表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

就活失敗

初めて挫折を感じたのは就活であった。


生まれつき勉強のできた私は特に苦労なく某有名大学に進学した。

大学合格は自尊心を大いに満足させたことを覚えている。

3年の終わりには卒業に必要な単位を揃え、順風満帆な人生のはずだった。


傲慢。一言で言えばそれだけだ。

就活は空前の売り手市場とされ、環境は就活生にとって有利なものだった。

気楽な私はそれを信じて就活解禁から五社しか申し込みをしなかった。

うち一社は最終面接まで行ったので特に焦ることもなかった。

自分ならば何も問題は無いと。

それが伝わったのだろうか。私は落とされた。

周囲の進路が決まっている中で、面接待ちさえない。

私の未来は一気に闇の中へ溶けていった。


ここまで読んだ方はもうお分かりだろうが、私の性格には問題がある。

肥大化した自尊心、他人や世の中を侮る心、怠惰。


こう書くとまだ懲りないのかと思われるだろうが、私は人並みのことは苦労なくできてしまうのだ。一人でできることに限定すれば。

これが私を形作ってきた祝福であり、呪いである。

大学までは必要な成績の大部分が自分だけで確定できる。

優秀さの評価軸に他人は不可欠ではなかった。

自らの振舞いを省みることはなかった私は、自らを常に肯定し、万能感に酔いしれた。


面接試験を受けたことがある方はご存じであろう。

面接に絶対的正解はなく、その時々の試験官に気に入られることが全てである。

人間関係に見ないふりをして生きてきた私にとって、これは難題であった。


輝かしき未来が、突如暗闇へと変わったことで、私は衝撃を受け、憔悴した。

血眼になって就活本を漁り、ネットで情報を集め、それまで見下していた同期に頭を下げて教えを乞うた。

これこそ傲慢なのだが生涯であれほどの屈辱を感じたことは他にない。

手当たり次第に企業に応募し、選考落ちのメールが届く日々に、私は初めて挫折を理解した。

挫折と言うより他に表現する言葉を知らない。

一目置かれていたはずの自分が誰からも必要とされないゴミになったのである。

理想と現実の落差に私の心はあっさりと折れた。

人はざまあみろと私を嗤うだろうか。

その時から私の人生のテーブルには自殺がある。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ