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自由都市ユスティーツィア

あれから二日、二人は街と街とを繋ぐ道、街道を走っていた。そして、ついに街が見える所まで来ていた。


街が見えたからかエルネは若干緊張の色が見える。


一方、コウスケはいつもの様にタバコを咥えダラけている。


この街の情報は、道中で見つけた村にも満たない様な集落で集めてある。


その集落にいたおばあさんが、昔話の様に話してくれた。



街の名は自由都市ユスティーツィア。


その昔、まだこの街が出来る前、この地を治めていた貴族がいた。所謂領主というやつだ。


この領主は、大変出来た人物だったらしく領民から慕われていた。


しかし、領主が息子に替わるとこれまでの善政が一変した。


恐怖政治で領民を虐げ、苦しめ始めたのだ。


先代への恩もあって、我慢していた領民達も、遂には限界を迎えた。


きっかけは、一人の幼い少女が領主の馬車に轢き殺されると言う事件だった。


我慢に我慢を重ね、積もり積もった不満が、この事件を引き金に弾けたのだ。


その不満や、怒りは当然領主に向かう。


領主は呆気なく領民に打ち倒されたという。


そして、その領主の屋敷跡を中心に街が作られた。


名前も、二度とこんな事が起こらない様に願いを込めて「正しい心」とか「正義」と言う意味にしたとか。



それが、今見えている街の成り立ちらしい。


ついでに、おばあさんは二人にこうも言った。


あの街は最近変わってしまった、数ヵ月前まで旅人も商人も沢山来ていたと。


今では皆、避けて行くらしい。用が無いなら近づくな、と。


行く事は決まっていたので、曖昧に返しておいたが。



街が見えてから少し近づいた所で馬車を停めた。


少し様子を伺う。


「城門に人も馬車も全く並んで無いな。どうする?」


「私ッ?・・・威力のある魔法撃ち込んでから突撃、とか?」


問答無用で街ごと潰す気らしい。


「・・・作戦は俺が考えるよ」


「こういうの苦手なのッ!」


使う者より使われる者の方が向いている様だ。


「まずは中の様子が知りたいよなぁ」


「どうして?」


「単純に街全体が悪の巣窟なら、エルネの方法でも問題無いけど・・・」


「普通に生活している人達が、って事ね?」


いつもより飲み込みが早いエルネ。いつもこうだったら楽である。


「そう。巻き込むのはマズイだろ?」


「そうね。・・・で、どうするの?」


「普通に入る」


城門が閉まっている以上、忍び込むのは難しそうだった。


「・・・大丈夫?それ」


「勿論何かあった時の為に対策はして行くさ」


「対策?どうするの?」


「二人の荷物を全部俺のボックスに仕舞う」


「・・・それに何の意味があるの?」


理解出来ないエルネが聞いた。


「仮に捕まったとして、武器や魔法鞄はどうなる?」


「取り上げられるわね」


「ボックスならその心配も無いし、逃げる時には武器も魔法鞄も使える。取り返す手間も省けるしな」


「なるほど・・・馬車も取られちゃ困るんじゃない?」


「・・・歩こうか」


話し合った結果、そう決まった。


二人は、荷物と馬車をボックスに仕舞い、街へと歩いて近付いて行く。


城門まで辿り着くと、その前には他の街同様、兵士姿の門番が立っていた。


「何だぁ、オメェら?」


どうも様子がおかしかった。言葉遣いだけでは無い。兵士の制服もダラしなく着崩しているのだ。


「旅の者です。街に入りたいのですが・・・」


「そうか、街に入りてぇのか?なら通行料を出しなッ!」


やはりおかしい。例え通行料を取る街があったとしても、門番としてはまずは、身分証や通行証を確認する筈である。


しかし、ここは合わせておく。


「通行料ですか?いくらでしょうか?」


「そうだな・・・いくら持ってんだ?」


決まった額は無い様だ。


「二人分の食費と宿代で2500程ですが・・・」


偽装用の財布を覗きそう答えた。実際に2500ギルしか入れていない。


「なら2500だ!払えねぇなら入れねぇぞ?」


ニヤニヤしながら門番が言った。


コウスケは、渋々という演技をしながら払った。


それを確認した門番は、持っていた槍の石突きで城門を無造作に数度突いた。


すると、城門が少しだけ開いた。


「おらッ!行けッ」


門番に押し込まれた。結局、身分証や通行証の確認はされず終いだった。


中に入って、見渡すと普通に人々が生活していた。


しかし、その誰もが表情や雰囲気が暗い。少し異様に感じるコウスケ。


「オイッ!お前らッ!」


歩き出そうとした時に、真横から声が掛かった。


そちらを向くと、またしても兵士の制服を着た男だ。


「何でしょうか?」


「この街には何しに来たんだ?」


「それは・・・」


少し言い淀んでしまったコウスケ。街に入れた事で少し油断した様だ。


「怪しいな。話は詰め所で聞く!オイッ!コイツらを連れて行けッ!」


二人は問答無用で連行されてしまった。


詰め所なる場所に押し込まれ、周りを複数の兵士に囲まれたコウスケとエルネ。


持ち物も取り上げられてしまった。まぁ空の財布とマントだけだが。


「チッ、何も持ってねぇ」


一人の兵士がそう漏らした。


知れば知る程、兵士らしさが感じられないと思うコウスケ。


「見ろッ!この女、エルフじゃねぇかッ!?」


マントを奪われたエルネを見て、マントを奪った兵士が叫ぶ。


長居すると面倒だとコウスケが口を開く。


「もういいでしょう?街に来たばかりで、捕まる様な覚えはありませんよ?」


すると、最初にコウスケ達を捕らえる様言った兵士が


「いや!お前達は犯罪者だ!」


こう言い放った。これにはコウスケも


「なッ!?俺達が何したって言うんだッ!」


堪らず口調が乱れる。


「どこからどう見ても犯罪者じゃないか。なぁそうだろう?」


そう言った。すると


「あぁそうだな」


「間違いないな」


周りの兵士も口々にそうだ、そうだと言い出した。


その慣れた様子を見て、少しだけ冷静さを取り戻したコウスケは考えていた。


(だから旅人や商人はこの街を避けるようになったのか)


「犯罪者は牢屋行きだ。この男を牢に入れろッ!」


「このエルフはどうします?」


「エルフなんて滅多に手に入らねぇ。お頭に献上だ。屋敷に連れてけッ!」


(お頭、ねぇ・・・何となく読めて来たぞ)


何となくこの街の状況が見えてきたコウスケはエルネを見る。


エルネは「殺っちゃう?」みたいな顔をしていたので、首を横に振り止めておいた。


周りには民家も多い。ここで暴れるのはマズイだろう。


そのまま、コウスケは牢屋へ、エルネは別の場所へ連れて行かれた。



牢へ放り込まれたコウスケ。


「イテッ」


「そこで大人しくしてろッ!」


コウスケを放り込んだ兵士はそう言って出て行った。


「さてとっ」


そう言ってコウスケはボックスから指輪を取り出し、指に嵌めた。念話の指輪だ。


『エルネ、聞こえるか?』


『ええ、聞こえるわ。コウスケ、無事?』


エルネの方のピアスは、髪で完全に隠れるのでそのままにしてあった。


指輪は目に付き易いので仕舞ってあったのだ。


『無事だ。エルネは?』


『私も大丈夫。別々は予想外だったね、どうするの?』


『街の状況は何となく分かったから、一旦街を出よう』


『それはいいけど・・・コウスケも捕まってるんでしょ?どうするの?』


『心配無い。あの時みたいに会いに行くよ』


エルネが奴隷商に捕まっていた時の事だ。


『あぁ・・・なるほどね』


エルネも分かった様だ。


『そう言えば、お頭に献上って言ってたけど、急いだ方が良さそうか?』


『明日の朝、そのお頭って言うのに会わせるって言ってた。それまでには助けて欲しいな』


会ったが最後、嫌な予感しかしないエルネ。


『了解。じゃあ夜に迎えに行くよ』


そう言って念話を切ったコウスケ。


すぐに行動を起こすと思いきや、ドサッと腰を下ろしあぐらを掻いた。


このまま、夜を待つ様だ。


鍵の掛かった牢をどうにかする術をコウスケは持っているのだろうか・・・


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