エルネとの勝負2
入って来た城門とは反対の、海側から街の外へ出た二人。
「外って言っても直ぐ近くなのね?」
既に見える位置にある港を目にし、エルネがそう言った。
「そりゃ、あんまり遠いとここが港街になんねぇだろ?」
良く分からない理由を付けるコウスケ。
「・・・それもそうね」
そんな理由にエルネは納得した様だ。
しばらく歩くと港に着いた。
どうすればいいのかとキョロキョロしていると
「オメェらが依頼を受けた冒険者か?」
体は筋肉質、肌は日に焼けて浅黒く、ねじり鉢巻にタンクトップ。
如何にも漁師。と言った出で立ちの屈強な男が話し掛けてきた。
「はい、そうです。今日はよろしくお願いします」
そう言って頭を下げたのはエルネだった。
(おぉ!エルネがまともだ!)
内心驚くコウスケ。
「そうか。じゃあ歩きながら説明すっから付いて来てくれ」
そう言って歩き出す漁師。
それに付いて行くコウスケとエルネ。
「仕事は簡単だ!水揚げされたモンを守りゃいいだけだ!聞いてるよな?」
振り返りもせず言う漁師。
「はい。あの~それで、参考までにどんな魔物が来るんですか?」
作戦でも立てて置こうと思ったのかエルネが聞くと
「あん?魔物?んなもん滅多に来ねぇよ?オメェらの敵はアレだッ!」
そう言って進行方向を顎で示す。
その先に目をやる二人。
そこには、建物の屋根にビッシリと止まる鳥、その下には地面に寝そべり毛繕いをする大量の猫。
それを見たエルネは
「・・・敵ってあの鳥と猫ですか?」
思わずそう聞いた。
「あぁ。アイツ等水揚げを待ってんだ!そりゃ一匹や二匹ならいいさ!俺達も可愛がってやるって物だ。でも見ろ、あの数を。一々あんなのにやってたら、かぁちゃんの為に稼いでんのか、アイツ等の為に稼いでんのか分かりゃしねぇよ!」
漁師達にとっては十分に敵と言える存在の様だ。
「じゃ、頼むな!」と一言残し去って行く漁師。
魔物を倒しに来たつもりのエルネはどこか納得の行かない顔をしていた。
後ろにいたコウスケは終始半笑いだったが。
去って行った漁師を見送ったエルネは、続いて鳥、そして猫と目をやり、一つ息を吐くとクルリと振り返る。
コウスケは口元の緩みを瞬時に消すと、振り向いたエルネを迎え撃った。
「・・・魔物退治じゃ無いみたい」
「そうみたいだな?」
「鳥と猫を追い払うだけなんて・・・」
エルネは想像と違う依頼内容にガッカリした様だ。
「ま、まぁ楽な依頼じゃねぇか?近付いて来たら一番弱い魔法でも打ち込めば、ビビって逃げてくだろ?簡単、簡単。座ってても出来るぜ?」
エルネのやる気を盛り上げようと、そう言うコウスケ。
「体を動かせると思ったのにっ!」
「いやいやっ、目的は金を稼ぐ事だろっ!」
「アッ!そうだった、勝負してたんだった」
「・・・フツー忘れるか?」
そんな軽口を叩きながら、船が来るまで時間を潰す二人。
真っ先に気付いたのは、コウスケ達でも漁師達でも無かった。
待機モードだった動物達が、まるで準備運動でもするかの様に動きだし、同時に鳴き始める。
その異様な光景に
「え?なに?なにコレっ?」
エルネは普通に怯えた。
「おうっ!オメェら!出番だぞっ!」
説明をしてくれた漁師が遠くから大声で二人に呼び掛ける。
同時に海を指差していた。
その先を見ると、点のように海上に船が見えていた。
「おっ!出番だってよ?エルネ」
「やっぱり手伝ってくれないのね?」
「手伝っていいの?半分だよ?」
「・・・コウスケは手を出さないでっ!私が一人でやるわっ!」
そう言って駆け出すエルネ。
(何そのイベント戦みたいなセリフ)
そう思いながらも
「へいへい」
エルネの背中にそう返すコウスケだった。
この日、魔物も現れなければ、盗賊も現れなかった。
漁師の説明通り敵は鳥と猫のみだった。
そんな依頼でも、エルネは腐る事無く鉄壁の守りを見せ、初回の混乱に乗じて魚にありついた数匹の猫を除き被害は軽微に抑えた。
最初の水揚げは、エルネの不馴れと敵の多さに守りを抜かれたのだ。
しかし、エルネの鉄壁さに次第に心を折られた動物達は、徐々に数を減らした。
一応言っておくが殺した訳では無い。
諦めて帰って行ったのだ。
それもその筈。コツを掴んだエルネの守りは正に鉄壁だった。
鳥には風魔法で飛べない様に、猫には水魔法で牽制。
後半になると、動き出そうとする気配を察知してそれを妨げる様に狙い撃ちしていた。
最早それは守りなのか、攻めなのかと言う程に。
エルネ自身は射的の様に楽しんでいたが。
漁師達には大変喜ばれた。
依頼書に依頼達成のサインを貰った二人は、日が傾く中街へと歩く。
「ハァ~、癒されたな?」
コウスケが染々と言う。
「癒されたのはコウスケだけでしょ!私は大変だったんだからっ!」
エルネが越えられない壁になっている間、コウスケは何をしていたかと言うと
「いや~、エルネから逃げてきた猫がこっちに来るわ、来るわ。あのモフモフは堪らんね」
猫まみれになっていた。
エルネに心を折られた猫の一部は、その時偶々食事を摂っていたコウスケに殺到したのだ。
動物好きのコウスケ、特技が餌付けと言う事もあり躊躇無く食べ物を与えた。
勿論猫が食べても大丈夫な物をだ。
結果、猫まみれになった訳だ。
「今日だけ餌をあげるなんて逆に可哀想よ!それに漁師の人達だって困るじゃないっ!」
エルネが正論を言った・・・エルネが正論を言った。
「大丈夫だろ?明日は鉄壁が居ないだろうしな。其なりにメシにありつけるって」
「漁師の人達の事はどうでもいいのね?・・・鉄壁って?」
コウスケの動物好きに呆れながらそう言った後、鉄壁と言う言葉に首を捻るエルネ。
「・・・そんな事より俺の方もあるんだ。チャッチャと報酬貰いに行くぞ!」
そう言って歩く速度を早めるコウスケ。
「ちょっと待ってよっ!ねぇ?鉄壁って?鉄壁って何?」
コウスケに追い付いたエルネは、その横にピッタリと張り付き執拗に聞いた。
エルネに真実を話し、その結果、コウスケの首がどちらかに固定されない事を願うばかりである。




