表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/230

分け前

ある日の昼。


昼食を食べ終わり、食後のお茶を飲みながら話している時だった。


「そうよねっ!お金は大事よね・・・そう言えばコウスケ?」


何の話をしていたかは知らないが、あのエルネがお金の大切さを語った後、思い出した様にコウスケに話を振った。


「あっ?何だよ?」


「ご褒美っていくらで売れたの?聞いて無かったわよねっ?」


スキルの宝玉がいくらで売れたのか知りたいらしい。


言われてみれば、それを知っているのはコウスケだけだ。


ロイドはお金に興味を示さない、エルネは忘れていた、コウスケは知ってはいるが誰からも聞かれなかった。


自然と話題に挙がらなかったと言う訳だ。


「アレ?言ってなかったっけ?」


「聞いてないわよっ!で?いくらだったの?凄く珍しい物だったんでしょ?いくらになったのっ?」


圧がすごい。


「え~と・・・15億・・・くらいだったかな?」


「じゅっ!凄いじゃないっ!・・・え?って事は三人で分けてもひとり5億・・・借金が返せるっ!!」


そう言って、よしっと拳を握るエルネ。


「借金の事を覚えてたのは褒めてやりたいが、どうして三人で分けるなんて話になるんだ?」


「えっ?分けないの?だって・・・じゃあ何に使うの?」


大金が手に入るとぬか喜びしたエルネだったが、その夢は一瞬で潰える。


そして、その決定に異議を唱えようと口を開くが、もしかすると既に使い道が決まっているのかと、更に言えばそれが三人の旅にとって必要不可欠な出費なのかも、と考えその使い道を聞く事にした。


「使い道?ん~・・・そうだな。4分の1は俺とロイドの研究費だろ?そんで4分の1は旅に必要な諸々だな。後の半分はエルネの食費だなっ!」


しばらく考えたコウスケは、内訳をそう説明した。


「要するに決まって無いって事でしょっ!大体何で私の食費が別で、しかも半分も必要なのよっ!!」


「またまたぁ~。エルネさん、迷惑な位食うじゃないッスかぁ~」


中々に辛辣な事を冗談めかして言うコウスケ。


「ッ!そんなに食べないわよッ!決まって無いなら分けてもいいんじゃない?」


「そうか・・・エルネは金の方が良かったのか」


「・・・の方?」


「そうだよな。そっちの方がいいヤツもいるよな。そうだよ」


何やら自分の中で納得し始めるコウスケ。それはエルネを無視してどんどんと進んで行く。


「これはロイドにも聞いとかなきゃだな!・・・なぁ、ロイド!」


「どうした、コウスケ君?」


コウスケの呼び掛けに、二人の話を聞いていなかったのか、読んでいた本から顔を上げコウスケを見るロイド。


「いや、今エルネとダンジョンの分け前の話してたんだけど、エルネは金の方がいいって言うから、それもそうか!って。んで、ロイドもそっちの方がいいのかな?って。どうだ?」


コウスケのその説明にロイドは考える事無く


「いや。私は今のままでいい。今の状況で特段、金に困る事は無いからな」


そう言った。


「そっか。じゃあ金はエルネだな!」


そう言ってエルネに向き直るコウスケ。


「えっ!いいのっ?」


「そっちの方がいいんだろ?ほら、財布出せっ!」


「うんっ!」


コウスケの言葉に嬉しそうに愛用の財布を出すエルネ。


エルネが自分で選んだ少し可愛らしい財布だ。必要は無いと思っていたが、当然コウスケの改造済みだ。


そんな財布を受け取ったコウスケは、そこに5億ギルを入れる。


その光景を見ていたエルネは、頬が緩みっぱなしだ。


「あっ!エルネ、アレ持ってるか?宝玉」


エルネの財布を片手にコウスケが言う。


「え?うん。まだ使って無いから持ってるけど?」


そう返したエルネにコウスケは空いている手を出す。


不審に思いながらも自分の鞄から宝玉を取り出し、コウスケに渡すエルネ。


「おう。じゃあコレ」


まるで交換する様に財布を渡すコウスケ。


財布をエルネに渡したコウスケは、そのままエルネの宝玉を鞄に仕舞おうとする。


「ちょっとっ!!何で仕舞うのよっ?」


これには思わず声を上げるエルネ。


「?・・・何だ?やっぱりコッチの方がいいのか?」


「??・・・よく分かんないけど返してよ」


その言葉に、コウスケは「なんだよ、面倒臭ぇな」と言った様子で、宝玉をエルネの手に返す。


そして、仕舞われずに横に置いたままだったエルネの財布を手に取るコウスケ。


「・・・何してんのよ?」


「えっ?」


「えっ?」


「・・・えっ?」


そうしてしばらく固まる二人。


お互いに今の状況を理解しようと考える。


「君達は何をしてるんだ?」


成り行きを眺めていたロイドが二人にそう問いかける。


「コウスケが変な事するんだもんっ!」


「おかしいのはエルネだろッ?」


そんな二人の様子に、ロイドはため息をひとつ吐いて


「まったく・・・コウスケ君はもっと確り説明をするべきだ。エルネ君は受け取った物を確りと把握しておくべきだ。」


と注意する。流石は年長者といったところか?


更に続けて


「ダンジョン攻略の分け前は、其々に渡された宝玉。これを確認すれば済む話だろう?」


事も無げにそう言ったロイド。


それを聞いた二人は


「「あぁ」」


同時にお互いのすれ違いを理解したようだ。


モヤモヤが晴れてスッキリとした表情の二人。


しかし、ここで


「・・・えっ?じゃあお金か宝玉か、どっちかなのっ!?」


エルネがそう声を上げた。


一体エルネは何をもってスッキリした表情をしていたのだろう。


「当たり前だろ?・・・あっ!何なら5億で宝玉売ってやるぞ?エドには15億で売ったんだ。激安だぞ?」


「ホントッ!・・・ってそれじゃ意味無いじゃないっ!」


エルネもそこまでバカでは無いようだ。


しばらく、借金返済と新たなスキルを天秤に掛け、ウンウンと悩んでいたエルネだったが、答えが出たようでコウスケに近寄る。


どちらにするか決まるまで、一時両方をコウスケに預けていたのだ。


「おっ!決まったのか?」


「えぇ、宝玉にするわ!」


「そうか・・・ようやく返してくれるのか」


そう言って財布を差し出すコウスケ。


「・・・」


黙ってそれを受けとるエルネ。


ツッコんで来ると予想していたコウスケは少し戸惑う。


しかし、借金を返してくれるなら、と思い直しエルネの言葉を待つ。


対するエルネは受け取った財布を開くと中身を出し始める。


出てくる金を数えていたコウスケだったが、借金の金額を越えても止まらない事に困惑する。


少しして財布に入っていた5億を出し終えたエルネは


「5億で売ってくれるのよね?宝玉」


そう言い放った。


「いや、エルネさん?借金返済のチャンスですよ?」


「ほ・う・ぎょ・くッ!」


「・・・毎度あり」


圧力に負け、宝玉を渡すコウスケ。


そんなコウスケが、エルネには残念そうに写った。


「そんなに早く返してほしいの?・・・早く私と離れたいって事?」


どうもエルネは借金を返し終えると、コウスケとの旅も終わり、と思っている節がある。


それを感じ取ったのかどうかは分からないが


「何でそんな話になんだよ?別に借金が無くなっても、エルネが世界を見て回るんなら俺と目的は一緒だろ?一緒に回りゃいいじゃねぇか。皆で見て回った方が楽しいだろ?嫌だってんなら別だけど・・・」


そう言った。


自分の言った事に少し照れたのか、目線は下に外していたが。


「・・・うんっ」


エルネは一言そう言って頷くだけだった。



こうして、一悶着あったため長くなってしまった昼食時間は終わり、片付けを手早く済ませると出発の準備が整う。


いつもよりも遅い出発の午後。


コウスケとロイドは普段と変わらないが、手綱を握るエルネだけは少し嬉しそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ