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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界転移アプリで作る「明るい未来」

短編読み切りです。気楽にお読みください。


※本作はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。



スマホに見知らぬアプリがインストールされていた。

【異世界転移アプリ】


悪意がある詐欺アプリと思ってアンインストールしようとしたら、できなかった。

「あなたは、正義の救世主です。」

というメッセージが表示されただけだった。


開発元の【時空記録社】を検索したが存在しなかった。

仕方なく、アプリを起動すると「このアプリについて」が表示された。


===== ==== =====


名前を書いた人が死んでしまうアプリが欲しいと思ったことはありませんか?

でも、ひとが死ぬと警察が動きますから、おすすめしません。


しかし、異世界転移でしたら、警察は動けません。


あなたが消えて欲しいと思う人は、だれですか?


【異世界転移アプリ】を上手く使って、あなたの望みを実現しませんか?


===== ==== =====



ワタシは、この説明を読んで納得していた。


悪口を言ったり、侮辱してくるひとを止めるために、格闘ゲームのように手や足を出したいと思ったことは多い。 しかし、やつらはずる賢い。 決して証拠は残さないだろうし、味方の証人になってくれるひとはいないだろう。 つまり、手を出したら負けだ。


「敵を倒し己が生き残ってこその勝利だ!」


これは、有名な刑事マンガのセリフだ。


今の世の中は、ワタシのような弱者が復讐しようにも、むずかしい。

作戦を立てて勝ったとしても、暴行罪、傷害罪または殺人罪で捕まり、一生を塀の中で暮らすなんて、御免だ。 また、慰謝料を請求されたりしたら、家族に迷惑をかけてしまう。


そして、敵に大金を渡すことになるのなら、なにもしない方がマシだ。


「法で裁けぬ悪を倒す」


このアプリがあれば、それが出来るかもしれない。





「あなたが消えて欲しいと思う人は、だれですか?」


アプリの説明文を読んで少し考えただけで、10人くらい思いついた。

でも、このアプリがただのイタズラで、なんの効果も無いとしたら、時間の無駄になってしまう。

だから、効果を知るために、異世界転移になったことが分かる相手が必要だ。


ワタシは、無料の動画公開サイトやSNSサービスの投稿を、時間が有る限り見てしまう。

その結果、自国の政治家で試してみようと考えた。 大好きな国のトップも喜ぶだろうから、最高の候補者だろう。


ワタシは、【異世界転移アプリ】の同意ボタンを見て、少しだけ迷った。


「【異世界転移アプリ】を使用しますか?

  [はい] [YES] 」


ワタシは、両方を同時に押した。 このアプリの製作者とは仲良くなれそうだと感じた。





【異世界転移アプリ】がスタートした。


名前を入力してください。 通名やアカウント名でも大丈夫です。


ワタシは、音声入力で、「政治家の●●●●」と入力した。


この方ですか? 写真をご覧ください。

  [はい] [いいえ]


[はい]を選んだ。


あなたの半径1km以内に存在しないため、24時間以内で、もっとも良いタイミングを狙います。





翌朝、ニュース番組が騒いでいた。


敵対国による誘拐か? もしくは暗殺か?


政治家の●●●●が異世界転移とのことだった。 ●●●●氏が若く美しい女性と高級ホテルの一室に入ったことは、週刊誌が報じていた。 しかし、女性も異世界転移だそうだ。


メディアの発表に対し、敵対国トップは、コメントを出していた。

「ようやく帰ってくれた招かれざる客を呼び戻すひとはいないと思う。」


あくまで、世間話として、敵対国トップの素顔的な非公式のコメントだった。


才色兼備な美女報道官は、こう言っていた。 犬がバウバウと吠えていたり、猫がみゃーおと泣いたら、あなたは怒ったり、弁明しますか? しませんね!


ようするに、相手にされていなかった。


警察は会見で力強く語っていた。これは警察に対する挑戦だ。我々は全力で●●●●氏を探し出し取り戻すだろう。


強調していることの逆が真実だという言葉を思い出した。





ワタシは、【異世界転移アプリ】を起動した。なにか変化があるかもしれないからだ。


===== ==== =====


おめでとうございます!!


政治家の●●●●氏を異世界転移にしました。


レア度 ノーマル

性的価値 ゼロ

健康価値 ゼロ

知性価値 ゼロ


彼が所有していた資産については、あなたの動画収益として振り込まれるようにします。


貢献ポイント 5

合計ポイント 5


===== ==== =====


あっ、効果が有るみたいだ。 じゃあ、つぎは誰にしようかな?


政治家の●●●●氏に関するニュースの続報を、見ることはなかった・・・





ワタシは、【異世界転移アプリ】を起動した。


小学生のときにワタシをいじめた担任の先生の名前を入力した。

残念ながら、亡くなっていることが分かった。


次は、中学生の時に、ワタシをプールでおぼれさせようとした同級生の名前を入れた。


アプリに初めて見るメッセージが表示された。


この方ですか? 写真をご覧ください。

  [はい] [いいえ]


[はい]を選んだ。


あなたの半径1km以内に存在しないため、24時間以内で、もっとも良いタイミングを狙います。


翌朝、【異世界転移アプリ】を見ると結果が表示されていた。


===== ==== =====


おめでとうございます!!


プールでおぼれさせようとした同級生を異世界転移しました。


レア度 ☆

性的価値 ☆

健康価値 ☆☆☆

知性価値 ゼロ


彼が所有していた能力については、あなたの身体の強化に使用します。


貢献ポイント 50

合計ポイント 55


===== ==== =====


どういうことだろうと思って、自分のおなかを見ると腹筋が引き締まっていた。

それから、腕力が強化されて、背が少し伸びたような気がする。

一番うれしかったのは、近視が少し治ったようで、いつもより視力表がクッキリと見えた。





ワタシは、【異世界転移アプリ】を起動した。


次は、中学生の時に、ワタシへのいじめ? いや、暴行罪、傷害罪、侮辱罪というべきだ。

を見て見ぬふりをした体育教師の名前を入れた。


この方ですか? 写真をご覧ください。

  [はい] [いいえ]


[はい]を選んだ。


あなたの半径1km以内に存在しないため、24時間以内で、もっとも良いタイミングを狙います。


翌朝、【異世界転移アプリ】を見ると結果が表示されていた。


===== ==== =====


おめでとうございます!!


見て見ぬふりをした体育教師を異世界転移しました。

教師として失格のくせに校長先生ですか? おどろきますね!


レア度 ☆☆

性的価値 ☆

健康価値 ☆☆☆

知性価値 ☆


彼が所有していた資産については、あなたの動画収益として振り込まれるようにします。


彼が所有していた能力については、あなたの身体の強化に使用します。


貢献ポイント 100

合計ポイント 155


===== ==== =====


体育教師が異世界転移になったおかげで?、ワタシの身体の動きが軽くなった気がする。

正しい運動方法も思いついたので、身体の調子が良くなって、無気力感が消えて、やる気というか生きる活力が出てきた気がする。





ワタシは、【異世界転移アプリ】を起動した。


次は、高校生の時に、ワタシへのいじめ? いや、強要罪、侮辱罪というべきだ。

を集団でしてきた連中の名前を入れた。


この方たちですか? 写真をご覧ください。

  [はい] [いいえ]


[はい]を選んだ。


あなたの半径1km以内に存在しないため、24時間以内で、もっとも良いタイミングを狙います。

いいえ、集団のため、1ヵ月いただきますね。


翌月、【異世界転移アプリ】を見ると結果が表示されていた。


===== ==== =====


おめでとうございます!!


強要罪、侮辱罪を集団でしてきた連中を異世界転移しました。

特別サービスで傍観者も異世界転移しました。

参加しなくてよかった同窓会。


レア度 ☆☆☆☆

性的価値 ☆☆☆

健康価値 ☆☆☆

知性価値 ☆☆☆


彼らが所有していた資産については、あなたの動画収益として振り込まれるようにします。


彼らが所有していた能力については、あなたの身体の強化に使用します。


彼らが所有していた知識については、あなたの知識の強化に使用します。


貢献ポイント 3000

合計ポイント 3155


===== ==== =====


ワタシはあきらめていた法律関係の資格の書籍を開いた。 今までは、こんなのは覚えられないと思っていたが、すべて知っているような気がして、読み進めたり、過去問を解いたりすることが苦にならなかった。 楽勝だった。 そして、なぜか、医学に関するホームページを読んでも、問題無く読み進めることができた。


さらには、おしゃれというか化粧に関する知識も温泉が湧き出るように湧いてきたので、鏡の前で、眉毛を整えたり、顔面の美容体操も試してみた。ファッションセンスも身に着いたようで、手持ちの服をセンス良く合わせることができた。


このとき、わたしの見栄えは見違えるようによくなり、体型も良くなった。

これなら、格闘ゲームの登場人物のコスプレをしても似合うと思う。 しかし、人前で肌を露出することは嫌なので、家の中だけで楽しむ予定だ。





【異世界転移アプリ】のポイントが気になった。


合計ポイント 3155 と3000ポイントを超えたから、なにかと交換できるかな?と思って、アプリ画面をスワイプしたら、交換リストがあった。


ワタシの目を引いたのは、これだった。


異性アンドロイド 3000ポイント


詳細ボタンをタッチすると、顔、体型、年齢、性格、特技、趣味を選択できた。

だから、私好みの黒髪長髪の魅力的な異性を設定した。


お迎えする ボタンをタッチすると、注意事項が表示された。


ただいま設定頂いたとおりの異性を、ご自宅に訪問させます。

ご提示する写真や情報に一切の誤差はありません。 もちろん、夜の営みも出来ます。 子供も作れます。 ただし・・・ ぜったいに浮気できません。 あなたの人生は、あなたが設定した異性に縛られます。

なお、善悪の理解、正義の心、道徳心は大丈夫です。あなたの貯金を勝手に使ったり、あなたのコレクションを売り払ったり、借金をすることはありません。


もうひとりの自分として設定した異性を扱い貞操をささげますか?

あなた自身と同じ食事、同じ寝床、同じお小遣いを提供し、暴力暴言侮辱支配的な行為を絶対にしないと約束しますか?


魔法契約できますか?

[いいえ] [はい]


ココだけは選択肢が通常だな。 しかも、うっかりタッチしても、[いいえ]を選ぶようになっている。


ワタシは、[はい]を選んだ。


7日後に訪問させます。

キャンセルしたい場合は、本日を含めた3日後の23:57までに、[キャンセル]を選んでください。

その場合は、ポイントをお返しします。 ただし、それを過ぎたら、キャンセルできません。





7日後、家のインターフォンが鳴った。

インターフォンの通話ボタンを押すと、ディスプレイにはワタシが設定したとおりの魅力的な異性アンドロイドが映っていた。


「未来時空社の紹介で参りました。 わたしでよろしいですか?」


魅力的な異性アンドロイドは、カメラから離れて、ゆっくりと回って、全身の体型を見せてくれた。

その後で、カメラに近づいて、顔のアップを見せてくれた。


「いかがでしょうか?」


「素晴らしいです。いま、開けます。」

とオートロックの扉を開けた。 しばらくして、部屋の前まで来てくれた魅力的な異性アンドロイドを家の中に招き入れた。


「これから、あなたのサポートをします。

 まずは、愛情交換しましょう。」


ワタシは、魅力的な異性アンドロイドとすばらしい瞬間を楽しんだ。





ワタシは、魅力的な異性アンドロイドの名前を聞いたら、ワタシに名付けて欲しいと言ってくれた。

だから、ワタシは【はるか】という名前を提案した。 有名なアニメに出てくる女性としても男性としても素敵な登場人物の名前だと説明した。


「いいですね。 【はるか】って呼んでください。」


「【はるか】」


「はい、マスター」


ワタシは、なんだか、奴隷と主人のような関係なのかなと思ったが、それに近いものだと説明された。じゃあ、あなたがワタシの言いなりになる理由はなにかと聞いてみた。


「はるかは、時空記録社から、若くて健康で美しく自由に動かせる身体を頂きました。 そして、信頼できるパートナーでもあるマスターのところに来ることができて幸せです。 ただし、はるかは嫉妬深いですから、はるかが同伴しないところで異性と会うことはできません」


「それなら、問題無いよ。 でも、ぜいたくはできないからね」


「屋根と壁がある部屋で、栄養バランスが取れた食事、お風呂、睡眠、マスターと同じ金額のお小遣いが頂ければ、大丈夫です」


「では、よろしくね、はるか」


「はい、マスター」


しばらく考えても、最高の条件だと思えた。





はるかは、真剣な顔でワタシに告げた。


「マスター、時空記録社からの伝言をお伝えしますので、お聞きください」


「なんだろう?」


「マスターが【異世界転移アプリ】で指名された対象は、1人目以外はレアな人間でした。

 これからも、一日一善と思って、毎日1人は対象者を入力してほしいとのことです」


「わかった。思いつく限り、どんどん入れていくよ」


「ええ、お願いします。 わたしたちの、いいえ、多くの人たちの明るい未来のために」


「でも、異世界転移させられたひとたちは、どうなっているのかな?」


「それぞれの罪の重さに比例する難易度の異世界問題を解決するまで、なんどでも挑戦するそうです」


「わあ、大変そうだね」


「異世界転移して活躍することは、多くの人たちの夢ですよ」


「そうだねー」


ワタシは、彼らは自業自得だ、法で裁けぬ悪は異世界で苦しんでもらおうと思った。

責任に見合った権限と手段を与えられず、心身をすり減らす現代の労働環境に比べたら、まだマシかもしれないと同情する気にもなれなかったからだ。


ワタシが【異世界転移アプリ】を数回使用しただけでも、世の中が良くなっていく気がしていた。

そして、私自身もパワーアップしていることは錯角ではないようだ。


まるで、高次元の存在に生贄を捧げている神官になったような気分だが、求められるなら悪い気はしない。【異世界転移アプリ】のおかげで、大金も入ってくることがうれしい。


現在、働いている職場での契約を切られたが、笑顔で「今まで、ありがとうございました。」と言うことが出来た。


異世界転移アプリで作る「明るい未来」


ばんざい!


おわり


励ましの言葉を待っています。批判や酷評は要りません。


頂いたアイデアやご提案は勝手に使用します。お名前は出しませんし、御礼も無しです。ご自身の作品で使用されることを強く推奨します。


ブックマークと☆5を、お待ちしています。


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