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自由行動

二人と別れたコウスケは、他の街での行動と同じく商業区に来ていた。


魔道具屋や素材屋を見て回り、何か面白い物、役に立ちそうな物、新たな閃きを与えてくれる物等々を探して回るつもりらしい。


それらの物に期待を馳せながらも、それとは別に


(あと、多分この流れだと学園とかもありそうなんだよなぁ)


等とも考えていた。


29のオッサンが学園で何をするつもりかは分からないが、頭の中で見学予定に追加するコウスケ。


事件にならない事を祈るばかりだ。


そうこうしている内に、コウスケの目の前には魔道具屋と素材屋、他にも何やら訳の分からない物が売られた店が複数並ぶ通りへと出た。


「おぉ~!これだけあれば何も見つからねぇって事はねぇだろ?」


自らに言い聞かせているのか、そう独り呟き手近な店へと姿を消した。




二人と別れたエルネは、宣言通りギルドに来ていた。


どうやらSランクを目指す。と言うのは本気らしい。


扉を開けて中へと入ったエルネは、一直線に依頼書が張り出されている掲示板へと足を向けた。


掲示板の前で立ち止まったエルネは、自分のランクで受けられる依頼を順に目で辿る。


いくつかに絞ったエルネは、どれにしようか?と頭の中で吟味する。


腕を組み黙って考えていると、隣でエルネと同じように依頼を選んでいると思われる会話が耳に入ってきた。


「違うって!報酬が安い依頼でも沢山受ければ早くランク上がるんだって!」


「そんな訳ねぇじゃん!報酬が安いって事は簡単って事だろ?そんなの沢山受けても意味ねぇよ!報酬が高くて難しい依頼の方が早いに決まってんだろ!」


「違うって!」


「違わねぇよ!」


そんな言い合う内容の会話だった。


どうやら隣の二人組もエルネと同じ目的、ランクを早く上げる為に頑張っているようだ。


二人の会話を聞いたエルネは、考え込む。


どちらの意見も一理あるように思えたからだ。


少しの間考えたエルネだったが、考えれば考える程分からなくなる。


考える事に飽きたエルネは、取り敢えず掲示板を眺めた。


それで何かが解決する訳では無いが、考える事が苦手なエルネの考え方と言うヤツだろうか。


隣の言い合いを他所に、掲示板を端から端まで眺めるエルネ。


見始めた端から、反対側の端まで目を走らせたところで、掲示板の隣に張られた張り紙が目に入る。


<分からない事があれば窓口へ>


張り紙にはそう書いてあった。


それを見たエルネの頭の中に、いつかのコウスケが現れる。


『分からん時は聞くべしッ!!・・・あの~、すいません』


目に写る張り紙と頭の中のコウスケに導かれる様に、エルネは窓口へと向かった。




二人と別れたロイドは、図書館を探して串焼き屋に並んでいた。


どう探せばその列に並ぶ事になるのか分からないが、ロイドは並んでいた。


大方、この街で屋台をやっている店主に聞けば確実だ。とでも考えたのだろう。


そうであって欲しい。


しばし無言で並ぶロイド。


無事、右手に串焼きを装備し、いよいよ口を開いた。


「この街に図書館等はあるだろうか?あるのであれば場所を教えて欲しいのだが」


クルリと振り返ったロイドは、串焼きを片手に後ろで順番を待つ男にそう聞いた。


「・・・はい?え?」


後ろに並んでいた男は、突然の事に面食らっている。


何故その男を選んだのか。


この街に詳しいであろう店主がすぐ側にいる。


いや、それよりも、先程から通りを行き交う人々の中には、本を小脇に抱え歩いている者も多い。


そちらに聞いた方が余程確実だと思うのが普通だ。


しかし、串焼きを装備したロイドは後ろの男に聞いた。


目を逸らす気配は無い。


何としてもこの男から聞き出そうと言う執念さえ感じる程に。


「・・・え~と、確か学園区の方にあった気がするけど・・・」


「そうか。礼を言う」


見事情報を手に入れたロイド。


それだけ言うと、学園区を目指し去っていった。


「・・・何でオレ?」


「お客さんッ、買わないんですかい?」


背後から聞こえる、そんな会話には全く興味を示さないロイドだった。





その日の夜。


コウスケは一人、宿の食堂で夕食を摂っていた。


(念話は忘れんなよって言ったよね、俺?言ったよね?)


一人そんな事を考えながら肉にかぶり付くコウスケ。


夕食どきになっても二人は帰って来ず、念話も無かったのだ。


そんな憤りを肉にぶつけていると、宿の入り口にエルネの姿を見つけた。


「おうっ!エルネっ!こっちだっ!」


つい嬉しくなったコウスケは大声を上げる。


その事に気付いたコウスケは、慌てて周りを見るが特にコウスケを見る者は居なかった。


その事に胸を撫で下ろしたコウスケは、再びエルネを見やる。


エルネもコウスケに気付いたのか、入り口付近でピョンピョンと跳ねながら手を振っていた。


しばらく跳ねていたエルネは、コウスケの元へと駆け寄ってくると、向かいの席に腰を下ろした。


「ちょっと遅くなっちゃった」


「念話しろって言っただろ?」


チクリとそう言ったコウスケだったが


「ゴメンって!そんな事より聞いてっ!私、ランクを早く上げる裏技教えてもらっちゃった!」


コウスケの嫌味など軽く流し、嬉しそうにそう言ったエルネ。


「そんな事って・・・ハァ、で?裏技って?」


諦めたコウスケは、呆れながらも話を聞いてやる事にした。


「うん。それがね、ランクを上げるにはギルドへの貢献度?って言うのが要るみたいなの!その貢献度?は、依頼を達成すると貯まっていって、いっぱいになるとランクが上がるんだって!」


嬉しそうに話すエルネ。


手柄を自慢している様だ。


「へぇ~、そんな仕組みになってんのか?」


素直に話を聞くコウスケ。


「そうっ!それでね、ここからが大事なんだけど、依頼には報酬は高いけどそれだけ難しくて日数が掛かる様な依頼と、報酬は安いけど簡単で半日とかで終わる様な依頼があるじゃない?」


尚も続けるエルネ。


「あぁ、あるな?」


「どっちがその貢献度?が高いと思う?」


突然のクイズ。


普段説明はコウスケかロイド。


しかし、今は自分がしている、出来ている。


それが楽しくて仕方が無いのだろうか。


そんな笑顔のエルネを眺めながら


「そりゃ・・・難しい方じゃねぇの?」


そう答えるコウスケ。


「でしょ?そう思うでしょ?でも、3日掛かる依頼を受けても、1日で終わる依頼を3回受けてもランクが低い内は大して変わらないんだってっ!だから、ランクが低い内は簡単な依頼を沢山受けた方が早く上がるんだって!」


そこまで言い終わったエルネはドヤ顔だ。


「・・・それって裏技なのか?大体誰から聞いたんだよ?」


「え?窓口のお姉さんだけど?」


「ギルドの職員じゃねぇかっ!そんなの皆知ってんじゃねぇか?聞けば教えてくれるんだろ?」


「でも、私が掲示板見てる時、隣にいた二人組は知らない風だったよ?」


実際は、広く知られている事実だ。


あの二人組はエルネと同じDランク、駆け出しだ。


エルネと同様、知らなかっただけだったりする。


「ふ~ん。まぁいいけど」


ランク上げにあまり興味の無いコウスケは、関心無さげだ。


「明日からは半日で終わる依頼を二つ受けるわっ!これですぐSランクよっ!!」


そう意気込むエルネ。


しかし、コウスケはそんなエルネの言葉に引っ掛かる。


「二つ?もっと受けた方が効率良くないか?」


「あのね、コウスケ。半日って事は一日の半分って事よ?二つ受けたら終わりじゃない!そんな計算も出来ないの?」


何やらエルネから蔑みの視線が飛んでくる。


(アレ?俺今エルネにバカにされてる?されてるよね?)


そんな内心をグッと堪え、話を続けるコウスケ。


「半日の依頼ってどんなのなんだ?」


「近くの森での討伐依頼よ。広い森だから常に張ってある依頼らしいわ」


そう答えるエルネ。


「そうか・・・採取依頼とかは無いのか?」


「ん?何よ急に?コウスケも依頼受けるの?」


「違ぇよ!で?あんのか?」


「それはあるけど・・・何よ?」


いよいよ分からない。とエルネが眉を寄せる。


「その依頼は討伐依頼と同じ森か?」


「ん~と、あ、同じのもあったわね」


眺めていた掲示板を思い出し、そう答えるエルネ。


しかし、要領を得ない質問の連続に、遂に焦れたのかエルネは


「もうっ!それが何なのよッ?」


そう声を荒げる。


「だから、目的地が同じなら採取しながら討伐目標を探して、見付けたら討伐。帰りに更に採取。こうした方が効率良いだろ?違う種類の採取依頼も二つ位受けてけば、行って帰って来るだけで三つ依頼達成だ。これはダメなのか?」


一息にそう言ったコウスケ。


それを聞いたエルネは無言だ。


何分エルネに搭載されたマシンは旧式だ。


処理に時間が掛かるのだろう。


しばらくそんなエルネを眺めていたコウスケ。


すると、目に見えてエルネに変化が起こった。


目をキラキラと輝かせている。


そして


「コウスケっ!それ、裏技っ!!」


そう言った。


それを聞いたコウスケは、室内で見えない筈の星空を遠い目で見上げた。


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