22.小休止
翌日は目が覚めても毛布のなかでうだうだ。ゆっくりめに起きて冒険者ギルドへ。
まずは解体所へ向かう。
「おっ、アスルさん、いらっしゃい!」
「今日は何をお持ち込みで!?」
宝迷宮が再開したことでギルドは混雑してると思ってたけど、そんなことはなく閑散としていた。
解体所の受付、セスとニナも暇そうにボードゲームをして遊んでいる。リバーシも伝来してるんだな。
「暇してる?」
「忙しくなるのは、20層以降に潜ってる冒険者が帰ってきてからですね~」
「魔法鞄持ってないと、みんな魔核しか持ってこないんですよ」
「知らなかった」
魔核は魔物の心臓みたいなもので、いろいろなものに使われる、らしい。噂によると人工の魔導具は魔核を基にして作られているとか。
そんな心臓だが、これは魔術触媒にはならない。そして俺のような素人は何にも使えない。しかし掲示板によると魔核は拾っておかないと共食いして魔物が力をつけてしまうらしく、捨てないのがマナーらしい。
そんなわけで、三年の間せっせと貯めていたのだが、あれはどこへやったんだっけ……? あ、携帯食糧と一緒に詰めたかも。
「この前、魔核出し損ねた」
「おっ、ありますか魔核?」
「ラピスキウルスのもあります!?」
「いっぱいある」
「いっぱい……!?」
だってマーモットだし。お肉だから食べたぶんだけあるよ。どれがどれかわからないけど、いちばん多いのがマーモットだ。
「あ、ヘソの石もある」
「ヘソの石!? 宝石のことです!?」
なにか知らないけど、取らないと捌けない石だ。ルビーみたいなきれいな石なので、お金になるかと思って取っておいてたんだよな。嵩張らないし。
革袋いっぱいに入った魔核とヘソの石を取り出すと、ニナはヒイッと後ずさった。
「なんかいっぱいでた!」
「欲しいけど欲しくないこの気持ち!」
悲鳴をあげつつもセスが受け取ってくれた。
何でもラピスキウルスはヘソの石と魔核にいちばん価値があるらしい。次に血、骨、最後に尻尾だそうだ。……肉は?
まあそんなに美味しい!ていう肉ではなかったしな……。いや、俺は好きだったけど。
「今日は魔核を出しにきてくれたんです?」
「宝迷宮入ったから、解体の依頼に」
「暇してるからどんとこいですよ!」
お言葉に甘えてジャカロプ五匹と、カウディア二匹、バイコーンを魔法鞄から出す。
「ぶつ切り!!」
「師匠に似て大胆!」
「切らないと入らなかった」
「それはそうなんですけどね!」
ジャカロプの爪と、カウディアとバイコーンの蹄、それからバイコーンの骨は魔術触媒になるので部分買取をお願いする。角はもう切り取ってあるので解体所には出さない。
「わー、でも凍ってるので新鮮ですね!」
「ぶつ切りながら金になるところは的確に残してるのがエリークさん仕込みなんですかね……!?」
「当然のことでは?」
「これがなかなか当たり前じゃないんですよねえ」
そもそもきれいに魔物が狩れること自体が初心者では希で、毛皮が取れることも珍しいのだとか。
番号札をもらって、今度は鑑定所の番号札をもらう。鑑定所は少しだけ順番待ちがあった。
俺の前に部屋から出てきたグループは若い五人ほどの集団で、みなでかいバックパックを背負い、嬉しそうに話をしながら出てきた。
すごい大荷物……、なるほどこれが一般的な初心者冒険者の装備!
そう考えると俺は恵まれてるんだな。
盛り上がっていたので聞くともなしに話を聞いてしまったのだけど、彼らは成人したての集団だったらしい。
マジで。二十歳くらいに見えたけど、十五なんだ……。そりゃ俺は十二歳って言われるはずだわ。全然違うもん。
てことは、転移者もあのくらいの年頃に見えるってことか。ちょっと全然、イメージが変わってくるな。
衝撃で思わず止まってしまっていたが、俺の番になったので鑑定所へ。
今日も受付はハルシェだ。
「アスルさん、こんにちは。宝物の出し忘れがありましたか?」
「昨日、宝迷宮に行ったから」
「新しく手に入れられましたか。素晴らしいことです」
机に乗っているお盆の上に、袋から二個の宝物指輪を転がす。
「一日でふたつも手に入れられたのですか」
「迷宮変動があったあとは宝物がわきやすい」
「それは、たしかに言われていることですが」
「あ、あとこれも」
忘れるところだった。日用品の魔法鞄から、手袋を取り出す。
「これはまさか中型箱ですか!?」
「ん、10層の安寧の間で出た」
「昨日の今日で10層まで行かれましたか。さすがです」
調べてもらったところ、指輪はふたつとも発動体、そして手袋は魔力付きの手袋だそうだ。
「いい効果?」
「はい。冒険者にも貴族にも好まれる効果ですね。売却なさいますか?」
「んーー、売る」
「オークションにかけますか、そのまま売られますか?」
前者は高値で売れる可能性もあるが現金化まで時間がかかる。後者は即金だが安めの価格。
即金よりも大金が欲しい。
「オークションで」
「かしこまりました。記録しておきますね」
指輪も売却。発動体も含め、魔導具は特殊なもの以外は等級で一律同じ価格の買取りになる。さすがに浅層の宝物だけあって等級が低く、そこまで高値ではなかった。
ここでも番号札を受け取り、受付へ。
※ ※ ※
【みんなで作ろうアイテム図鑑】
001 図鑑発起人
ここはこの世界に存在する、もとの世界には存在しなかったアイテムをまとめるスレです。
「これなに?」と気になるものがあれば参照できるよう、自分なりに一覧にまとめてみました。情報は随時更新、暇なときにまとめていますので、のんびり更新です。
質問があれば気楽にレスしてくださいね。また答えられる方は回答参加してくださると助かります
004 図鑑発起人
魔法鞄:
宝迷宮の宝物からのみ出現。いわゆるマジックバッグのこと。
サクススミラというのが正式名称だが滅多に呼ばれず、『魔法鞄』『不思議鞄』という呼ばれ方が一般的。
ラノベでよくあるやつと違い、中身の一覧や整理は出来ない。鞄を開くと異空間が広がっており、手を突っ込むと中身が見える、らしい?
スレ主は魔法鞄を所持していないため、詳細は不明。持ってる人は情報求む。
魔導具:
主に宝迷宮の宝物から出現する、不思議な力を持つ装飾品のこと。魔力を使用して動く。ブローチ、指輪、ペンダント、ピアス、腕輪、足輪などさまざまな形状が存在する。
ただマギと呼ばれることが多く、こう呼ばれる場合には特に、冒険者や兵士などが使う、攻撃・探索に特化したものを示すことが多い。
さまざまな効果を持ったものがあり、模倣して作られた人工の魔導具も存在する。
魔道具:
魔導具を改造して作成された人工の魔術具のうち、主に一般家庭での使用を目的としたもの。
有名なものでは充水筒、火付石、迷子石などがある。
005 名無しの転移者さん
良スレ発見age
014 図鑑発起人
発動体:
魔術を発現するために必要な道具。
魔導具の一種とする説もあるが、構造が異なることから専門家ほど別種と呼びたがるアイテム。
これと魔術触媒を持ち、魔術の魔名を知ることが出来れば、魔術が使えるようになる。
030 名無しの転移者さん
>>004
魔法鞄の取り出し方は普通の鞄と変わらなくて、手を突っ込んで中身を取り出す必要がある。そのとき、手を突っ込んでれば中身が見えるようになる。
魔法鞄には、箱型、部屋型、倉庫型の三種類があって、等級でサイズが違う。
等級によっては時間がゆるやかに経過するようになる保存強化や、時間が止まる時間停止などもある。
箱型:二立法メートル以内
部屋型:二立法メートルより大きく、立方体ではない(一辺が二メートル固定で広がっていく)
倉庫型:すべての辺が三メートル以上ある
ちなみにどれも中に入ることは出来ない。
さすがに部屋型からは手を突っ込んで取るというのが難しくなるので、血統証明という契約が必要になる。
俺がわかるのはこのくらいかな。
125 図鑑発起人
遺失物:
宝迷宮から産出する魔導具の一種。特に希少性の著しく高いもの、使い道のわからないものをこう呼ぶ。
宝迷宮が古代の遺跡とする考え方に由来する呼び方。
貴族のなかには家宝として遺失物を保有する家系も多く、その場合は伝承器と呼ばれることも。




