初日終了
「信じられない・・・君達はEランクだと・・・」
一人で三匹の魔物を倒してしまったコウスケもそうだが、二人の怪我を瞬時に治してしまったエルネも、Eランク程度の実力では無いと感じたカートがそう漏らす。
丁度そこへ、軽い運動でもしてきた。という風なコウスケが戻って来て
「いや、正真正銘俺達はEランクだよ」
ドッゴーン
「そんなバカなッ!ここはBランク冒険者でも一人じゃ梃子摺ると言われているグランドリザードが出る10層ですよッ?そのグランドリザードを一人で三匹も相手に出来るEランクなんてッ・・・」
いないと言い掛けて実際に目の当たりにした事を思い出すカート。
一方、コウスケは
(あのトカゲワニ、グランドリザードって名前なのか?じゃあワニトカゲの方が正しいのか?)
等とどうでもいい事を考える。
「それにこちらのお嬢さんだって、こんなに凄い回復スキル見た事無いですよッ!君達は一体・・・」
誉められたと感じたエルネは無い胸を張っている。
「面白そうだったから攻略に来ただけの者だよ。それよりもこれからどうするんだ?そっちのは気絶したままだけど」
そう言って背負われていた方の(今は地面に寝かされている)男を見るコウスケ。
「面白そうって・・・僕達は地上に戻ります。三人も失ってはもう進む事は出来ませんから・・・」
やはり足りない三人はやられてしまった様だ。
ドッゴーン ア~ハッハッハッ
「そうか。でも一人担いで戻るのはキツく無いか?地上まで送ってやろうか?」
乗り掛かった船だとコウスケがそう提案する。
「いえ、この層の入り口まででいいですよ。そこからは、石碑で戻ります」
「・・・石碑って・・・何?」
「??ご存じ無いんですか?各層の入り口にある石碑の事ですよ!アレを使えば帰りは地上まで一気に、行きも一度行った事のある層なら自由に行けます!私達の様な魔物素材目当ての者は帰りしか使いませんが」
ゲーム等ではお馴染みのシステムなのでコウスケはすぐにピンと来たが、問題は知らなかった事だろう。
「もしかしてそれって、一度でも触って無いと使え無い的な?」
「なんだ、知ってるじゃないですか?そうです。だから初めての層に降りた時は入り口で石碑に触れるのが常識ですよ」
「そ、そうか・・・じゃあこの層の入り口まで送るよ」
(なんだよッ!アレ慰霊碑とかじゃねぇのかよッ!手ぇ合わせちまったじゃねぇかッ!)
「はいッ!助かります」
道端の石碑に手を合わせるとは何とも日本人らしい行動だが、流石に触れるという発想は出てこないだろう。
「じゃあ行こうか?エルネも、行くぞッ!」
「ハ~イっ!」
そう声を掛け、コウスケとエルネ、カートとそのカートに背負われた男、この四人が入り口の方へと足を向けた。
ドッゴーン
「あの、ずっと気になっていたんですが・・・彼は何を?」
そう言って、先程からちょくちょく大魔法を放っているロイドを見る。
「あぁ、あれは後ろから近寄って来る魔物を倒してくれてるん・・・だと思う?」
コウスケが確信を持てないのは魔法の衝撃音の後に、高笑いの様な笑い声が聞こえてくるからだ。
辺りは既に焼け野原になっている。
ロイドに一旦戻る旨を伝えようとコウスケが話しかけた。
「ロイドッ!一旦戻るぞ?」
しかし、その声は
ドッゴーン
新たに放たれた魔法の衝撃音に掻き消された。
「ハッハッハッハッ!雑魚がワラワラと。私を倒したくばドラゴンでも連れてくるのだなッ!」
愉快だと言わんばかりに笑うロイド。
それを聞いていたコウスケ達は背筋が冷たくなるのを感じていた。
「だ、大丈夫なんですか?あの人!何か危ない物を感じるのですが・・・」
カートは心なしか怯えている。
「・・・魔王はいないと聞いていたんだけどな?」
コウスケにはロイドが魔王に見えているらしい。
ここで行動を起こしたのは、良くも悪くも空気を読まないエルネだった。
エルネはロイドに駆け寄ると
「ロイドッ!一旦戻るってッ!遊んで無いで行くよっ」
「んっ?あぁ、エルネ君か?すまない、少し夢中になっていた様だ」
そう言ってロイドがいろんな意味で戻って来た。
「じ、じゃあ行くか?俺達も地上まで戻って休もうと思う。どうだ?」
話を聞いていたエルネは頷くが、聞いていなかったロイドは
「またここまで降りて来るのは効率的では無い。その辺で夜営を張った方がいいのでは無いか?」
これに対してエルネがロイドに説明する。
「何かねぇ、一瞬で階層を移動できる石があるんだってっ!」
とてもザックリとだった。
「ほぅ、それは興味深いな。是非見たい!急ごう!」
ロイドには十分だった様だ。
こうして、傷付いたパーティを助け、ロイドの魔王様的な一面を見た、ダンジョン攻略一日目は終わりを迎えた。
「ロイド、どうだ?何か分かったか?」
「いや、付与魔法でも無い様だ。何か特別な素材なのか?・・・コウスケ君はどう思う?」
「・・・わっかんねぇな。魔方陣も見当たらないし・・・どうなってんだ?」
「ここはひとつ、標本として持ち帰る事を提案する!」
「う~ん・・・悩むトコだな?」
「ダメに決まってるじゃないッ!!他の人が困るでしょ!カート達はもう帰っちゃったよ?私達も早く帰ろうよッ!」
10層入り口に着いてすぐ、カートはもう一人を担いで地上へと帰った。
エルネもすぐに帰れると思っていたが、石碑に魔法バカ二人が食い付いてしまい、しばらくの間調査、観察、考察が続いた。
しかし、持って帰ろうとしたところでエルネに止められ、渋々帰ったとか・・・




