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第2話 アトミック

 ヨセフが巣に向けて車を走らせているのと同時刻。ホワイトハウスにも巨大なスズメバチの被害が伝えられた。


「大統領。巨大スズメバチはどうやらカリフォルニアの原子力発電所の地下から湧いて出たようです」


「既にスズメバチはネバダ、オレゴン、ユタ、アリゾナ、ニューメキシコで確認され被害も甚大です。軍は既に出動させていますが……小銃ではスズメバチにダメージを与えられないらしく……」


 報告を聞いた大統領は眉間に手を当ててため息をついた。このところ支持率が低迷している最中でのこの騒動だったからだ。


 無論国民のことも心配だがこれが大統領の支持率の更なる低下を招くことは間違いなく、ため息が出る。


「……核の使用も検討しなければならんな」


「核!? 自国に核を使用するなど聞いたことがありませんよ!?」


「最終手段だ。おいそれと使うわけにはいかないのは誰だってわかる」


 大統領は水に口をつける。そうでもしないとまたため息が出そうだったからだ。


「迅速に避難を、メディアの屑共にも情報を渡してやれ。パニックになった際は……仕方ない私が責任をとろう。他に責任をとれそうな人間も居ないからな」


「大統領! 大変です!」


 慌てた様子の男が大統領の元までやってきた。


 また何か問題が起きたのかと頭を痛めるが報告者は構わず話を始めた。


「ナンタケット島付近で原子力潜水艦ジェーン・ドゥ号が沈没しました!」


「なんだと!? 原因は!?」


 大統領は大声をあげた。この騒動とほぼ同時刻に起きたこと、何か巨大スズメバチとの関連があるに違いない。


「普通に整備不良です。問題は相当量の放射線が漏れており……」






 同時刻、ナンタケット島クイドネット・ビーチ……


「なんだありゃあ! 霧か!?」


「すっごいわね!」


 ビーチに居た観光客のカップルはサングラスを上げ一緒に水平線をみていた。視線の先にはまるで入道雲のような霧が発生していた。だが霧が出るような季節でもない、一体何なのかと二人は目を凝らしてみた。


 すると何か巨大なヒレのようなものが海面に出ているのが見えた。


「ホオジロザメだ!! けどなんで霧なんぞ……いやまてこっちに来るぞ」


「大丈夫よシーザー。サメだもん。霧を出すサメなんて聞いたことないわ。写真でも撮っておきましょうよ!」


「いい考えだカーラ! よーし早速撮ろう、さぁこっちに向いてくれ」


「綺麗にとってよ?」


「ははははは……」


「目が笑ってないのはなんで?」

 

 興味があった男は海を泳ぐホホジロザメを撮ろうとカメラを向けた。だがその時あることに気が付く。


 海面に出ているサメのヒレ、それがどう見ても大きすぎるのだ。


「それにしてもデカいな。まぁ、デカかろうが何だろうが所詮はサメだ。ジャンプでもしてくれよサメちゃん」


「私もやろうか?」


「いやいい」


 楽観視していた、所詮はサメ、海の中から出てこれるはずがないと思った、2人とも死ぬはずがないと思った。


 だがそんな考えは彼らを後悔させることになる。


「よし笑って……あら?」


 いざ写真を撮ろうとした時、ファインダー越しに映っていたはずのサメの背びれが消えた。


「何処に行ったんだ? あれ?」


 きょろきょろと海面に目をやるが、何処にもサメの姿はない。


 そうして暫くしていると、今度は地響きが聞こえだし……


「う、うわあああああああ!!」


 2人の足元が盛り上がると同時、巨大な歯の並ぶ顎が突出してきたのだ。とんでもない腐臭と、そして凄まじい熱に2人は丸呑みにされながらその身体を焼かれることになった。


「ぎゃああああああ!! 熱い熱い熱い出してくれぇッ!!」


「ガァッ……あ……」


 着ていた水着は一瞬で焼け、体は端から灰になる。地獄の業火とはまさにこれであろう。


 このことはすぐさま軍に大統領、その他メディアにも伝えられることとなる。


 以降カリフォルニアで見つかった巨大スズメバチをアトミックスズメバチ、そしてここで見つかった巨大ホオジロザメのことはアトミックシャークと呼称されることとなった。


 

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― 新着の感想 ―
サメでも捕食のために迫られたら脅威だろうに、呑気な……と突っ込む間もなく熱々に焼かれてぱっくんちょ。おかしな奴らをなくしてしまった……。
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