ついにヒロイン登場か!?
もう一人の受験者は、エルフの美少女だった。
「珍しいな。エルフの嬢ちゃんが冒険者になるのか?」
「アッ‼帽子が・・・」
エルフだとバレた事で帽子が無いことに気づいたらしい。忘れたのか無くしたのか。
エルフとは長い寿命を持つ種族で1000~1200年生きると言われている。それ故かエルフ達は退屈に馴れ、隠れ里から出ずに一生を終える者が多い。エルフが珍しい理由はこれである。
しかし、若いエルフの中には退屈に耐えられず夢や希望、刺激を求め外の世界に出る者もいる。
彼女も、何を求めてかは知らないがその一人なのだろう。
「悪ぃが取りに戻るヒマはねぇぞ、さっさと済ましちまいてぇからな。本気で隠したいんならそっちのニィチャンみたいなフード付のマントを羽織るこったな」
視線がオレに集まる。確かに強風等でまくれ無い限りバレないだろう。
彼女は絶望の色を濃くしていた。
(せっかく隠してきたのに、このまま街を歩くなんて・・・)と絶望色の顔が物語っている様だ。
「どうしよ・・・」
可哀想になったのでマントを脱ぎ、差し出す。
「貸そうか?昨日買ったばかりで汚れては無いよ」
「ほんとッ?いいのッ?ありがと」
「いいよ」と言う前にすでに羽織っていた。
「・・・エッ?このマント・・・」
自分にもバレてはまずい事があると思いだす。焦って誤魔化した。
「じゃあ行きましょうか」
そう言って引率の冒険者の方へ歩いた。
~~
マントの事を追求されることもなく、街の城門を出た。出た所で
「この先の草原がうさぎポイントだ。そこで10羽狩ってもらう。一人でやってもいいし、二人で協力して20羽でもいいからな。この先パーティーを組んで仕事することも多い。」
どうする?っと彼女に視線を向けると大丈夫!っと首を横に振った。
背中に弓を、腰に細い剣を、と武器は持っているようだが少し心配だ。自分は武器すら持っていないが。
(悪いけど・・・【鑑定眼】)
エルネ・オム 190歳
種族 ハイエルフ
職業 狩人
ギフト 至上の癒し手
スキル 水魔法上級 風魔法上級 植物魔法全習得 弓術マスタリー 細剣マスタリー 薬の知識
エルフの里の族長の姪。好奇心で里を抜け出したばかり。現在、人拐いに目を付けられ付き纏われている。弓の腕前は一級品。
(・・・心配は無さそうだが違う心配が沢山・・・。それにしてもスキルがスゲェ‼)
オレのチートってほんとにチート?等と考える。
とりあえずこれなら試験は大丈夫だろうと、別れて草原を進んだ。
試験は順調だった。うさぎを見つけると駆け寄り角を掴んで持ち上げる、あとは殴るだけだ。
うさぎを探すのに苦労したが、なんとか10羽狩り終え最初の場所に戻る。
「早かったな。嬢ちゃんはまだ・・・こっちもか?」
振り向くとオレのマントが歩いてきた。
「アチャ~、負けちゃったかぁ」
絶望していた彼女とは別人のように機嫌がよかった。そして、もう一人。
「仕事が早く終わればそれだけ早く酒が飲める‼よくやった‼」
ガハガハと笑うこちらも機嫌が良さそうだ。そうして予定よりも早くギルドに戻った。
~~
背中の魔法鞄から角を十本取り出し、おばちゃんのいる窓口に置いた。
「・・・8、9、10確かに。これでアンタも冒険者だよ」
ギルドカードを受けとる。ランクはEからだ。
冒険者のランクは、下からE、D、C、B、A、Sの順に上がる。AランクとSランクにはさらにA、AA、AAA、S、SS、SSSの順に細分化されている。最高位のSSSランクの冒険者は今現在、二人しかいない。
オレのマントの方を見ると、腰の小さなポーチから次々と角を取り出していた。
(あのポーチが魔法鞄になってるのか。道理で武器以外持ってないわけだ)
この後どうしようか?と考えていると引率役だった冒険者が
「お前ら、こっちだこっち‼」
「なんです?」
呼ばれるまま酒場に入った。
「合格したヤツはここで合格祝いに一杯やってくのが、しきたりなんだよ。」
「ホントですか?それ」
渋々席につく。
「じゃあ一杯だけ」
オレのマントがいつの間にか隣に座った。
「「「おめでとう~乾杯ッ‼」」」
酒場にいたほとんどの人に祝ってもらい、出された酒を煽った。
~~
今宿屋の前に立っている。風見鶏亭ではない。
少しするとその宿屋から、オレのマントを持ったエルフの美少女が出てきた。ちゃんと帽子は被っている。
「これ!ありがとね。すごく助かったわ」
「ならよかった」
「・・・もしかしてそのマント、すごく高価な物だったりする?」
(さてどうするか?何か気づいたんだろうな。物自体は安物だが・・・惚けとくか)
「いや、安物だよ」
「・・・そう、まぁいっか。」
(話を変えた方が良さそうだな)
「オレはコウスケ。君は?」
「えっ」
「名前だよ!自己紹介まだだったよね?」
こっちはもう知っているが。
「あぁ・・・私はエルネ!エルネ・オムよ」
「よろしくエルネ!冒険者になったんだ、お互いがんばろう!」
「えぇ!よろしくコウスケ」
「エルネはこの街で冒険者をするのか?」
「ううん。私は冒険者として旅をするの。明日にはこの街を出るわ」
「急だな。急ぐ理由でもあるのか?」
「早くいろんな場所を見てみたいってだけよ!コウスケは?」
「オレもこの街にずっと居るつもりは無いよ。ただ宿代を一週間分払っちゃって・・・それまでは動けん」
「コウスケっていくつなの?そんなで旅なんてできるの?」
「・・・29です。がんばります」
泣きたかった。
「29ッ!?・・・年上だったのね。同じくらいかと思ってた」
(ちょっと待て!!どう考えても年上はそっちだ)
190より上と言われ少し傷ついた。何て答えるのか気になり聞いてみた。
「同じくらいって、オレはどう見えてんだ?」
「20前後かと思ってたわ」
「エルフでその歳って生まれたてなんじゃ?」
「??・・・あぁ!人間にするとって事よ。私は今190歳だけど、人間にすると19歳くらいよ」
(大人になるまで200年。果てしねぇな)
「気の長げぇ話だな。急がなきゃならんのはオレの方って気がしてきたよ」
「それぞれに合った時間を過ごせばいいのよ」
「そうか。そうだな・・・長々と悪かったな。じゃあな」
「私にとっては大した時間じゃないわ。こっちこそマントありがとね‼じゃあどこかでまた」
「あぁ!そうだな。その時はまた酒でも飲もう」
「楽しみにしてるわ」
次の日、エルネは街を去った。