今日の一日
朝、母が台所でお味噌汁を作っていた。
湯気の向こうで、背中がゆらゆら揺れている。
私は思わず「おはよう」と声をかけた。
振り返った母は、少し眠そうな目をして「おはよう」と返した。
それだけなのに、胸が温かくなった。
昼、テレビの音が居間から漏れてくる。
一緒に見ようと隣に座ると、母は「またこの番組?」と笑った。
私は笑い返しながら、母の手の甲に小さなシミが増えていることに気づいた。
そのシミも、母と過ごした時間の証だと思った。
夜、母がお茶を淹れてくれた。
湯気の香りに包まれながら、「ありがとう」と言ったら、母は少し驚いた顔をして「どういたしまして」と笑った。
今日も、特別なことは何もなかった。
でも、この一日を重ねていくことが、たぶん私にできる一番のことだと思う。