第3話 照れる
「ねー、C組の転入生みた?」
「みたみたー」
「「めっちゃ可愛いよねー♡男子なんて嘘みたい!」」
湧きだつ女子達を、席から遠巻きに碧希と見ていた亜紀は、碧希に話しかけた。
「注目の的だね、神谷くん」
「うん、すごいね」
「でも女子が騒いでいるから、男子が近寄りがたくなるんじゃないかと心配したけど、よかったよ。仲良くなってる。」
クラスメイトに楽しそうに話す神谷を見ながら、碧希はふっと微笑みながら返した。
「そうね、あんな感じだから逆に親近感の方が勝ったのかもね」
亜紀も碧希の言葉にうん、と頷く。
「それに神谷くんて、見てると癒やされるのよね」
「あーそれ、分かるかも」
「でしょー(ん?でも珍しいな、碧希が男子に対して癒やされるなんて言い方をするなんて···)」
亜紀がそんなことを考えていると、後ろから1人の男子生徒が碧希に声をかけてきた。
「九条!」
「なに、山本?」
山本と呼ばれた男子生徒は悔しそうな顔をして碧希に懇願してきた。
「お前からも神谷に言ってくれよー!俺達の部の良さをさぁ」
「山本、入部勧めてるの?」
「おう、ぬかりないぜ!」
「あの···その前に何部か聞いてないから何がなんだか···」
鼻高々に言う山本の横で、神谷は困った顔で碧希に助けを求めた。
「あれ?そうだっけ?」
「何がぬかりないぜ!だよ。1番大事な情報を抜かして····流石は山本だね」
「ガーン!流石って何!」
ショックを受ける山本をガン無視して碧希は神谷に説明する。
山本は落ち込んでも引きずらず、すぐに立ち直る性格で、部ではいじられキャラであり、碧希も山本には遠慮のない対応をしている。
「えっとね、私達は演劇部なんだ」
碧希の横で山本はキメ顔をしている。
「演劇部?すごい!」
王子様碧希、と木のキグルミを着た山本を想像する神谷。
「俺だけおかしいでしょ?!木って!キメ顔の後にやめてよ!」
「でも、九条さんをつい男役で想像しちゃったけどさ」
もう順応して神谷くんは山本をスルーしている。慣れるのが早いなぁ。
「ちょっ無視?!」
「俺は女役もハマると思うな!ロングヘアーとか似合いそうだよね!」
「え···」
(私を女子としてちゃんと見てくれてる···?そんなこと男子に言われたの初めてだ。どんな顔したらいいの…?!)
山本みのるくん
いじられキャラ。雑な扱いをしても大丈夫と思わせる妙な安心感を持ち合わせている。
実際、凹んでもすぐ元通りになる。