攻略開始
「次どうぞぉ~!パーティ単位でお願いします!」
ようやく受け付けまで辿り着いたコウスケ達に声が掛かる。
三人はそれぞれギルドカードを出した。
「え~と・・・Eランク冒険者二名に、商業ギルド所属の魔法学者って・・・観光ですか?」
「いえ、攻略ですッ!」
「あ~ハイハイ。英雄志望の方達ですね?一層づつゆっくり降りて、無理だと思ったらすぐ引き返してくださいね?死なれたら困るので」
「分かりました」
そう言って中に入るコウスケ。
それに続くロイド。
納得が行かない様な顔のエルネ。
中に入るとすぐに下へと続く階段があった。
少しの躊躇も無く降りていくコウスケ。
その先に広がっていたのは
「おぉ~、スゲぇ!!地下なのに空があるっ!」
どこまでも続いていそうな空と草原だった。
おまけに風まで吹いている。
ここで目を覚ませば外だと疑わないだろう。
「ちょっと!一人で先にってうわッ!何コレ?スゴッ!!」
コウスケを咎めようと口を開いたエルネだったが、目に飛び込んできた光景に驚く。
ロイドは既に観察に入っていた。
「あぁ、スゴいなッ!遺跡タイプを想像してたけど、こっちだったか!」
エルネの驚きに、何やら興奮した様子で答えるコウスケ。
「ってそんな事より、入り口であんな言われ方したのに何で言い返さないのよッ!」
どうやら受付の人に、観光扱いされたのが気に障った様だ。
さらに、コウスケが言い返さなかった事もだ。
「普通に考えたらEランク二人に学者一人なんて、そう思われても仕方無いだろ?あそこでモタつくより、早く入りたかったんだよ」
「それはそうだけど・・・でも、あんな言い方って」
「聞けば、Dランクに上がるのは簡単だって話じゃん?Eランクのままって事は登録してから冒険者として活動して無いか、登録してすぐだって見られるんだってよ。なら、仕方無いんじゃね?」
冒険者登録をしてEランクのままでいる者は珍しい。
肩書きが欲しくて登録した者か、本当に実力が無い者ぐらいだろう。
Eランクが軽く見られるのは仕方が無い事である。
ましてや、そこに非戦闘員と思われる学者も付いているとなれば尚更だ。
「私はただ・・・悔しくて・・・」
「まぁ、俺達がダンジョンマスターをブッ倒して出てくればそんな事も言われないさ」
「・・・そうだねっ!」
エルネが気持ちを切り替えた時だった
「誰がダンジョンマスターを倒すって?」
後ろから冒険者らしき五人組が降りてきてそう言った。
入り口でモタついてたコウスケ達に追い付いてしまったのだろう。
「お前達みたいな駆け出しは、この層も抜けられんねぇよ!」
「グルっと見て回ったら、死なねぇ内に帰るこったな!」
「ダンジョンマスター倒すとか笑わしてくれるぜッ!」
口々にそう言って横を通り過ぎて行く。
今にも飛び掛かりそうなエルネを捕まえて、見送る。
そこへ最後の一人が通る。
「口が悪くてすみません。でも、本当に危ないと感じたら戻って下さいね?」
この人は、唯一いい人の様だ。
「ハイっ!自分達が駆け出しだという事は自覚してますから」
捕まえたエルネの口を塞ぎながらコウスケが答える。
「僕達でさえ五人もいて、7層までしか潜れて無いんです。手強いですよここは」
「そうなんですか?」
そこまで話したところで
「オイッ!カートッ!置いてくぞッ!!」
「あっ!うんっ!・・・それじゃあ気を付けて」
カートと呼ばれた男はそう言って軽く会釈した後、走っていった。
それを見送ったコウスケは、ようやくエルネを離した。
「プハッ!ちょっと、何すんのよ?あんな奴等私が黙らせてやったのにっ!」
「まぁまぁ、俺達のペースで行こうぜ?さっ、ロイドもいくぞっ!」
「あぁ。」
一悶着あった間ずっと、毟った草が瞬時に元通りになる現象が興味深かったのか、それを繰り返していたロイドが、すっくと立ち上がり歩き出したコウスケに付いていった。
「・・・もうっ!!」
エルネもおいて行かれない様に走り出した。
~~
「・・・何よこれッ!?全然つまんないっ」
しばらく歩いた三人。
先頭はエルネで、出てきた魔物を一人で倒していた。
しかし、今の所出会った魔物は一角兎のみ。
馬車で街道を旅している時の方がまだ、強い魔物が出ていた。
エルネが飽きてしまうのも仕方が無い。
「う~ん。各階層で出る魔物は一種類だけなのかもな?ロイド、どう思う?」
「その可能性もあるな。あとは降りる度に一種類づつ増えていくと言う可能性もある」
「・・・それはそれで面白そうだな」
「どうでもいいわよッ!兎以外を狩りたいのッ!」
エルネが荒れてきたので早く下に降りたいコウスケだったが、肝心の下への階段が見つからない。
「そんな事言っても階段が見つからないんじゃなぁ・・・」
「地面に直接階段が空いているのなら、この草原で見つけるのは骨が折れるか」
「こんな事なら、あの五人組を尾行すればよかったな?」
そうすればすぐに、階段に辿り着けたとコウスケが言った。
「それはダメッ!そんなの悔しいじゃないッ!」
エルネが反対する。じゃあ文句言うなよ、と思ったコウスケ。
「なら、地道に探すしか無いな」
結局はそうなるのだ。
「んっ?・・・あそこに何かあるようだが?」
その時、ロイドが何か見つけたと声をあげた。
三人はそれに近づいて行く。
どうやら先端に赤い布が結んである棒が、地面に刺してある様だ。
「・・・目印、とかか?」
そうコウスケが口にすれば、エルネが
「きっとそうよっ!」
そう言って駆け出した。
先に行ったエルネが、いち早く辿り着き振り返った。
「コウスケ~!あったッ!階段あったよッ!」
どうやら本当に階段の目印だった様だ。
「これで兎以外を狩れるのねっ!」
追い付いた二人にそう言ってはしゃぐエルネ。
「・・・ソウデスネ。じゃあ降りるぞ?」
ややエルネに呆れつつも、二人に確認するコウスケ。
「あぁ」
ロイドはそう短く返し
「次の層は何かなぁ?」
エルネはワクワクしている。
(あれっ?はしゃいでたのって俺じゃなかったっけ?)
等と、自分のポジションが奪われている事に気付くコウスケだったが、自分も楽しんでいる。と言い聞かせ階段を降りて行くのだった。




