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イグニション前の速度より  作者: 紀
【夏の章】
54/82

グリモワ・パスト・デイズ Bパート

◆ ◆ ◆

 

 セイが8歳でミフィが7歳の頃。

 

 ミフィの術印のモチーフが猫と決まってから、セイの夕食後の時間は、再び孤児院の庭で修練をする時間に戻っていた。ミフィはというと、着替えなどを詰めた風呂用のバケットを持って庭に出てきて、セイの近くに設置されている石造りのベンチにちょこんと座わり、セイの自主的な修練が終わるのを待っていた。


 夜に術印のモチーフを二人で探しているときは、二人は同じ時間に温泉に向っていた。ミフィの術印が決まった今となっては、二人の時間を一致させる必然性はないのだが、セイはその事を口にしようなどとは思わなかった。


「先に風呂に行く?」

「ううん。待ってる」


 常識的に考えて、修練で汗をかく前に風呂に行くのは不衛生であろうが、幼いセイにとってはそこまで異常な考え方ではなかった。クォーサイドタウンの夜の孤児院に庭には、素振りをするセイに加えて、石造りのベンチに座る7歳のミフィの構図が一応は出来上がった。


 

 暇そうにしていても、ミフィは毎日側に来ていた。そして、おしぼりのないカフェのように気が効かないセイのセリフに、軽く相槌を打っていた。


 幼すぎて当然と言えば当然かもしれない。しかし流石に暇を感じたミフィは、孤児院の図書室に〝グリとモワール〟という兄弟が活躍が記された物語がある事を思い出した。術印のモチーフを探すときに見かけて読んだ一冊だ。ミフィはグリとモワールとランタンを持って、セイが一人で剣を振っている孤児院の夜の庭に出てきた。右腕で一冊を抱きかかえ、左手にはランタン。あからさまな格好を前にして、セイはなるべく声に丸みを含ませて尋ねた。


「どうしたんだ?」

「セイ。この本だと年上の男の人をお兄ちゃんって呼でるよ?」

「ふーん。どんなのだ?」


 セイは剣を止めて、石造りのベンチの方に向かった。ミフィもセイが動き出すと同時にベンチに向かい、二人は横並びで座って一緒にグリとモワールを読んだ。


 グリとモワールは物語であるから、兄についての辞書的な解説は特にない。文脈の上で類推する事になる。想像力はミフィの方があったのだろうか。しかし、その読解は幾分曲解であった。


「多分、仲良しの年上の男の子がお兄ちゃんなんだよ」

「ふーん」

「だからね、セイはお兄ちゃん」


 セイはグリとモワールの挿絵を数秒見つめて、少し突っ込んだ言葉を選んだ。


「じゃあ、俺とミフィは仲がいいんだな?」

「うん」


 セイの僅かな踏み込み、ミフィの笑みが帰って来る。セイが8歳、ミフィが7歳のときの出来事であった。


 当時の保護役は夜、セイの側で風呂待ちをしているミフィに紙の術印を作るように指示して、それを使って光術の修練をするように促した。ある程度自発的に修練をして、それで成果が上がるならば自身の仕事量が減るだろうという目算である。結果としてクォーサイドタウンの孤児院の夜の庭には、修練をするセイとミフィの構図が完成された。


 そんな二人よく目にする事となったのが、カリナを筆頭とする当時の年少組であった。保護役に風呂に連れられているときに、庭で修練をする二人の姿は嫌でも目に入って来る。


 クォーサイドタウンの孤児院の風景が少しばかり変わった瞬間だ。


 ミフィの光術の修練は始ったばかりであるから、術印が光を放つ事は無かった。光術は〝想起〟の習得から始まるのであるから、当然と言えば当然であり、ミフィの術印に光が灯るのはもっと先の話である。満月の夜に二人は明かるく浮かび上がり、新月の夜には姿が限りなく闇に消えて入った。その姿は孤児院の庭に雨の日を除き有り続けた。


 そして、そこには疑問を持ち込む者もいた。当時6歳の次女カリナだ。セイの特徴的な呼び名が彼女に違和感を与えたからだ。


「何でセイはお兄ちゃんなの?」

「私とセイが仲良しだからだよ」

「ふーん」


 カリナの疑問に答えたのはミフィであった。カリナは幼くとも当時から切れのいいシャープな相槌を返していたが、彼女にはミフィの答えの意味が分からなかった。


 当然、すぐにセイがカリナの兄となる事もなかった。しかし、過ぎ行く日々の中で、セイとミフィが共に過ごす様子を見続けていたカリナは、少なくともミフィにとっての兄というものは理解しつつあった。


 そして、1年近くの歳月が流れ、セイは9歳になり、ミフィは8歳になり、カリナは7歳となる。公国が新年度を迎えたのだった。


 この年、殊更変化を受けるのはカリナであった。7歳となる事で、年少組の部屋から女子年長組の部屋へと移動する事になるからだ。ミフィは前年度そうそうにセイが過ごす男子年長組の部屋に常駐していた。つまりカリナは誰も居ない部屋へと移動する事になるのだ。


 荷物を持って、孤児院の廊下を行き来するカリナの姿を、セイは確かに見ていた。セイは、その日の夜、修練のときにミフィを一度手放す。


「カリナ、部屋に一人でいるんじゃないのか?」

「うん」

「行ってやれよ」

「うん」


 手放したのはセイ自身であるが、一年間、ずっと側にいた女の子が居なくなるという事の大小にセイが気がついたのは、ミフィがその場を離れてからだった。


 庭で木剣を一振り。セイは空を見上げて、ため息を春の風に混ぜた。などとセイが感傷に浸っていると、すぐにミフィが戻って来た。


「連れてきたよ」


 ミフィはカリナと一緒だった。ミフィとカリナはそれぞれランタンと本を一冊持っていた。本は画集で、カリナの術印のモチーフ探しのためだ。ランタンは夜の闇を払う明り。ミフィの術印は今だ点灯できていない。光源としてのロウソクの火は欠かせないのだ。


 二人は孤児院の庭の石造りのベンチに横並びに座って本のページをめくり始めた。


 セイの哀しみは即刻吹き飛ばれた。その余波は、ついでにセイの心の吹き溜まりをも飛ばしていた。


 吹き溜まりとは、かつて自身と共に移籍する事をセイに勧めた13歳の少年であった。セイの記憶には彼の姿がこびりついてる。自身の感情とは別の、他人から強烈に発せられる感情の記憶があった。


――このまま、この村に居てもな……――


 13歳の少年が諦めるように呟いた言葉の意味を、セイは本当の意味で噛みしめたのは、彼が去ってからだ。

 

 山河の懐に位置する田舎町・クォーサイドタウンの孤児院には身も蓋もない事などいくらでもある。ペアリングが出来ない異年齢。文化的な閉塞。不規則に訪れる悲話の語り部。それは千年のときを刻んだ公国においては相対的に十分に不幸な部類であった。


 しかし、セイは孤児院を移籍しなかった。今尚もってセイにその理由はわからない。

 

 後年、次男のヒースに

「単なる引きこもり体質なんじゃないか?」

と言われたが、どうもそんな気もしない。


 次女のカリナには

「土地の精霊が兄さんを縛っている」

と言われたが、そんな霊気も感じない。


 ミフィには

「私が居たからに決まっているでしょ」

と言われたが、セイは8歳になりミフィと術印のモチーフ探しをするまで仲が良かったわけではない。


 謎である。謎の暗闇で響く不穏な言葉は喉元に突きつけられている剣である。セイは7歳からの一年の間、その圧力を感じた。8歳になり、ミフィが年長組に上がって共に過ごす時間が増えても、圧力の除去には至っていなかった。

  

 だが、この日以来セイの心に、孤児院を去った13歳の少年の言葉が響く事はなくなった。


 13歳の少年は、セイを脅す事などもっての他で、説得さえしていなかったのかもしれない。セイはそう思えるようになった。彼は彼の人生のために足掻あがく事を決めたのだろうと、セイの心は単純に整理がついたのだ。


『ここは失われるものがある村だ』


 9歳になったセイは心で呟いた。その判断は13歳の少年の幻影と等しかった。しかし、カリナを背にして〝連れてきたよ〟と言ってニッと微笑むミフの姿が、セイにその次の言葉を与えた。


『だから何だって言うんだ?』


 セイがすべてを自意識の遡上そじょうに上がっていたわけではない。だがセイは除去を感じとった。重く不穏な剣を取り払い、まとわりつく不安を一蹴することに成功した。


 それがカリナを連れて出てミフィが来た、という事であった。ときに、剣を止めて石造りのベンチの方をみれば、ミフィに側にピッタリとカリナが座っている。

 

 連れ出されたカリナの方は無表情だ。画集のページが人間賛歌の裸体のページに移っても繭一つ動かない。


 連れ出した幼いミフィは

「これは、えちえちなやつだねー」

と言い、それほど速くはないスピードでページをめくっている。


『だから何だって言うんだよ』


 ここで反応するのは危ういと思ったのだろう。セイは心で呟いた。

 

 ミフィの蔵書検索が特別に優れていたわけではないのだが、自身のモチーフ探しのときに読んで理解できる本と理解できない本の区別くらいはついていたので、ミフィはテンポ良く本を選んで、二人はセイが剣の修練をしている庭に直ぐに出てきた。


 日が変れば本も変る。画集だけではなく物語なども読んで、その中の一冊には当然グリとモワールも含まれていた。ここにおいて、カリナはミフィの口から兄の出典を知る。しかし、セイがカリナにとって兄となるのは後の話であり、先に生まれたのは姉・ミフィであった。


 それはミフィが〝ネクロとミコン〟という本をもって庭に出てきたときだ。〝ネクロとミコン〟の内容は、仲のいい姉妹が世の中の大根おろしをすべて紅葉おろしに変えるという物語だ。


「……。はい。お終い」


 辛いものが苦手な姉妹の物語を読み終えたミフィは、パタンと本を閉じた。素振りをしていたセイの耳にも物語の内容は入ってきていた。


「ミフィは姉さんなのか?」

「そう。私はお姉ちゃん」


 突如沸いて出たセイの質問に、ミフィは当たり前のようにシレっと答えた。今日の今日まで姉と呼ばれた事など無いはずなのだが。


「呼んでみて?」


 持ち前の吸収力が違うのだろうか。あるいは図に乗るのが上手いのかもしれない。〝はい、どーぞ〟と、ミフィはくるりと首を回して隣に座るカリナを見たが、要求しているのはどうみてもミフィだった。


 カリナは横目でミフィの目をじっと見つめて暫くは黙っていた。


「……」

「呼んでみて?」

「……」

「呼んでみて?」


 じーっと見つめるミフィにカリナは口数少なく答えた。


「嘘はダメなんじゃない? ……。姉さん?」

「声はいつか本物になるんだよ?」


 ミフィの言葉の意味は、カリナはおろかセイも理解できなかったが、ミフィは一人で満足気に微笑んでいた。


 ミフィは後日、日を改めて〝グリとモワール〟と〝ネクロとミコン〟を持って年少組のの元へ行って布教した。


「セイはお兄ちゃんで、私はお姉ちゃんなの」

「ほーん」

「呼んでみて」

「兄ちゃんと姉ちゃんね」

「よろしい」


 この流れを汲み、次ぎに生まれたのは姉・カリナである。ヒースは理屈を通したかったのかもしれない。後はなし崩しだ。ヒースも年下の者にとっては兄になり、ルネも年下もの者に対しては姉になった。


 そこから3年の月日が流れた。

 

 その間アキットが、次いで、ギーがクォーサイドタウンの孤児院に籍をおいて、在籍者の顔ぶれは以下のものとなった。

 

 セイ   11歳

 ミフィ  10歳

 カリナ   9歳

 ヒース   8歳

 ルネ    7歳

 ロック   6歳

 アキット  5歳

 ギー    4歳


 この頃、セイには強烈な違和感があった。どうも、ルネかロックあたりから、さも当然のように兄や姉がいるような雰囲気を感じ始めたのだ。


 日々募る違和感はそこそこ積み上がった。だからといって、セイに機能不全などは起こりはしなかったのだが、気にはなる。セイは夜の庭で修練をしているときに、ミフィに問いかけた。


「なあ、あいつら、俺とかミフィの事、本当に兄とか姉だとか思って無いか? あいつら、お兄ちゃんとかお姉ちゃんはあだ名だって分かって無いだろ?」

「いいんじゃない? それはそれで」

「いいんだけど……違和感とか無いか? 何ていうか。さも当然のように、たまに頼ってくるだろ? お菓子くれとか、嫌いなもの自分の皿に乗っけてきたりとか、高い所の物とってとか、蝶々結びしてくれとか」

「嫌なの?」

「嫌じゃないけど、違和感ないかって話だ。俺にとってはあいつらは、なんていうか、友達みたいなもんだけど、あいつらにとっては何か違うのかなって。ミフィは感じないか?」

「それはね。少し感じるかな」

「そうだろ?」


「でもそこがおもしろいんじゃない?」

「そうかもしれないけど、でもこのまま成長していいのかって、少し悩むんだよ」

「悩むところとかある?」

「だから……、このままだと本当に兄と妹か、姉と弟みたいになるだろ?」

「ああ。うん。つまり恋愛感情とか下手したら友達感覚みたいなのがなくなるって事ね?」

「そう」

「でもお兄ちゃん、私達は友達も恋人も兄弟も知らないでしょ? 本の中でしか」

「いや、まあそうなんだけど」

「いいんじゃない。今のままでも。みんな根っこは優しい子だよ?」

「まあ俺達は俺達らしくでいいって話もわかるんだよ。だけど本当にいいのかなって」

「なに? ベストを探せってコト?」

「そこまでは言って無いけど。でも、将来、別に恋人同士になってもおかしくないだろ?」

「んー……。 お兄ちゃんは思ったより恋愛至上主義なの?」

「いや、そういう事じゃなくて、可能性が潰されていくのは何かなって、ならないか?」

「無くも無いけど、大きくなれば自然に気がつくんじゃない?」

「そんなもんかなぁ……」


 セイが言いたいのは防衛線でのペアリング中の恋愛ではない。防衛線での〝滞在期間〟での前後の話しだ。ミフィは理解しているのだろう。何かを閃いたように両眉が上がる。膝上のハンカチに描かれた術印もピッタリのタイミングで光を放つ。


「一ついい方法があるよ?」

「なにかあるのか?」

「私とお兄ちゃんが恋人になるの」

「俺と?」

「私のお兄ちゃんはセイ以外にいないでしょ」

「あ、ああ……」

「兄妹なのに恋人っていうのは変でしょ? そこに違和感を感じて、いつか事の真相に気がつくの」

「そういう話しにしようって事か?」

「それだけじゃあ、ないんだけどね」


「……」

「……」


「俺は、ミフィが生きて帰って来きてくれれば、それでいいよ」

「結婚しててもいいの?」

「いいよ。生きていれば」


 6年を共に過ごして、カウントダウンはあと5年。そこから先に約束された命は無い。やるせない気持ちは何万回と考えた未来が、とっくの昔に封殺していた。セイは踏み外せない未来だけを抜き取り淡々と告げた。


「馬鹿みたい。言わなきゃ良かった」


 ミフィのしょんぼりとした声には刺が混ざっている。


 その声はセイの心によく刺さる。だが前向きに生きて帰ると約束できない。それが当時のセイであった。公国にありふれた少年少女達のように、同い年ならばこんな事は言わなかった。そう感じさせる様に、セイは普段と変わらない調子になるように勤めた。


「俺はミフィのように優秀じゃない。防衛線で死んでもおかしくはないと思ってる」

「じゃあ、私も死ぬ気がしてきた」

「ミフィは死なない。俺は信じている」

「何それ。ひどい決め付け。私も死ぬかもしれないじゃん」

「いや。ミフィは死なない。実際もうAだろ。成長率が違う」

「じゃあ死んだ。今死んだ。さっき死んだ。今日から私はリビング・デッドとして生きて行く」

「分かりづらいけど、生きてるみたいだな」

「うぅぅ……、……。もう!。そうじゃないし、リビング・デットはどちらかというと死んでるほうでしょ!」


 調子を取りもどしたミフィに説得を続けるセイ。このときの若き二人には、まだ些細な問題まで真剣に話し合う余地は残っていた。


「いや、でも実際恋人になったからって今までと何が違うんだ?」

「違うに決まってるでしょ。そんな事も分からないの?」

「いや、それは……分かるけど……。でも約束なんかしたあとで、俺が死んでたら、ミフィは一人ぼっちで生きていく事になるんじゃないか?」

「皆生きて帰ってくるんだから、私はぼっちにならないの!」

「生きて帰って来ても、クォーサイドタウンに帰ってくるかっていうと、分からないだろ? 弟も妹も、ペアリングした相手の故郷とかに行く可能性もあるんじゃないか?」

「帰ってくるよ。絶対帰ってくる。ここが一番楽しいんだから」

「俺達が知ってるのは隣町までだろ? そこまで言い切るのはどうなんだ?」

「私には分かるの。あぁ、やっぱりクォーサイドタウンだなぁっ、やっぱりお兄ちゃんとかお姉ちゃんもいるしねぇ、ってなるの。みんなそうなる」

「それこそ妄想が混じってるんじゃないのか?」

「そうならないようにすればいいんでしょ?」

「ミフィ。本気か?」


 10才の少女のマイン・ドコントロール。セイも半信半疑だ。


「いいでしょ。別に。それくらい。それとも毎日、くらぁーい感じで暮して行くの? 昔みたいにリビング・ボッチとして生きていくの?」

「いや、そんなつもりはないけど……」

「私は強制なんかしてないよ。日々みんなと楽しく暮して行きたいっていうのは私の単純な願い。いいでしょ。それくらい?」

「ああ、うん……、まあそうだな」


 ミフィは避けがたい事象を把握していた分だけ、セイよりは精神年齢が高かったのかもしれない。ミフィはコントロールしているわけではない。二人が弟や妹に愛情を注ぐということは、この孤児院やこの村に愛着をもつという事にも繋がる可能性はある。そして、それは将来にわたり田舎の不条理を受けてしまう可能性を孕んでいる。ノーリスクにはノーリターン。だがリターンが上がればコールする。そんなミフィの主張は続く。


「みんなにも多少恋愛感情なりを意識させる事もできるし、将来の私のリビング・ボッチ問題も解決できるんだから」

「悪かったよ。反応しなくて……。リビング・ボッチはうまい事言ったと思うよ……」

「そんな事どーでもいいの!」

「でもなぁ……」

「何が問題なのよ」

「こう。なし崩しになったなっていうか」

「お兄ちゃんの想像力が低いのが問題なんでしょ。ここには問題も何も最初からなかったんだから!」

「ミフィはそれでいいのか? 防衛線には最低、8年はいるんだぞ。ペアが死ななかったら恋愛感情の一つや二つ、沸いて来てもおかしくないじゃないか」

「ふ~ん。お兄ちゃんはそういうタイプじゃないと思ってたんだけど……。それとも私がそうだって言いたいの?」

「だから、そんな事は言って無いだろ? でも情が沸いてこないって事もありえなくは無いだろ?」

「情が沸いたなら、その人がいい人を見つけられるようにお手伝すればいいの。お兄ちゃんは変な所を気にしすぎ。恋愛感情なんて何処からでも解決できるんだから」

「……」


『何度も考えたのはミフィも同じか』

などとセイ考える間えていると、ミフィが冷静な声をセイに送る。

「それに、結局何があっても、みんながみんな、別の町に行くって事は確率として低いんじゃない? 少しくらい帰ってくるでしょ?」

「いや、それくらいの事は分かってるよ」


 セイは最後に少し強がった。


「じゃあ、何でこんな話になってるのよ?」


 ミフィは最後に頬を膨らませた。


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