oltre il peccato eterno
「かつてこの劇場は君主の跡継ぎをたたえて名づけられました。そして、いま、この劇場は共和国の名を冠する劇場として、この世に生まれようとしています」
サデーロ大臣が腕をかかげた。
「ですが、いま、この劇場に名を冠する資格があるのは、共和国の未来のためにその身を捧げたふたりの人物、若き実業家のアンジェロ・アッリーゴ氏、そして、悪辣なる犯罪組織を摘発するために全てを捧げた正義の人、ミケーレ・カラヴァッジョ大佐のおふたりにあるのです。カラヴァッジョ=アッリーゴ劇場。これほど、共和国民の精神をあらわした命名が他にありますでしょうか? 共和国のための若いふたり、国家と国民のために尽くしてきたふたりが非業の死を遂げたとしても、我々の記憶まで殺すことはできないのです。わたしたちは犯人を決して許しはしないでしょう。カラヴァッジョ大佐の正義の心は我々全てに引き継がれたのです。決してくじけることのない、永続的な正義はわたしたちひとりひとりの心のなかにあるのです。我々は輝かしい未来を生きるでしょう。なぜなら、永続的正義を心にもった人間にとって、輝かしい未来以外のいかなる将来もありはしないのです。さあ、みなさん。ふたりのために万歳を唱えましょう。わたしはここでひとりの高潔な人物の言葉を、あなたたちのために望みたい。それは、この劇場の出資者であり、民衆に非常に尊敬された人士、そして、不幸にも息子を亡くされたばかりの人士、ニコロ・アッリーゴ氏のお言葉をお借りしたい。いま、この場において、アッリーゴ氏ほど、民衆の正義を表現する人物は他にいないからです」
カラヴァッジョ大佐の部屋は空になっていた。その全てに書類は多くの政治家や実業家にとって、恐怖の的だったからだ。ただ、机と空っぽの棚しかしかない部屋で、ピエトロは楽器ケースを開けた。銃の機関部を銃床に固定し、消音器を銃口にねじって取りつけた。五倍のスコープを排莢口のそばに取りつけ、ピエトロは劇場の完成式典を覗いた。
ふたりの人物が見えた。
サデーロ大臣とニコロ・アッリーゴ。
弾は一発しかない。
ピエトロは考えた。
そして、選択した。
スコープの十字線を標的の額に合わせる。
これまでしてきたことと同じだ。
無限に近い時間のなかを生きるように、引き金にかけた指を絞り込む。
無音の銃弾。
脳漿。
悲鳴が上がった……
〈終わり〉




