食べづらいと聞く。
悩んだけど小型のグレーウルフはもう、魔核だけ取って置いていくことにした。通路でのんびり解体なんてしてたら、魔物の的になってしまう。
道中ウゴウゴしているスライムや虫、宝迷宮が片付けてくれるだろう。ちなみにスライムも虫も、食べ物で進化したりしないので安心。
さくさく小走りにひたすら進んで17層にきた。
魔物の家に遭遇、グレーウルフとハンターウルフの群れに襲われたが、『氷結』で事なきを得た。水鱗を多めに買っておいたので、ためらわず使えてよかった。
とりあえず上位のハンターウルフ一匹は見事な毛皮だったので、これは丸ごと仕舞う。魔法鞄がひとつ満杯。
残る十七匹のグレーウルフは、残念だけど牙と爪、魔核だけ取ってスライムの餌だ。牙は根本から折って取る。
魔物の家は、攻略すると安寧の間になる。小さな宝物が現れたので、開けずに魔法鞄へ。
17層まで小走りに休みなく来たのでちょっと疲れた。掲示板で確認すると、所要五時間ほど。腹が減ってきたはずだ。マーモットの干し肉を齧り、水を飲む。
竈があれば火をつけて食事が作れたが、竈を作るのは時間がかかる。手軽なキャンプ用品を買うのもいいかもしれないな。トライポッドと焚き火台があれば、簡易な煮炊きくらいは出来そう。なお宝迷宮は密閉されていないので煮炊きをしても問題ない。煙は天井へ消えていく謎仕様となっている。
しかしこの分だと、20層まで行って帰ったら夜になってしまう。夜の街は危険だ。それなら安寧の間で休んだ方が、いくらかマシな気がする。20層で夜を明かすのもいいかもしれない。
魔物がウルフ系列でさえなければ、安寧の間を渡り歩いて宝物探しをしてもよかったのだが、残念。
18層から魔物がワーウルフになった。直立二足歩行タイプの、武器を使う狼だ。これまた厄介。『槍』が防がれてしまうので、やむなく魔術で対応することになる。
ワーウルフの何が嫌って、知能も高く危険性が高い割に、得るものが少ないところが嫌。取れる魔術触媒はほとんどないし、毛皮も貧相で、素材としての価値は低い。冒険者にはヒト型の魔物は嫌われている。
『切断』の魔術を使って武器ごと腕を飛ばしてしまうのが速いと気づくまでに、かなり魔術触媒を無駄にしてしまった。悔しい。
腕を飛ばした時点で戦意喪失するが、さすがに魔物を逃がして先へ進むわけにはいかないので『槍』で止めをさす。
ワーウルフの武器はそんなに質のいいものではない。安いので初心者の頃にはお世話になるけど、という程度。つまり嵩張る割に、実入りが少ない。ついでにいうと放置するとワーウルフが二刀流になったりするので、拾うのは必須。
めんどくさい!
20層にきた。なるべくワーウルフを避けて走り回ったので所要五時間。もう完全な夜だ。
安寧の間にきて、宝物をひとつ手に入れる。ついでに薬苔の群生を見つけたので少し採取。浅い層の苔は緑が薄いんだな。
煮炊きは出来ないのでシリアルバーもとい街の携帯食料をかじって休憩。宝迷宮はうっすら肌寒いので、温かいものが食べたくなる。やはりキャンプセットは必要かもしれない。
寝袋に入ろうか悩んで、今日のところはそのまま寝ることにした。だって血と汗でベタベタする。
『浄化』したい、しかしワーウルフのせいでだいぶ魔術触媒を無駄にしてしまったし、我慢だ。帰って補充したら『浄化』しよう。それを目標に今日のところは耐える。
昨日は目を閉じて掲示板を読んでいるうちに寝落ちしていた。
初日から潜っていた転移者が7層にたどり着いたらしい。安寧の間が見つからないので、通路で野宿するそうだ。ジャカロプやカウディアとはいえ襲ってくるやつなので、寝ずの番を交代で立てるんだって。安寧の間へ辿り着けないと、なかなか大変なんだな。
『肉ときれいな毛皮を捨てていくの悔しい。帰りは鹿肉とウサギ肉、持って帰ってやるからな!』
『屋台で焼いてもらうのを楽しみにしてる。温かい飯が恋しい』
屋台のなかには持ち込みで肉を焼いてくれる屋台があるらしい。ウサギ肉に鹿肉か。いいな、俺も肉が食べたい。
ウルフの肉は美味しくなさそうだ。あまり期待できないけど、守護者が肉だといいな。
守護者の間。
予想はしていたけど、ワーウルフの混成集団だった。リーダー、アーチャー、アサシン、ソルジャー。肉ではなかった。
ヒト型集団は先手必勝、魔術触媒を二倍使った『氷結』をぶっぱなし、凍りついたところでアサシンとアーチャーから順に止めをさした。多対一は全体攻撃で片付けるしかない。俺は呪文が使えてよかった。
呪文は転移者でも使えるものと使えないものがはっきりわかれている。耳がいいか悪いかもそうだが、どうも選択した言語によって得意不得意があるみたいだ。
俺が呪文と相性がいいのは、耳もあるかもしれないが、それよりノアのせいで神聖語ネイティブなのが大きいのだろう。呪文って神聖語なんだって。エリークに習った。
だから俺は考えれば呪文がわかるし、発音がいいから魔術が不発しない。
全部止めを差したところで、さてどうするか。
とりあえず武器は回収、アサシンとアーチャーは毒袋を持っていると見たのでこれも回収。ソルジャーやリーダーの防具も剥いだ方がいいのだろうか。簡単に取れそうで嵩張らない籠手だけ取って、あとはあきらめる。魔核を取ったら終わり。ワーウルフは本当に実入りが少ない!
お待ちかねの宝物は、小型箱。今回はこれで三箱と、宝物も少なめだ。魔物を避けるためにあちこちうろうろした割に、全然ショボい戦果となった。
転移陣を踏んで戻ると、まだ午前中。このままギルドへ行って、魔術触媒屋もいってしまおう。
俺が戻るとき、ちょうど10層からの帰還者が出たようでワアッと歓声が上がっていた。大荷物の集団で、バイコーンの角を掲げていた。おお、なんかカッコいい。
※ ※ ※
【魔術覚え書き】
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師から迷宮都市で修行をするよう言われた。
本日よりアウルム迷宮都市へ移動する。
205 名無しの転移者さん
魔術師さんアウルムくるんだ!?
ようこそようこそ
206 名無しの転移者さん
むしろ迷宮都市外に住んでたことに驚いてる
魔術師って迷宮都市以外だとあんまりいないんだろ?
207 名無しの転移者さん
アウルム物価高いけど、大丈夫か?
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★師の話覚え書き
魔術師はどこででも求められる職だが、魔術触媒と発動体がないと無力なのは知っての通りであり、人間相手の捕り物には決して向かない。
これは騎士や、貴族の護衛に魔術師が存在しないことにも関係している。
魔術師は魔物の死骸を漁るものとして蔑まれている。
そのくせ『治癒』は求められるので、腹が立つこともあるだろう。
決して相手にせず、金だけを要求して治療に応じることが肝心だ。無料での治療は絶対にしないこと。
迷宮都市内でもそれは変わらない。
魔術を安売りしないこと。これは肝に銘じるようになさい。
211 名無しの転移者さん
アウルムで魔術師オフ会しようぜーー!!
212 1
しない




