ロイドの旅支度
釈放されたロイドを新たに加えた三人は、街中を歩いていた。
「これからどうする?すぐ出発?」
エルネが聞いた。
「いや。俺は少し冒険者ギルドに顔を出してくるよ」
そう言ったのは、コウスケだ。
「依頼でも受けるのか?」
「盗賊討伐の依頼を受けてここまで来た冒険者達に、一言謝っておこうと思ってさ」
「そんなの別にいいんじゃないっ?」
「こういう事はやっといて損は無いんだよッ!あっ、エルネもなっ!」
「えぇ~、私も?」
「と言う事は、私は別行動か?」
コウスケの言葉の先を読むロイドは、そう言った。
「あぁ、旅に必要な物は、何も無いだろう?俺達がギルドに行ってる間に買い揃えていてくれ。金はこれで足りるだろう?」
そう言って、旅支度には少し多目に渡した。
「十分だ。物価も昔とあまり変わっていない様だしな」
「それと、これを持っていてくれ」
そう言って、親指に嵌めていた指輪を渡すコウスケ。
「これは・・・魔道具だな。珍しいタイプだ・・・宝石の中に魔方陣・・・いや、魔石か?」
受け取った魔道具をいつまでも観察しているロイド。
放っておいたら、いつまでも終わらないと判断したコウスケは
「念話の魔道具だよ。何かあったらそれを使ってくれ。エルネに繋がるから」
そう教え、ロイドの考察を止めに掛かる。
「念話の魔道具?・・・当時、知り合いの魔方陣学者が長い研究の末、匙を投げたと記憶していたが・・・そうか、成功したのだな」
何やら昔を思い出している様子のロイド。
この世界で、他に念話の魔道具が存在しているかは分からないが、残念ながらソレはコウスケのオリジナルだ。
「大丈夫か?無駄遣いすんなよ?」
頻繁に、自分の世界に浸るロイドを見て、心配するコウスケ。
「私の頭脳を持ってすれば、無駄遣いなど不可能。心配は無用だよ」
そう言って歩いていくロイド。
そのまま、露店の串焼き屋に並んだ。
「私も~」と走り出そうとするエルネを捕まえ、見なかった事にして、逆方向に歩き出すコウスケであった。
冒険者ギルドに着いた二人は、早速イーナを見つけた。
「イーナさん、こんにちは!」
「・・・・・・?」
誰?と聞かないところを見ると、覚えてはいるが、名前が出てこない様だ。
「アレ?」
少し不安になるコウスケ。
「・・・・・・コウスケ」
「正解ッ!」
「どうしたの?」
「今日出発する事にしたので、その前に皆さんに謝っておこうと思って」
「・・・何を?」
「わざわざここまで盗賊を討伐しに来たのに、その仕事を取っちゃたみたいで・・・」
そこへ、今朝イーナの後から来た冒険者の男が近づいて来た。
「そんな事気にしてたのか?」
話を聞いていた様で、会話に入ってくる。
「あぁ、今朝はどうも」
「おう!確かに文句言ってるヤツもいたが、新しい依頼が出て、皆納得したみてぇだ」
「新しい依頼、ですか?」
「あぁ、今この街には兵士も憲兵も居ないだろ?だから討伐に来た俺達に、その仕事を代わりにやってくれ。って依頼が出たんだよ!勿論、首都や周りの街から兵士の補充が来るまでだけどな」
また迷惑を掛けたのか?と焦るコウスケ。
「もしかして、また迷惑掛けてます?」
「バカ言えッ!こういう依頼は、比較的安全で報酬も良い。中々ありつけない人気の依頼だぜ」
どうやら喜んでいるようで、ホッとするコウスケ。
「大体、そんな事気にするなんて、律儀なヤツだな?」
「ほらっ、言ったじゃないっ!必要無いって」
エルネが自慢気に言った。
「そっちの嬢ちゃんの方が冒険者向きだなッ!」
そう言って、ガハガハ笑う男。
「ご迷惑を掛けていたらどうしようかと思って。でも安心しました」
「いいんだよっ!なっ、イーナ?」
「別に。問題は。無い。」
どうやらコウスケが思っているほど、大した事は無かった様だ。
「それじゃあ俺達はこれで。イーナさんもお元気で」
「うん。また。」
別れを済ませ、ギルドを出た。
「やっぱり必要無かったじゃんっ」
執拗に言ってくるエルネは、何かイラッとしたので無視した。
エルネの念話で、ロイドと待ち合わせをして、いよいよ出発だ。
しかし、待ち合わせ場所にやって来たロイドは、恐ろしい姿だった。
「なんだ、すぐに出発するのでは無かったのか?仕方が無い、ここで待っていてやるから二人も早く荷物を持ってくるといい」
背中に大きな鞄を背負い、両脇にも荷物を抱えたロイドが言った。
(うわぁ、魔法鞄渡すの忘れてた・・・)
「ロイド、これくらいの鞄無いか?」
自分の魔法鞄を指差し、そう聞くコウスケ。
「あぁ、それならば買った記憶があるな。・・・たしかこの辺りに仕舞った様な・・・」
そう言って、荷物を漁りだした。そして
「これくらいでどうだ?」
と、鞄を取り出した。
それを受け取ったコウスケは、周りから見えない様に手早く魔法鞄にする。
「その荷物全部この中に入れてくれ」
「・・・何を言っている。入る訳が無いだろう?」
どうやらロイドは、魔法鞄を知らない様だ。
仕方なく、ロイドの荷物を仕舞うコウスケ。
それを見たロイドは
「・・・鞄の容量を増やす魔法か?魔方陣・・・では無さそうだな?んっ常に魔力を纏っている?・・・私の知らない魔法なのか?・・・そうかッ!魔法そのものを付与しているのかッ!面白い発想だ・・・そうだな、これは付与魔法と名付けようッ!」
「いや、既に付与魔法って名前付いてるから」
「ふむ、私と同じセンスの持ち主が発見者のようだな?」
ロイドの研究者気質には困ったものだが、物を見ただけでここまで辿り付けるのは凄いと思うコウスケ。
「出発するなら、早くしようよっ!」
どうやらエルネの忍耐が限界を迎えた様なので、取り敢えず出発する事にした三人。
城門を抜け、門番をする冒険者に挨拶をして少し歩く。
「・・・まさか歩いて世界を回るつもりなのか?」
ロイドが不安を口にする。
そろそろいいか?とコウスケが馬車をボックスから出し、エルネが慣れた手つきで馬車と馬を繋ぐ。
「それは知っているぞ。ボックスだな?そうかコウスケ君はボックス持ちなのか」
ボックスは昔からある様で、ロイドも知っていた。
「じゃあ、行こうか?」
そう言って、エルネは御者席へ、コウスケはその隣へ座る。いつもの場所だ。
「ロイドも早く乗ってくれ」
魔道具の馬を興味深げに観察しているロイドを、コウスケが急かす。
「どうやら私は当たりを引いた様だな。まだまだ面白い物を隠していそうだ。どうだ?」
そう言って、馬車の荷台に乗り込む。どうやらそこを指定席にする様だ。
「まぁ、追々な」
早速、タバコに火を付けたコウスケが答える。
「私のオススメはお風呂だよっ!」
手綱を握るエルネも答える。
「退屈する事は無さそうだ」
ニヤニヤを隠せないロイド。
三人での旅が始まった。




