説明と報告
『エルネ、終わったよ。今どこだ?』
エルネ達と合流しようと念話を飛ばすコウスケ。
返事はすぐに返って来た。
『わっ!あっ、コウスケ?今は商店区の中心のベンチよっ!・・・念話って食べながらでも話せるのね?』
コウスケからの突然の念話に驚くも、すぐに返事出来るあたり慣れだろうか?
『また食ってんのか?まさか渡した金、全部食ってねぇだろうな?』
『そんな事するわけ無いでしょ!半分だけよっ!』
てっきり渡した分はすでに無いと思っていたコウスケは内心驚く。
『・・・まぁ好きに使えばいいけど。ロイドは?一緒か?』
『一緒では無いけど・・・あっ!いたっ!見える所で並んでるわ!』
『二人して何やってんだよ・・・まぁいい。合流するぞ?』
『ハーイっ!そう言えば何の話だったの?』
『合流してから話すよ。どこで合流する?宿か?』
『えっ?う~ん、ちょっと今動けないかなぁ?コウスケがこっち来てよっ!』
大方食べている途中、最悪食べながら念話していた可能性もある。
ロイドも何かに並んでいる様なので仕方無くエルネ達の元へ向かうコウスケ。
願わくば食べ物に並んでいない事を願うばかりだ。
「あっ!コ~スケ~っ!こっち、こっちっ!」
コウスケの姿を見つけ、大きく手を振りながら叫ぶエルネ。
しかし、ベンチからは一切動こうとはしない。
あくまでも、こっちに来い!という姿勢だ。
そんなエルネに、僅かにこめかみをヒクつかせながらも歩み寄るコウスケ。
そして、隣に腰を下ろす。
「どうしたの?疲れてるね?そんなに大変な話だったの?」
腰を下ろすや否やため息を吐いたコウスケを見て、エルネがそう聞いた。
「ハァ・・・そうなんだ。実は旅の同行者に厄介なヤツが居てな」
「えっ?新しく誰か加わるのっ?」
「あぁ、エルネって名前の大食らいのエルフなんだが・・・」
「ッ!ちょっとっ!何よそれっ!私大食らいじゃないわよっ!!」
大食らいと言われ、違うと反論するエルネ。
それに対しコウスケは、エルネの向こう側に綺麗に積まれた皿に目をやる。
その視線の意味に気付いたエルネは
「ちょ!これは・・・この位普通よっ!誰だってこの位は食べるわよっ!」
そう開き直った。
しかし、どう見ても多い。
男であるコウスケでも一度に食べられる量では無い。
「・・・まぁ冗談はここまでにして、ロイドはどこだ?」
「・・・えっ?あぁ、ロイド?あそこよ!」
自分の食べた形跡を魔法鞄に流し込む、という方法で綺麗に消し去ったエルネは、ロイドを指差してそう言った。
それを見ていたコウスケは
(オイオイ、なんちゅう方法で・・・今度魔法鞄の整理させないと・・・)
思わず二度見してそう思ってしまうコウスケだったが、ここは口には出さず素直にエルネの指差した方を見る。
そこには、残念な事に食べ物の屋台に並ぶロイドの姿があった。
(・・・・・・)
内心まで無言になるコウスケ。
コウスケは遂に明鏡止水の境地に至った。
ロイドも戻り、ようやく揃った三人。
「あぁ、コウスケ君。戻っていたのか?」
湯気を上げる皿を片手にロイドが言う。
「あぁ」
「どうした、コウスケ君?疲れているな?それほど難しい話だったのか?」
「・・・実は旅の同行者に頭が良いのか、バカなのか分からないヤツがいてな」
「フム、天才とは時にバカに見えるものだ。おそらくその者は天才なのだろう」
お前だ、と言ってバカにしてやろうと思っていたコウスケだったが、ここでそう言うとロイドが天才と言う事になってしまう。
思惑が外れたコウスケは
「・・・俺が残ってしてきた話をしますッ!!」
急な話題転換に出た。
「何だ、私を天才と呼んでくれてもいいんだぞ?」
どうやらロイドは気付いていた様で、コウスケを茶化す。
それを無視して、エド、シャズ、コウスケで話した内容を説明し始めた。
一通り説明し終えて、タバコを取り出すコウスケ。
「フゥゥ~~・・・まぁ、そういう事になっちゃった」
煙を吐き出した後、そうおどけて締め括ったコウスケ。
「エェ~!ご褒美売っちゃたのっ?誰が使うか相談するって言ったのにっ!」
最後まで黙って聞いていてエルネだったが、我慢できずにコウスケに詰め寄る。
「仕方無いだろ?貴族のゴタゴタに巻き込まれる可能性も出てくんだぞっ?エルネも覚えてんだろ?あの絡んできた貴族。あんなのと付き合ってられるか?」
「そうだけどぉ・・・」
何か欲しいスキルでもあったのか、エルネは渋っていた。
「私もエルネ君も、コウスケ君に同行させてもらっている身だ。多くは言えんよ。まぁ、スキルの宝玉だったか?あれは研究のし甲斐がありそうだったがな」
エルネを諌めつつも、ロイドも残念そうだ。
「確かに・・・でもロイド。俺がそんな面白そうな物を手放すと思うか?」
そのロイドへ向けた言葉には、エルネが反応した。
「えっ?売ったんじゃないの?あるのっ?」
食い付く様にコウスケに迫るエルネ。
「するとコウスケ君は領主に偽物を売ったのか?」
「まさか。そんな度胸はねぇよ」
エルネを片手で離しながらコウスケが言った。
空いている手をボックスに突っ込むと、何かを握り締め引き抜く。
そして、二人が見れる位置で手を開く。
そこには、スキルの宝玉があった。
「・・・本物か?」
ロイドだ。
「勿論!ちゃんと使える」
「じゃあ、やっぱり領主様には・・・」
「いや、あっちも本物だ」
「??・・・どういう事っ?」
分からない、とエルネ。
「こういう事だ」
そう言ってコウスケは宝玉を握り締めた。
サッとマントの中に隠すと隙間から光が漏れる。
再び出した手を開くと、親指から薬指の間に三つの宝玉が挟まっていた。
「増えたっ!」
「ほぅ・・・手品の類いか?」
「手品じゃねぇよっ!最近使って無かったからな」
[創造の産物]を使って増やしたのだ。
「あっ!分かったっ!コウスケの便利機能ねっ?あれを使ったんでしょ?」
エルネがそう声を上げた。
「機能じゃねぇ!能力だっ!」
不本意だとコウスケが訂正を求める。
「何にせよ、貴重な物が手元に残るのは良い事だ」
ロイドは研究ができて嬉しいだけだろう。
こうしてコウスケはまんまとエドを出し抜いた。
友達になったので悪いな、とも思ったが、脅しもされたのでそれでチャラだ。と自分に言い聞かせた。
この事を知っているのは、ここにいる三人しかいないのだから。
こうして、コウスケ達は失う物無くこの街を発つ準備を始めるのだった。




