お金を稼ごう
問題が解決し、依頼のための準備を考える。
(足りなくは無いが、困らない様に少し稼いで起きたいな)
お金の話である。今所持金は1万ちょっとである。今後、お金の事を書かなオホンッ‼・・・考えなくてもいいくらい稼いで置きたい。
冒険者ギルドでは、まだ稼げない。そもそもコウスケにとっては手に入りにくい素材を入手する目的の冒険者ギルドである。
必然的に、商業ギルドで稼ぐ事になる。あてはあった。
(やっぱり簡単に作れる物を、安く売るのがでかく稼げるよな。)
宿屋から出て、外を歩く。
歩きながら何か簡単に作れる物を考えていると、道端の石に目が行った。
(・・・石か?石が売れたらいいのに・・・あっ、付与すれば・・・ダメか?付与魔法使えるのはバレたくないな・・・魔方陣なら?・・・イケるな。物に魔方陣を刻めば、魔道具だ!それなら・・・大丈夫だよな?)
この判断は正しい。付与魔法をかけた物をギルドに持ち込んでいれば大騒ぎになっていただろう。
商業ギルドに登録している者なら、魔道具を作れるくらいは不思議ではない。
この日、街を歩きながら石を集め続けた。少し街がきれいになった。明日は一日を魔道具作りに当てるつもりである。
~~
次の日、部屋の中には沢山の石が並んでいた。
(どれにしようか?・・・これが無難かな?)
ひとつの石を手に取る。この石は一番弱い火魔法の魔方陣を刻み、威力を抑える代わりに使用魔力を小さくした物だ。
魔方陣のいい所は、このような調整ができるところである。
出来たのは、魔力を通すと暖かくなる石。カイロである。
(試してみるか?)
魔力を流す。
(・・・おっ?暖かい。使えるな)
しばらく使ってみて、熱くなり過ぎない事を確認して商業ギルドに向かった。
~~
「・・・これは何です?」
やる気の無いおねえさんだ。
「カイロです。暖かくなるんです」
「カイロ・・・ですか?」
反応はイマイチだ。
「・・・ダメですか?結構手が込んでるですよ!調整した魔方陣に、その魔方陣が消えないように表面を魔法薬で保護してるんですよ!ねっ手が込んでるでしょ?」
「・・・じゃあ上の人に見せてみます。買い取れるかはその人に判断してもらう、ということで」
「ありがとうございます」
おねえさんは石を持って奥に引っ込んだ。
しばらくして慌てて戻ってきた。
「どうでした?」
思わず立ち上がり聞いた。
「買い取らせて頂きます!この独創的な魔方陣と、表面を保護している魔法薬を」
「・・・??カイロは?」
「石ころは要りません。魔方陣と魔法薬だけでいいです。」
「・・・石ころ・・・」
「そのふたつはスゴい!魔方陣は独創的で新しい、今後の応用範囲が計り知れない。魔法薬の方は今までに無い、全く新しい発想です。魔方陣はそのものを、魔法薬はレシピを買い取らせて下さい」
(この魔法薬、確か付与魔法使ったな。バレない様にしないと)
「・・・わかりました。ただ魔法薬の方はレシピはわかりますが、オレは作れませんよ。貰い物だったので」
この魔法薬は試作段階で刻んだ魔方陣が欠け、使えなくなる事があったので対策として軽い気持ちで作った物である。
材料も〈ウォータースライムの体液〉という使い道が分からず。しかし、大量に取れると困っていた素材だ。その辺の、素材を扱っている店では文字道理〈売るほどある〉のだ。
付与魔法も比較的簡単だと言われている、無属性魔法初級【強化】の付与なのでオレが作らなくてもギルドで量産は可能だろう。
「それで構いません。ではこのくらいでいかがでしょう?」
提示された金額に思わず
「・・・」
固まってしまった。普段見ない桁数である。
「・・・こんなに?」
なんとか絞り出した。
「当然です。魔方陣の新たな可能性と、その普及に必ず役立つと確信できる魔法薬のセットなのですから」
紙に改めて魔方陣を書き、その下に魔法薬のレシピを書いて渡した。
しっかりと確めたおねえさんは
「・・・魔法薬も作れそうで安心しました。それではこちらを」
と言って、ドンッッ、と大きな麻袋をこちらに置いた。
「ありがとうございます」
麻袋を背中の魔法鞄に入れ、ギルドを出た。おねえさんは驚いていたが、堂々としたこちらの態度に勝手に何か納得したようだった。
「・・・3億ギル・・・」
外に出て、そう呟いた。




