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長期滞在への準備

この街に一ヶ月の滞在が決まり、その間やりたい事があると言っていたコウスケ。


宿を出たコウスケはその準備の為に動いていた。


「おっちゃん、コレってどこに売ってんだ?」


コウスケがそう話し掛けたのは、屋台の店主だった。


「にぃちゃん何言ってんだ?うちは屋台だぞ?ここで売ってるに決まってんじゃねぇか。それとも何か?冷やかしか?そうなら行っちまえっ!」


追い払われそうになるコウスケだったが


「その旨そうな煮込みの話じゃねぇよ!コレだよ、コレっ!」


そう言って、その煮込みを売る屋台その物をコンコンと叩く。


しばしの間、意味が分からないと眉を寄せていた店主だったが、ようやくコウスケの言葉の意味を理解したのか


「・・・あぁ!何だにぃちゃん、屋台やりてぇのか?」


そう驚いた顔で言った。


「いや、まぁ・・・はい」


そう答えるコウスケ。


すると何故かこちら側に出てくる店主。


出てきた店主は、コウスケに近付くと


「にぃちゃん。若ぇのに屋台やりてぇなんて珍しいな?」


強めにコウスケの肩をバシバシと叩きながらそう言った。


「いや、あの、イテッ・・・あのそれでどこで売ってるんですかね?」


一刻も早くこの店主から逃げたいコウスケは、話を急いだ。


「屋台をやりてぇってにぃちゃんには残念だがな、ここいらで屋台をやってる奴等はみんな、前の店主から引き継いだ物なんだ。新しく始める時は特注で作って貰うんだよ。んでこの街には作ってる職人はいねぇんだ」


そう申し訳無さそうに言う店主。


「売ってないって事ですか・・・分かりました。教えてくれてありがとうございます」


軽く頭を下げながらそう言ったコウスケ。


「なんだぁ?諦めんのか?」


コウスケが諦めた様に見えたのか、店主はそう聞く。


「まさか。他の方法が無いか探してみるだけですよ。諦めてませんよ」


そう返すコウスケ。


それを聞いた店主は嬉しそうな顔で、再びコウスケの肩をバシバシと叩く。


「そうか!諦めんなよっ!まぁここでダメでもよ、ガラルクラフト辺りに行きゃ腕の良い職人が立派なのを作ってくれるって話だ。最悪それもアリだと思うぜ?」


そう応援してくれる店主。


「はぁ・・・まぁ、それも考えてみます」


そう言って、煮込みを売る屋台から離れるコウスケ。


(そうかぁ~、売ってないかぁ~。やっぱり作るしかないか?でも、イチからは面倒だよなぁ~。いや、創るのもアリか・・・あ~でも屋台なんて触った事・・・)


頭の中でそこまで考えたコウスケは、何かを思い出した様に振り返った。


そこには、今しがた寄ったばかりの煮込みを売る屋台。


(・・・触ったな)


コウスケは急いで宿へと戻った。


途中で何やら木材などを買ったりしながら。



宿へと戻ってきたコウスケは、その足で裏手へと回る。


なるべく人の邪魔にならず、ある程度開けた場所を探す。


丁度いい場所を見つけると、宿の受け付けへと向かい使用許可を貰う。


裏手へと戻ってきたコウスケは、早速作業を始めた。


まずは、煮込みを売っていた屋台を[創造の産物]で複製する。


(どこまでコピーされるんだ?まさか煮込みまで出てこないよな?)


そんな事を思いながら光が収まるのを待つ。


光が収まり現れた屋台は、先程見た屋台と全く同じだった。


違いと言えば、焦げ、汚れ、傷等が無い新品の状態である事。


あとは、煮込みも当然無い。その鍋も無い。


そして、後付けだったのだろう、看板も無かった。


それらを確認したコウスケは、必要な物を考える。


(まずは火だな。これはこの前の火力調節型着火魔方陣でいっか!・・・いや、マズイか?売ったんだっけ?・・・まぁ、魔方陣売って稼ぐわけじゃねぇし大丈夫だろ!あとは・・・冷蔵庫、は魔法鞄でいいし・・・あっ!カウンターも付けた方がいいな?出来た物置いたり、支払いに便利だな。支払い?レジもいるのか?・・・まぁそれは木箱とかでいいか)


新品の屋台を前に、しばらく考え込むコウスケ。


ようやく纏まったのか、買ってきた木材や元々持っていた素材などを広げ


(目標は明日の昼開店だな!)


そう決めて作業を始めたコウスケだった。




辺りが暗くなった頃。


コウスケは未だに宿の裏手で作業していた。


屋台の上の方に照明の魔方陣が描かれた紙を一時的に張り付け、明かりを取りながら。


そこへ何者かが近付いてくる。


「コウスケッ!やっと見つけた!探したわよっ!」


どうやらエルネの様だ。


「ん?エルネか?どうした?・・・って真っ暗じゃねぇかッ!」


日が落ちた事にも気が付かない程没頭していたのだろうか。


いや、それは無い。何故なら


「魔方陣まで使って明るくしといて、何言ってんのっ?暗いと思ったから明るくしたんでしょ?」


そういう事だ。


「・・・そりゃそうか」


エルネの指摘に、コウスケも納得する。


「もう夕食よ?ロイドも待ってるわ」


そう言うエルネ。


どうやら食事に現れないコウスケを探しに来た様だ。


それを聞いたコウスケは、慌てて片付けを始める。


片付けると言ってもボックスに放り込むだけだが。


それが終わると二人で表まで歩いて行く。


「さっきのって屋台よね?屋台始めるの?」


コウスケの隣を歩くエルネがそう聞いた。


「まぁな。一月も遊んでる訳にはいかねぇだろ?何か面白そうだし」


そう説明するコウスケ。


「コウスケも冒険者やればいいじゃない」


そう勧めてくるエルネだが


「それはエルネに任せるよ。まぁ、一発で功績をあげられる様な依頼があれば考えるけどな」


そう言ってニヤリと笑うコウスケ。


「そんな依頼、Eランクに回ってくる訳無いでしょ!」


そう声を荒げるエルネ。


そんな会話をしながら、二人はロイドの待つ食堂へと向かっていった。


食堂に着くと


「私に食事を忘れるな。と言っておいて自分が忘れるとは、どう言う事だ?」


そうロイドにチクリと言われたコウスケ。


これには


「・・・気を付けます」


そう答えるしか無かったコウスケだった。


こうして、何とか揃って食事する事が出来た三人。


その後は、疲れたのかエルネは部屋へ、ロイドも部屋へ上がったが、その手には数冊の本があるのを見る限りまだ休む訳では無さそうだ。


コウスケは再び作業をしに裏手へと向かったが、終わったのかそれとも切り上げたのか、日付が変わる前には部屋へと戻ったとか。


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