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二人VS街

夜遅くまで作戦を詰めていた二人は、昼過ぎに起きてきた。


「ふぁ~・・・まだ少し眠いね?」


「決行は夜だから、眠いならまだ寝ててもいいぞ?」


眠そうなエルネを気遣うコウスケ。


「朝も食べなかったのに、お昼まで逃したら悔しいじゃないっ!」


エルネの食いしん坊っぷりが炸裂である。


(エルネさん。一体いくつキャラ重ねるんですか?)


そんな事を考えながら、昼食をエルネに出した。


「夜までコウスケはどうするの?」


昼食を頬張りながらエルネが聞いてきた。


「う~ん・・・何か作って暇でも潰そうかなぁ」


「コウスケはいいね、する事があって・・・私はどうしようかなぁ」


「狩りでもして来れば?ちょうど肉が少なくなって来たし」


「じゃあそうしようかな?」


「よしっ!決まりだな。あっ!俺達を探しに来るかも知れないから気を付けろよ?」


「はぁ~い」


予定が決まった二人は、各々やるべき事をやるべく、別れて行った。




日が傾いた頃、エルネが帰って来た。


「たっだいまぁ~」


ご機嫌なところを見ると、大猟だった様だ。


「遅かったな?大丈夫だったのか?」


「大丈夫よ?それどころか、見てっ!大猟だったわ」


そう言って、狩って来た獲物を見せた。


兎や、鳥、猪まである。


「おっ、猪まであるのか?じゃあ今夜の作戦が上手く行ったら、鍋にでもするかっ」


「美味しそうっ!これは頑張らないと」


これで上手く行けば、安いものである。


「じゃあそろそろ準備しとくか?」


「そうね」


「そうだ、エルネにはコレを使ってもらう」


そう言って、コウスケは大量の矢が入った矢筒を取り出した。


「これって・・・矢?いつものじゃダメなの?」


「魔力の矢は光ってエルネの存在がバレるだろ?初めは出来るだけ、俺一人だと思わせたいからな」


「わかったわ」


そう言って、魔法鞄に矢筒を仕舞う。


「作戦はちゃんと覚えてるだろうな?」


少し不安になったコウスケが聞く。


「アレだけしつこく確認されたら忘れないわよっ」


コウスケの心配性は昨夜も出た様だ。そして、今も


「本当だろうな?初めが肝心だからな?」


「大丈夫よ。コウスケが始めるまで隠れていればいいんでしょ?」


覚えていた様でホッとするコウスケ。


「じゃあ少し休んだら出発しよう」


二人は少し休んだ後、街へと馬車を進めた。




日付が変わる頃、二人は街の近く、作戦決行の位置についていた。


『エルネ、準備はいいか?』


コウスケの念話での最終確認に、エルネは


『えぇ、いつでもいいわよ』


そう答えた。それが、開始の合図になった。


コウスケはボックスから円形の盾を取り出し、構えた。


(使うつもりで作った訳じゃ無いんだけどなぁ)


そう考えながら、狙いを定める。


ガトリング・レールガンなどと大仰な名を付けられた、コウスケが初めて作った攻撃用魔道具である。


バリッ、・・・ドゴォーン


「おぉ~、やっぱり雷は夜に映えるなぁ」


攻撃されている事を認識してもらう為に、雷属性魔法の魔方陣を新たに追加していた。


コウスケの攻撃は見事、城壁の上にある物見に命中し破壊した。


その後、街全体から見える様に、空に向けて数発放つ。


(予想が当たればこれで・・・)



~~



お頭と呼ばれる人物がいる屋敷


ドゴォーン


「何だッ!今の音はッ?」


「お頭ッ!大変だッ!城壁の物見が攻撃を受けたみてぇだ!」


お頭と呼ばれる男の部屋に、兵士姿の男が飛び込んできて、そう言った。


「攻撃だと?首都に気付かれたのか。軍か?冒険者の討伐隊か?」


「いや、それが・・・どうも相手は一人みたいで・・・」


挙がって来た情報を、そのまま報告する兵士姿の男。


「一人だと?なら、今いる奴等全員連れて、さっさとブッ殺して来いッ!」


「ここはいいんですか?」


「相手は一人なんだろうがッ!何ビビってやがる。ここはいつも通りでいいッ!さっさと行けッ!!」


そう怒鳴られた男は、急いで城門に全兵士を集めた。


「いいか、オメェらッ!相手は一人だ。物見を破壊した事から多分、それなりの魔術師だ。数で囲んでフクロにしろッ!お頭の命令だッ!」


「「「「「オォォォッ!!」」」」」


野太い掛け声と共に城門が開かれ、兵士がワラワラと出て行った。



~~



しばらく待っていたコウスケは城門の向こうから聞こえる声に顔を上げた。


「漸くか・・・さて、全員か、中に残すか、どっちのタイプだ?」


ワラワラ出てくる兵士を見ながら、そう呟く。


そして、ここにいるぞ!と言わんばかりに更に数発、空に向けて放った。


それを見た兵士達は、コウスケに一直線に向かって来る。


「こりゃ全員出て来たな?こっちとしては有り難いけど」


そのまま、コウスケは兵士達が城門を出るまで待った。


全て出て来るまで待っていると、グルッと周りを囲まれていた。


しかし、コウスケの攻撃を見ているからか、周りを取り囲むだけで、不用意に攻撃は仕掛けて来なかった。


そんな中、一人の兵士が近づいて来る。


「こんな事をするのは何処のどいつかと思えば、テメェ昨日取っ捕まえた野郎じゃねぇかッ!仕返しにでも来たか?」


どうやら、昨日街の入り口でコウスケ達を捕まえた兵士らしい。コウスケは憶えていなかったが。


「一人に随分な人数だな?街の中は守らなくていいのか?兵士さん」


兵士では無い事は気付いているが、皮肉を込めて言った。


「この人数を前に、街の心配か?まさかここを抜けて街に辿り着けるとでも思ってるのか?」


「勿論そのつもりさ。なんたって「俺達」の目的はお頭とか言うヤツだからなッ!」


コウスケが一人では無い事を暗に伝える。しかし、男はお頭という言葉に顔色を変えた。


「・・・テメェ、どこまで知ってる?」


「さぁな」


「まぁ殺しちまえば問題ねぇな・・・死ねぇッ!」


そう叫び、持っていた曲刀で切り掛かって来た。


周りの兵士達も、行くぞ、と目の色を変える。


コウスケが手甲で曲刀を受けた瞬間だった。


城門側に居た兵士の集団が、竜巻の様な物に巻き上げられ、その中で切り刻まれて行く。


エルネの仕業だ。


『今のタイミングでよかった?』


エルネから念話が入る。


『あぁ、バッチリだ。これで全員っぽいから遠慮無くヤっていいぞ』


『了~解~』


そんな気楽な返事が返って来た。


「テメェ!一人じゃ無かったのかッ!?」


コウスケの手甲と、曲刀で押し合う男が言った。


「俺達って言っただろ?」


そう言って殴り飛ばした。大した強さでは無かった様だ。


『コウスケ!見え難くてコウスケに当てちゃうかも』


エルネからそう念話が入った。


『それは困るッ!少し待ってろ』


そう言うとコウスケは、身体強化の魔法を発動させた。


この魔法を使うと体全体がボンヤリと光るのだ。これを目印にするつもりらしい。


『わぁ!良く見えるよっ!これなら大丈夫』


エルネの念話の後、コウスケから遠い兵士が次々に倒れて行く。


いくら、身体強化の魔法を発動すれば体が発光すると言っても、エルネから見える程光る事は無い。


これは、コウスケが身体強化に注ぐ魔力が多過ぎる為だ。しかし、無駄な訳では無い。


身体強化の魔法は、魔力を注げば注ぐほど効果が高くなり、光も強くなるのである。


人に依っては、決定的な瞬間に全力で魔力を注ぎ、強烈な一撃を叩き込む、と言う使い方をする者もいる程だ。


しかし、その状態を常に保ち続けるには、人の魔力量では無理があるのだ。コウスケ以外は。


恐ろしい程の身体能力になったコウスケも、光の尾を引いて兵士達を次々に倒して行く。


しばらく暴れていると、辺りに立っている兵士はいなくなっていた。


(身体強化やべぇな。敵が止まって見えたぞ?)


そんな感想を抱いていると、隠れていたエルネが姿を現した。


「コウスケスゴかったね?速すぎて何度か当てそうになっちゃった」


と、おどけて見せる。


(そこはテヘペロだろッ!)


等と心の中でツッコミを入れつつ


「まだお頭ってヤツが残ってるんだ。気を抜くなよ?」


と真面目な事を言っておく。


「分かってるよっ!早く済ませて鍋よ!鍋ッ!」


そう言いながら、城門をくぐるエルネ。


「そんな事言って油断してると、やられるぞ?助けてやんねぇからな?」


そう言ってエルネを追うコウスケ。


街に入ると、本当に兵士は居ない様で、とても静かだった。


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