宿を取ろう
「おっちゃん本当に助かったよ」
「ちゃんと返せよ!しっかし旅してんのに何で一ギルも持ってねえんだよ」
この世界の通過はギルと言うらしい。円と比べてどうなのか調べとかないとな。
「お金が尽きたから稼ごうと森に・・・」
「で、迷ったと?」
「ははは」
自分でもよく口が回ると驚いている。
「まぁ手ぶらなトコを見るとそれもうまく行かなかった見てぇだな!」
「いんや、手に入れた素材は全部ボックスに入ってっから」
「お前!ボックス持ちかッ!!」
(あれっ、マズった?)
後で知る事になるが、ボックスを持っている人はボックス持ちと言われ、商人からも冒険者からも、はたまた貴族からも引っ張りだこになるほど珍しく、有用なスキルだと広く認知されているらしい。
「・・・なんかマズイの?」
おっちゃんは顔を寄せて小声で話始めた。
「・・・知らねぇのか?フン・・・マズイこたぁねぇよ。ただ積極的に言いふらすのは進めねぇな」
「狙われるとか?」
「と言うより付き纏われたり、集まって来たり、だな」
「・・・気を付けるよ」
(面倒は御免だ。)
いろいろ気を付けようと心に決め、先ずは素材をお金に変えようと考えたところで問題に気付いた。
(ボックス持ちだってバレたらマズイなら、どうやってボックスから素材を出せば?)
素材を出すところを見られたらアウトである。そこで隣を歩くおっちゃんが目に入った。
(いい物見っけ!)
「おっちゃん商人だよね?」
「あぁ?それは最初に言ったぞ」
「素材とか買い取りしてねぇの?」
「・・・なるほど、物にも依るがやってるな」
「うさぎの角と毛皮なんだけど」
「それなら両方買い取れる」
「お願いします」
「んじゃあ着いて来い!」
おっちゃんに買い取ってもらう事になった。これでボックスから出しても問題は無い。
実際に取り出して見せると結局驚かれたが、それよりもおっちゃんは量に驚いていた。
「何だこの量は!?数日じゃなかったのか?それとも只の大食いか?」
なんかブツブツいっていたが無事買い取ってもらえた。占めて15000ギル。おっちゃんに借りた担保金1000ギルをその場で返し14000ギル。
宿に泊まるには1000ギルもあればソコソコの宿に、一食は50~100ギル位だと教えてもらった。
(大体、円の10分の1位で考えとけばいいのか?)
「おっちゃん、いろいろありがとう」
「おう!すぐ旅か?」
「ん~ギルドカード作って、少し稼いで、街を見て回ってから」
「そうか!これで最後かもしんねぇから元気でな!」
「街を出る時にまたあいさつに来るよ」
「律儀だな」
こうしておっちゃんの店を出た。
(あっ!ここまで良くしてもらって、オレおっちゃんの名前知らねぇ・・・)
等と考えていると不意に店の看板が目に入った。〈ハック商店〉
(おっちゃんハックって名前なのか?・・・まぁいいか。どうせ名前呼ばねぇし)
今は宿に向かっている。とりあえず宿は確保しておきたい。おっちゃんに教えてもらったソコソコの宿に向かっている。
(ここか?風見鶏亭?)
中に入り少し観察する。入り口を真っ直ぐで受付。その途中横に入ると食堂になっている。受付手前の階段を上がると部屋が並んでいるのだろう。
一通り見回して受付に向かった。
「一名様ですか?」
「はい、一人です」
「何泊のご予定ですか?」
「とりあえず3泊で、後から延長ってできます?」
「はい。大丈夫ですよ。お食事は食堂でいつでも食べられます、一食50ギルです」
「わかりました」
「それでは一泊900ギルで、三泊分2700ギルです」
お金を払い、鍵をもらい部屋に向かった。部屋は2階の一番手前。階段に近いので便利そうだ。
部屋に入り、ベッドに腰かけて考える。
(宿は確保したし、あとはギルドと街ブラか?ギルドどっちにしようか?)
ギルドには、冒険者ギルドと商業ギルドの二種類がある。冒険者ギルドはギルドに来た依頼を冒険者のランクに応じて仲介する他、素材も買い取ったりしている。
商業ギルドは生産職の人が登録し、作った物を買い取ってもらったり、依頼を受けて物を作ったりしている。
(オレならどっちもイケんだよなぁ・・・両方はダメなのか?冒険者で依頼を受けて、素材を入手、その素材で何か作って、商業ギルドで売る。効率いい気がするんだけどなぁ?)
考えた末、冒険者で有名になると面倒事が増えそうだが、素材が欲しいので魔物も狩りたい。だからと言って商業ギルドを捨てるのは勿体ない。
結果、両方登録してメインは生産で、欲しい素材の魔物の依頼を見つけた時だけ目立たないように冒険者をして、ランクは出来る限りあげない。世間的には
「オレは商業ギルドの登録者だ!!」
と言う顔をしておく事に決めた。
(なんにしても明日だ明日!今日はもう疲れた)
腰かけていたベッドにバフッっと横になり、久しぶりのマトモな寝床だぁ等と思いながら眠りについた。