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0話的な何か

崩天歴65546年。丘の麓に石造りの家がまばらに建ち、周りには収穫の少し前になり重くなった穂を垂れた小麦が茂る黄金色の波の真ん中に馬車のものと思われる轍のある少し湿った泥道が曲がりながら続き、その先には少し大きめの町と町越しにも見える町の向こうにある城塞が見える。あそこはプテルニック帝国属州、カッチャトーレ辺境伯領州都、サビエ。そんな泥道を二人の護衛と一人の御者と共に四人乗りの馬車の右後ろに俺は座っていた、馬車の後ろには本が積まれている。二人の護衛は流石帝国最西端の辺境伯直属の兵士というだけあり無駄口を一切たたくことなく周囲を警戒している。と言うのもここカッチャトーレ領は帝国の国境であるだけでなくエルディット派とストレゴーネ派の宗教戦争におけるエルディット派の最前線であり我が家のご先祖…といっても俺で4代目なのだが…のカリーノ・カッチャトーレが異教徒…スクード王国から奪い取った係争地でもある最重要地点である。

???「おーい!メテージュニクー!」

サビエに入ってすぐそんな大声が聞こえてきた

メテージュニク「あれ?お父さん、なんでこんなところにいるんですか?普段は辺境伯邸か中立探索者機構の窓口か修練所にいるのに」

トリスタン「誰のせいだと…どこにいたんだ、修練所にも顔を出さず、かといってサビエのどこかに居るわけでもなし、ここら一帯の農地にもいない、狩りの道具も持っていないとなっては心配で…」

メテージュニク「アボンプールに行ってました。うちにある本だと少しわからないことが多くて…帝都から来た祭司さんは『それは禁術に関する知識なんだから、洗礼前のお前に教えるわけないだろ』って言うし…」

トリスタン「エリアス様な、あの方と私は名目上の地位は私のほうが高いがあの方が教会に働きかければ下手すればわしの地位だって危うくなるのだぞ。あんまり下手なことを言うな、それにあの方がだめだといったことをやろうとするな。お前はあの方に気に入られているんだからそれを利用しろ、ところで帝国大司教猊下から賜った金の杯は知らんか?」

俺の父親、トリスタン・カッチャトーレは、いかにも”疑わしい”といった表情で俺のことを見る

メテージュニク「…」

俺は目を背ける

トリスタン「はぁ…食卓に飾っていたのがなくなったと思ったら…エリアス様にばれたらどうするつもりだ、何ならその馬車の後ろに積んであると交換したのなら別地域の祭司にばれる可能性すら…いいか?ここだけの話だから言うが私はエルディット派の教義なんて本気で信仰しているわけではないし、わが一族で敬虔な信徒と呼べる人間なんて歴代で一人いるかどうかすら怪しいくらいだ。だがな、わしは実際に祭司様が執り行っている祭事を見ればそれに感嘆するし、実際問題プテルニック帝国に所属している以上エルディット派との関係を断つことは不可能だ、確かにわが領内ではあまり感じることは少ないかもしれないが先ほどまでお前が行っていたアボンプールからスェルツェグライニーツァ川を下ってバリエラ領に入れば町ゆく人間殆どが敬虔な信徒だし、何なら帝王閣下だって敬虔な信徒だ。」

そこまで話して少しの間黙ってからため息とともに

トリスタン「お前が生まれたとき、お父様…お前のお爺さんはびっくりしていたよ『初代と瓜二つだ!』ってね…実際お前は話し始めるのもとんでもなく速かったしすぐに本だって読めるようになった。剣技だってお前くらいの年の時のわしとは比べ物にならん。だからこそお前にこんな下らないことで身を滅ぼしてほしくないのだよ」

お父様はずるい、こんなことを言われればどうしたって申し訳なくなってしまう。何と言われたって少したりとも後ろめたく思わないと決めていた心は簡単に揺らぐ。申し訳なく思う気持ちに、簡単に揺らぐ自分の弱さへの悔しさで対抗するように

メテージュニク「そんなお世辞はこれまで何度も聞いて聞き飽きましたよ」

などとお父様のやさしさを突き放すようなことを言ってしまう。お父様は少し困ったような顔をして少し考え込んだ後、呆れた顔をして溜息を吐きながら

トリスタン「その本は辺境伯邸の地下にしまっておけ、絶対に他人にその本のことを話すんじゃない。盃のことは私が何とか誤魔化してやる」

それを聞いて俺は目を輝かせて

メテージュニク「はい!お父様!」

と言って馬車を辺境伯邸に向かわせる。別に本が許可された事の嬉しさで先ほどまでのやり取りを忘れているわけではない。単純に許可をもらえたら次も認められやすいように喜んだほうが相手も気分がよくなるのだから喜んでおくべきというだけなのだ。決して先ほどまでとてつもなく気まずい雰囲気だったにも関わらず思いっきり喜んでしまったことでバツが悪くなんてなっていない。決してない。

…そうしてしばらくすると辺境伯邸が見えてきた。といっても、そこら辺の少し裕福な武器職人の家兼と大して変わらない見た目をしていることは確かだ。というのもプテルニック帝国はかつてここら一帯、現カッチャトーレ領を奪い取り、町や建造物を略奪しつくしこの地域にいたストレゴーネ派をはじめとする現地の異教徒はスクード王国方面へと逃げだすか帝国軍に殺されるなり奴隷として売り払われた。それはどうでもいいのだが結果としてわが領内の人口はかなり少なく大都市なども存在せず、なおかつスクード王国はストレゴーネ派を守る盾という立ち位置を誇示し「ストレゴーネ派の人々の土地」であるカッチャトーレ領の奪還を虎視眈々と狙っている。挙句の果てにはキベモーナス山脈を越えた先にあるわが領に帝国中央軍やバリエラ辺境伯軍がやってくるのは衝突が発生してから早く見積もって一週間といったところだろう。すなわち我が家は人口の少ない領地から上がってくる。少ない税を利用してスクード王国軍や場合によってはストレゴーネ十字軍の発令まであり得る状態で最低一週間は耐え抜かなければならない…帝王閣下からの支援金があるとはいっても邸宅に金をかけている余裕などないことは明らかだといえるだろう。

そんなこんなで本を運び込み地下室で早速本を広げる。ちなみにこの地下室はこの邸宅が我が家のものになる以前…サビエがビェクシヒェーリ市という都市だったころに作られたものだ。帝国に侵攻された時にも緻密に隠されたこの地下室は戦火を逃れていた。どうやら前の住人も蔵書の保管庫として使っていたらしい。見つかった時には既に多くの蔵書が保管されていた…まぁそれも全部読み終わったんだが…

採光窓からの光が減ってきた頃…

メテージュニク「はぁ~、やっぱ魔力ってのがうまくつかめないなぁー…」

地下室のドアがノックされお父さんが夕食に時間を教えてくれる。やっぱり少し気まずくなっているなんてことはない、決してない、

食卓には既にお母さんが座っており机の上には小分けにされたミルクスープと卓の真ん中にある皿に黒パンが積まれている。入ってきた俺とお父さんが席に座ると天帝様への祈りを捧げ、食事を始めた。

トリスタン「…」

メテージュニク「…」

気まずくなんてない、決してない。

トリスタン「な、なぁ…今日お前のことを探していたのは話が有ったからなんだが…その話ってのがな…」

ネダ「あら?もう言ったんじゃないの?」

トリスタン「いや…それはその…忘れておってな?」

お母さん、ネダ・カッチャトーレ、旧姓ネダ・エフセービャは敬虔なるエルディット派信徒であり実家は司祭と深いエフセービャ伯だ。きっと俺に結局その話ができなかった原因である俺の異端行動ともとれる行動についてお母さんとの会話で触れることが難しく、お父さんは口ごもっているのだろう。

メテージュニク「で…その…話っていうのはなんです?お父さん」

トリスタン「あ、あぁ…急な話で悪いんだが…明日帝都へと発つ事になった」

そう言ってお父さんは紙をぺらりと見せてきた。そこには

『カッチャトーレ卿へと通達する。スクード王国にて不穏な動き有り。至急戦力確保及び一族の後継確保のため貴君の第一子の洗礼を予定を切り上げ実行するため帝都へと馳せ参ずべし』

と書いてあった。紙の最後にはプテルニック大司教の押印と帝王の押印が押してあった

メテージュニク「なる…ほど?しかしスクード王国が動きだしているならお父さんが領地を離れるのは…それにお母さんのこともありますし…」

そう言いお母さんのほうを見る。お母さんのお腹は大きく風船のように膨れ上がっている。見ていて破裂してしまいそうでハラハラさせられる…

ネダ「そんなに心配しなくても大丈夫よ~二人は心配せずに行ってきなさい。」

トリスタン「一応エリアス様に教会から人を送ってもらえるから正直わしがいるより安心だしな」

そういう問題でもない気がするが…

トリスタン「あとスクード王国の動きに関しては我が家が独自で派遣している草から上がっている情報の限りではスクード王国はストレゴーネ教皇庁の支持を取り付けることに難儀しているようでな、スクード王国の国王のジャンニ・ウルチが教皇庁からの支持に固執している限りは実際に侵攻が始まるのは先のことになるだろうな…多分」

多分…多分…多分かぁ…

トリスタン「そもそも帝王閣下直々の命令書なんだから拒否なんてできるわけないだろ」

それはそうだが…

トリスタン「そんなわけで明日一緒に帝都へと出発するぞ」

ああそれと、と言って手招きしてきたので近寄ると小声で

トリスタン「帝都へはエリアス様も同行する。例の本を持っていくことはよせよ?」

と言ってきた

メテージュニク「はーい」

{翌日}

ガタゴトと音を鳴らし、たまに轍から外れたのか大きく揺れながら俺とお父さんを乗せた馬車と輸送用馬車は中立探索者機構のサビエ窓口へと向かっていた。中立探索者機構とはいつの時代からだか生まれた人類同士の戦争行為から中立を保ち大きな戦力を保持することで魔領域への人類の探査を主目的として設立された団体である。人族以外の人類種も含めた構成員は機構により地位を保証され、各人類国では構成員の地位を尊重することが暗黙の了解となっている。その代わりに構成員は機構の求める戦闘能力を含めた多くの技能を満たし続け金の代わりに機構からの命令に従う義務を負う事となる。名目上は「中立」を謳ってはいるが、実際には魔領域への探索者としての面だけでなく金次第で戦争にも参加する傭兵としての側面も持っており、もし仮に下手なことをして機構と敵対でもすれば傭兵戦力を雇えなくなり国内の魔領域の魔物を間引きする存在がいなくなり最悪構成員全員が敵になることもあり得る。どういった理屈だかは知らないが魔物と戦っていると戦闘能力が上がるらしく機構構成員の戦闘能力は全体的に高めである。それと同じ理由で帝国貴族にも狩人上りが大量にいる。うちの家もそんな家の一つだ。

トリスタン「見えてきたぞ、そして…あれが今回我々を護衛してくれる部隊だな」

そういわれて前方を覗くとサビエ窓口が見えた、実際には前の戦争で唯一焼き払われていない建物なのでもともとはビェクシヒェーリ窓口だったわけだが…

トリスタン「前衛と後衛のバランスも整っていそうだし…装備の質もよさそうだ…当たり、だな」

獣人は魔法が使えない代わりに圧倒的な身体能力と優れた感覚器官を持ち合わせており、基本的に人族と獣人は片方だけの部隊よりも混成部隊のほうが強い。ちなみに同じ人数だとたいてい人族よりも獣人族のほうが強い

メテージュニク「あれ?エリアス様って獣人大丈夫な方でしたっけ?」

エルディット派は魔法の神秘を重視する教義を持っているため獣人との相性が絶望的に悪かったりする。どんなもんかというと、奴隷として使役することすら忌避されるほどだ。

トリスタン「…」

メテージュニク「…」

トリスタン「ダメだったら…その時はその時ってことで…」

最悪別で帝都に行ってもらうか…

そんな事を言っている間に俺達の乗った馬車が1番手前の兵員輸送車と横並びに止まり、お父さんが降りると向こうから武装した獣人族の引き締まった体格の男が歩いてくる。向かい合って手袋を取り二人は握手をした。マッチョ二人が握手してんのなかなかな迫力だな

武装した獣人「私が今回護衛の指揮を務めますクリーガと申します」

トリスタン「おう、久しぶり、んじゃ配置は任せた」

クリーガ「あっもうそんな感じで行くのな…」

ちなみにお父さんとクリーガーは元戦友だったりする。

メテージュニク「どうもお久しぶりです」

クリーガー「おぉ、あのときのチビか、子供ってのはやっぱ少し見ないうちに大きく見た目が変わるもんだなぁ…そういやあれから6年か…確かあんとき4歳だっけ?ってことはもう俺が探索者になったときぐらいの年か…」

10歳の頃にはもう探索者やってたのかこの人…

クリーガー「んじゃ、配置について説明すると…前後を俺たちの馬車で挟んで貨物車はそっちの貨物車と一緒にまとめて動かせてもらう。一人閉所での近接対人戦に秀でた奴がいるからそいつにお前らの馬車に同乗させる。そしてなんだが…」

少し困惑した顔でクリーガーが言いよどむ

トリスタン「…?なんだ?何か問題でもあったか?」

あー…あの事か…

クリーガー「教会の司祭って…お前どうするつもりだ?」

トリスタン「お前もそう思うか…まぁきっと大丈夫さ…多分な」

クリーガー絶句してら

メテージュニク「やっぱお父さんも人のこと言えませんよね?」

昨日の意趣返しのつもりで言ってみた。子供っぽいって?気にすんな、どうせ子供なんだし

トリスタン「…」

クリーガー「ほら…チビもそう言ってやるなよ…司祭も護衛対象に入ってるのにメンバーに獣人を入れた機構側にも問題が…」

トリスタン「実は獣人混成部隊頼んだのわしなんじゃ…」

クリーガー/メテージュニク「…」

トリスタン「ほ、ほら…やっぱわが領の最重要人物3人を護送するわけだし…万全を期して強い部隊を用意しておきたいではないか」

機構ってこんなミスするのか…って思ってたらお父さんが原因かよ…クリーガーもマジで擁護のしようがなくなって閉口しちゃったよ

クリーガー「まぁ…お前昔からなんか無駄に運がいいし何とかなんだろ、そんじゃ出発準備しとくから出来たら合図するな」

トリスタン「じゃ、森と共にあらんことを」

クリーガー「おう、武人の誇りにかけて」

お父さんが言った挨拶はエルディット派とは何の関係もなく、我が家特有のものだ。おそらく我が家がまだ狩人だったころの部族のあいさつとかそんなもんだろう。クリーガーのはおそらくクリーガーの出身国の騎士のものだろう。

しばらくして、クリーガーと話していた細身の獣人族の老人が馬車の昇降口の前までやってきた

獣人族の老人「よろしく」

トリスタン「よろしく、えっと…名前は?」

獣人族の老人「エヴィロスと申す」

トリスタン「それじゃ…そこに座ってもらえるか?」

と馬車の進行方向に対し右側の後ろの席、すなはち俺の右隣でお父さんの向かいの席を指した

エヴィロス「お坊ちゃん、となり失礼するぞ」

メテージュニク「あっどうぞどうぞ」

そして一番前の馬車が動くと同時に向こうの馬車の上に立っていた探索者から前へ進めといった感じのジェスチャーが送られてきた。うちの馬車の御者もそれを見て鞭をふるい馬車が動き出し、貨物用馬車もそれに続くそして向こうの貨物用馬車もそれに続き最後にクリーガー含めたもう一方の兵員輸送車が続く。これからサビエから少し外れたところに立っている帝制教会支部へと向かうことになる

メテージュニク「指揮官が前なんじゃないんですね」

トリスタン「そりゃあそうだ、探索者は基本的にソロとか4人一組とかの少人数で活動するから指揮官って言っても今回みたいな大人数での活動における指揮官ってのは一番探索者としての実力を持っている奴がなる役割であって実際に司令塔のやうがなる役割じゃない、最も警戒しなくてはいけないのは後方なんだから最高戦力を後方に置いておくのは当然だろ?」

エヴィロス「それに全体を見渡すには後ろからが一番効率がいいしな」

そっか、そういえば…エヴィロスが隣に座ってからずっと気になっていたんだが…

メテージュニク「なんでそんなにずっと警戒してるんですか?この辺りは野盗も奪うような物品を持っている人間が通ることが少なすぎて野盗が出ることもほとんどないですし、魔領域もかなり遠いですよ?」

そう、なんかこの人ずっと気を張り続けているのだ。クリーガーとかもある程度気を張り続けている感じはあるのだが、この人のはなんか異常というか…狩りの時に追い詰められた魔物を彷彿とさせるというか…でも人間不信とも命のやり取りをしているような興奮交じりの緊張とも違い落ち着いているような…不思議な感じがする。あー…変なこと聞いたかな?エヴィロスもお父さんも鳩が豆鉄砲食らったみたいになってるし…

エヴィロス「カッカッカ、面白いことを言う小僧じゃの」

なんか俺の呼び方が坊っちゃんから小僧に変わったな…まぁ打ち解けたってことにしとくか

エヴィロス「これはだな?訓練の賜物というか…アパラレ式短刀術の自然体ってやつでな、まぁ無理して警戒してるとかではないんじゃよ。怖がらせてしまったのならすまぬな」

はぇ~そんな訓練があるんだ…

エヴィロス「しかし…その年でそんなことに勘付くとは…なかなかに才能があるんじゃろうな、どうじゃ?カッチャトーレ卿どの、ご子息にもその手の道に進ませるというのは?」

トリスタン「息子にはそれ以前になさねばならぬことがありますゆえ…」

エヴィロス「カッカッカ、冗談じゃ冗談…ん?あれが教会というやつかの?生憎わしは教会というやつを見たことがないんだが…」

エヴィロスがそう言ったのでお父さんが後ろを振り返りしばらくじっと目を凝らしてから

トリスタン「あぁ…確かに教会ですな…しかしこんな道通ったっけな…?」

メテージュニク「そりゃお父さんこの道は馬車用なんだから馬車で教会にほとんど行かないお父さんが見覚えあるわけないじゃないですか」

お父さんは移動の時はたいてい馬車ではなく乗馬して行動している。そうでなかったとしても、そもそもお父さんが教会に行くことなど殆どないのだが…教会はサビエから離れており、白い皮の幹を持つ木が生い茂る林にあるものの、魔領域ではないため人の手が入っている。実際この道もカッチャトーレ領にて広く見られる泥道ではなく、砂利道だ。見えてきた教会の建物は枠や柱を除き一辺が俺の身長よりも大きく切り出された白い滑らかな表面をした石によって作られている。柱や枠は同じ材質だが一枚岩から削り出されたもののようで、確か…エルディット様が魔具に好んで使用していたとされる…だった気がする、なんだっけ…サンアルベロだったか…という木をかたどった装飾がついている。ドアは真っ黒な木によって作られ、ノブとドアの装飾には黄金が輝いている。そしてそのドアの前には毛並みの良い白馬につながれたこれまた白く塗られた馬車が泊めてある。おそらくあれにエリアス様が乗っているのだろう。我々の馬車団がとまると俺とお父さんはエリアス様への挨拶のために馬車を降り、貨物車にてあらかじめ用意しておいた、なんに使うのかよくわからん魔具を取り出し馬車団から少し離れた場所に泊っている馬車に向かう。俺は『そんなもので大丈夫なんですか?』って聞いたんだけど『なんかエルディット派の祭司様はこういうのを渡すと喜ぶし大丈夫だろ、多分』って言ってたし多分きっとおそらく大丈夫だろう()

そうして馬車の前へと歩いていき、馬車の前に来てお父さんが

トリスタン「トリスタン・カッチャトーレめ、ただいまお迎えに上がりました。」

と言うと馬車から小間使いと思しき青年が飛び出して教会のほうへと走っていく

トリスタン「あれ?何かやらかしたか?」

メテージュニク「さぁ?」

トリスタン「あっ」

メテージュニク「?どうしました」

トリスタン「よく考えたらずっと馬車で待ってるわけないよな…あの青年にはわざわざ呼びに行かせてしまって悪いことをしたな…」

そういわれれば確かに…いつ来るかもわからない俺たちをずっと馬車に乗って待ってるわけもないか…

エリアス「これはこれはカッチャトーレ卿、生憎と私はそこにはおりませぬ」

小間使いがすでに開けた扉から笑いをこらえるような様子で柔らかな声を発しながら法衣を着た豊かなあごひげを蓄えた老人が出てきた。この人夏も冬もおんなじ格好してるけど暑かったり寒かったりしないのだろうか…

トリスタン「いやぁ…あはは…これはなんとも…お恥ずかしいところを…こちら、餞別…というのも変ですが、ほんの気持ちです」

エリアス「何もこんなただの一祭司にそんなに気を遣わんでも…いやしかし、ありがとうございます。こちらお返しの品でございます」

と言い教会しか発行することのできない回復符を渡してくださった。…いやこんなものが作れるのは一部の類稀なる才と努力を併せ持った祭司だけなんだから、この人がただの一祭司でないことは今この人があっさりとこれを取り出したことから明らかなんだが…そもそもの話この人なんでこんな田舎の祭司なんかやってんだ?この人なら教皇庁か、そうでなくとも帝国大司教の下でそれなりの役職に就けるだろうに…ちなみに回復符の効果自体は、魔力を流せば流すだけ貼った部分が回復する代物で一回使うと体内に取り込まれるため使い捨てだ。

トリスタン「おぉー…これは…こんなものをもらってもよろしいのですか?」

こんな反応をするのも当たり前だ、こんなもの金を出したところで手に入るかわからない代物だ。

エリアス「おや?いらないですか、それではやはり…」

トリスタン「いやいやいやいや有難く頂戴させていただきます!」

エリアス「フフッ喜んでいただけたようで安心いたしました」

面白がってるなこの人…

メテージュニク「お父さん、ほら、あの事エリアス様に伝えないと…」

そう小声でお父さんに伝える

トリスタン「あぁ…えっと…そのですね…今回の護衛部隊なんですが…」

エリアス「なんです?獣人が入っていることですか?気にしませんよそんなこと」

もう勘付かれてたか…ってか護衛部隊ってだけでよくそのことに触れるってわかったな…やっぱこの人ちょっと怖いな…

クリーガー「それならば祭司殿の馬車にはカッチャトーレ殿の馬車と並んで走って貰えますでしょうか?そのほうが護衛が容易なので」

トリスタン/メテージュニク「!?」

うっわびっくりしたいつの間に居たんだクリーガー。いつの間にか俺とお父さんの後ろにいたクリーガーに二人でびくっとした。ってかクリーガーが居たから護衛部隊に獣人がいるってわかったのか?

エリアス「それではそのように御者に伝えておきますね」

エリアス様はそうにこやかに微笑みながら答えた

エリアス「さて、それでは出発しますか」

そう言ってエリアス様が馬車に乗り込んでしまったので、俺とお父さんと…あれ?クリーガーどこ行った?もう馬車に戻ったのだろうか…とりあえず俺とお父さんでもうすでにゆっくりと動き出してしまっている馬車に乗り込む。護衛部隊と合流した時もそうだったが、エリアス様と合流するためしばらくはかなり速度を落として走るため速足で追いつくことができる。

エヴィロス「おかえりなさいませ、この様子だと祭司様の件は大丈夫だったようですね」

トリスタン「ああ、よかったよかった、やはりこんな田舎に送られてくるなんてよっぽど度量が広くないとやっていけないんだろうな、うちの領敬虔な信徒もかなり少ないしな」

エヴィロス/メテージュニク「いやカッチャトーレ卿殿/お父さんがそれ言いますか」

トリスタン「だって事実だし?」

だとしてもだなぁ…

トリスタン「それじゃ、とりあえず今日はバリエラ領州都イリヤまでだな。メテージュニクは初めてのカッチャトーレ領の外だろ?よく目に焼き付けておけよ。と言ってもお前がわしの跡を継げば何度も通ることになるだろうがな」

こんな感じで俺たちの馬車団は帝都へ向かい始めた

おかしいな…書こうと決心した時にはまだ夏休みの初めだったはずなんだが…

セリフの書き方はいまいちどう書くのが正解かわからん…

中立探索者機構ってのは作者が冒険者ギルドって単語を使うのが癪だった為逆張りで生まれたものだったりする。実際ちょっとあれヨーロッパの「ギルド」ってやつと結びつかない気が…まぁどうでもいっか。

どっかのタイミングでプテルニック帝国の貴族爵とかの設定とか入れるか

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