20.宝迷宮を攻略しよう
迷宮都市は、宝迷宮を内包している。
元々は迷宮の周りに自発的に生まれた冒険者のための宿場町が発祥となっており、そこから商人が訪れ、工房が出来、やがて街としての認可を受け領主が赴任した。
宝迷宮は時に氾濫を起こすことがあり、中から魔物が溢れてくることもある。それゆえ迷宮都市とは中心に宝迷宮を置き、街壁があり、その周囲に街の広がったドーナツ状の都市構造をしている。
とはいえそれは都市計画上の始まりの話。街壁を増設し続けた今となっては、鳥瞰するロータスの街は北を頂点とした楕円の街となっている。南へと大きく発展していった結果だ。
宝迷宮へ繋がる門は東西南北四門がある。平常時の出入りは特に制限されておらず、門兵もいない。慣れた街の人間は西から東へと抜ける近道に利用したりもしている。巡回馬車より早いそうだ。
宝迷宮の入り口は物々しい石造りの建造物で覆われており、これを迷宮門という。迷宮門の周囲にはほんの少しの露店が出ている。転移者が提唱して定着したという、出張店だ。商魂たくましい商人たちの出店が面白い。
迷宮門には衛兵がいて、入出場が魔道具で管理されている。未成年の入場はここで弾かれる。入出場の記録は冒険者証にも記録されるので、到達階層を偽ることは出来ないそうだ。
入場にはお金がかかるが、冒険者証を持つものは割引される仕組み。冒険者証を持たない人の入場は主に腕試しをしたい貴族とか、騎士とか、あとは護衛を引き連れた商人とかだって。要は金持ちの娯楽だな。
宝迷宮は守護者の間の転移陣を踏むと、次回からそこに転移ポイントが解放される。続きから探索が出来るというわけだ。転移は個人で記憶されるもので、他人を連れていくことは出来ない。
俺も転移ポイントは80層が解放されているわけだが、さすがに向かうわけにはいかない。転移はいつでも片道切符で、次の守護者の間まで帰還することは出来ないのだから。
転移ポイントを使うには、迷宮門を入って左右に広がる転移の間を利用することになる。正面まっすぐは、迷宮1層への入口だ。
エリークとは、迷宮門の入口で別れた。
「一週間のうちに戻るよ」とのこと。大変動で地図が効かなくなっているので、浅めの層で肩慣らしするんだって。
俺はとりあえず1層から入って、30層までの転移ポイントは開けてしまいたいかな。まあ焦らず、ゆっくりいこう。
それにしても1層入口は混んでいる。がやがや話がされているので耳を傾けてみると、どうやら大変動で地形が変化したことで、地図や、安寧の間の情報などに需要があるらしい。
それに転移ポイントを使えても、地図なし初見の階層に潜るのは気が引けるし、久しぶりだし1層から肩慣らしするか、という人も多いみたい。
それでこの混雑か。納得。
宝迷宮は、転移陣以外は入口へ引き返してくる以外に出口はない。10層分の迷宮を抜け守護者を倒して帰還するか、出口へ戻るか。その実力のないものには、閉ざされた門なのだ。
さて、ようやく順番になった。
未成年と間違われて止められかけたが、冒険者証で事なきを得た。はよ成長したい。成長……、出来るよな!? ノアさん頼みますよマジで。
中に入っても人が減るわけでもなく、むしろ更に混んでいる。
前の人を抜かしたいけど抜かせなくてもどかしい。
宝迷宮は、迷宮というだけあって基本は迷路である。細い道が延々と続き、やがて分かれ道がやってくる。少し進むと、また分かれ道。こうして道が入り組んでいき、人を迷わせる。
分岐を経るごとに人が減っていく。あっちだ、こっちだと話し合うもの、地図を書くのか立ち止まって紙を広げているものたちも多い。その脇を失礼して抜けていく。
意識を集中すると、導きだという糸が見える。立ち止まることなくひたすら追いかけていけば、次第に周囲に人はいなくなった。マッピングも特にせず、ひたすら曲がりくねった小道を行ったせいもある。
帰り道はわからないが、10層まで行く予定なので問題ない。糸が見えれば、安寧の間も、階段までの道もわかる。
しばらく進み続け、安寧の間へ辿り着く。幸先よく小箱の宝物を手に入れた。よしよし。中身を確かめたくなってしまうが、我慢して魔法鞄へ仕舞う。
特に疲れていないので次へ移動。
さくさく移動して、5層までをあっさり抜けた。所要三時間ほどだろうか。魔物がでないので、足が疲れただけだ。靴が新しくなっていてよかった。
転移者がここでも暗躍していたらしくて、靴はとても履きやすいし疲れない。中敷きに秘密があるとか店主はいっていたが、詳細は教えてもらえなかった。秘匿技術なのかも。
『治癒』するほどの疲労ではないので、充水筒から水を飲み、ちょっとだけ休憩して出発。ここからは魔物も出るので気を引き締めねば。
と思ったんだけど、スライムとか虫しか出なかった。これは魔物といえるのだろうか。特に襲ってこないので、無視して進む。
魔術を使うには魔術触媒がもったいない。魔導具の『槍』があるけど、あれも体内魔力を消費する、らしい。
色持ちになってしまった俺は魔力が多いらしくて、魔導具で魔力を消費する感覚というのがもはやわからない。魔力が少ないと、魔法鞄を扱うのにも苦労するらしい。……そういえば、まだ白髪だった頃は使うのに苦労していた、ような?
とにかく消費してるのかわからない程度だけど消費はするらしいので、節約するに越したことはない。
もちろん魔術を使うのにも魔力は使う。こっちは俺も消費がわかる。「目覚めよ」以外の呪文を使うと特に減る。
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【宝迷宮攻略スレ2】
001 名無しの転移者さん
宝迷宮を攻略したい人たちの情報交換スレです
積極的に情報交換して儲けていきましょう!!!!
358 名無しの転移者さん
『睡蓮の宝玉』
西方諸国フロリティオ王国北東部、ロータス迷宮都市が内包する宝迷宮。管轄はサフィルス迷宮公。
メインは洞窟階層型で、ときどき沼地階層が現れる混合タイプ。
沼地は深く、攻略には『浮遊』を持つ魔術師が必須。変動後の階層移動には十分な注意が必要。下手すると詰む。
迷宮変動が頻繁に起きるため、地図屋、先導人の需要がとても高い。
フリーの地図屋、先導人も多いので積極的に雇っていこう。詐欺には注意。
他の迷宮都市と違って、フリーの魔術師がほぼ存在しない点には注意が必要。現地で新しく組むことはまず無理と考えた方がいい。
地図代がかなり割高のため、パーティー攻略を推奨。
現在70層まで攻略済。最下層は不明。変動が多いことから、それなりの深さがあると推測される。
確認されている出現魔物:
ジャカロプ、カウディアー、トード群、ウルフ群、ワーウルフ群、魔魚類、ケルピー、水蛇群、アイスウルフ、アースリザード、スパイダー群、スケルトン群、マドゴーレム、キマイラ




