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「プレゼント」とは?

この街での目的を果たした二人はいつでも旅立てる状態だ。しかし


「俺、工房ばっかでこの街全然見てねぇな?」


工房に籠っていたコウスケがそう気付く。


「私も宴会ばっかで観光出来なかったよ・・・」


それは違う。


話合った結果、街を見て回り、それからこの街を出る事に決めた。



「う~ん。・・・って言っても何を見ればいいんだ?」


二人は今、街中を歩いている。


「モン爺みたいな人達が集まって出来た街なんだし、装備品とか装飾品とかじゃない?」


エルネがそう言うが


「装備品ねぇ・・・武器はモン爺にヤベェの作ってもらったから、当分買い換えは無いだろ?」


「まぁそうね」


「防具も、エルネは付けたがら無いし、俺は自分で弄ったのがその辺のより良い物だからな・・・大体マントで足りるんだよな・・・」


エルフは鎧の類いを嫌う傾向がある。エルネが防具を付けないのも、そのためである。


「いいじゃん、見て回るだけでも。コウスケ見るだけで価値が分かる便利機能付いてるんでしょ?掘り出し物とか有るかもよ?」


「機能言うなッ!せめて能力と言いなさい!・・・まぁそうするか」


どうもエルネは、コウスケのスキルやギフトを便利機能の様な物、と思っている節がある。


取り敢えず方針が決まり、二人は身に付ける物を中心に見て回った。


結果は、店舗を構える店から、露店までを回ったが掘り出し物と言える程の物は見つから無かった。


それはそうだ。基準が「現在装備している物より良い物」だからだ。


そんな物は無いと言っていいだろう。


昼食時になり、疲れていた二人は屋台で食べる物を買い、近くの公園の様な場所に移動した。


木々からの木漏れ日が差し込む場所にベンチが並んでいたので、そこに座った。中々雰囲気のいい場所である。


自然の中で、屋台の料理を楽しんでいると、隣のベンチから男女の話し声が聞こえて来た。


「どうしたのコレ?・・・私に?」


「そうさッ!僕が作ったんだ。この上に乗ってる石も僕が取って来た物さ」


「うれしいっ!ありがとう」


「喜んでもらえて僕も嬉しいよ」


と言う会話が。二人だけの世界に浸っている様で、自分達の声が大きくなっている事に気付いていない様だ。


これを聞いたエルネが


「コウスケ、あの二人何やってるの?」


「何って・・・プレゼントだろ?」


「プレゼント?って何?」


「何って・・・贈り物かな?」


「どうして物を贈るの?」


「・・・そりゃあ、大事な人とか親しい人に喜んで欲しくて、とかじゃねぇの?」


「そうなの?」


「・・・エルネ、珍しい酒やろうか?」


「ホントっ?うれしい!」


「こうなる訳だ。わかった?」


「なるほど、わかったわ。・・・それでお酒は?」


「お前なぁ・・・」


「冗談よ。でも、私もプレゼント?欲しい」


「催促して貰う物じゃ無いだろ?」


「いいじゃない?私も貰ってみたいぃ~」


どうやら先程のカップルを見て、プレゼントに憧れを抱いたらしい。


適当な物をあげて、さっさと納得してもらおう。


「酒はダメだからな」


「やったぁ」


こうしてエルネにプレゼントを買う事になった。


(酒はダメだろ?武器はあるし、防具はいらない。・・・無難なのは装飾品、アクセサリー辺りだな?)


適当な物と考えていたが、しっかりプレゼントらしい物しか思い浮かばず、急に恥ずかしくなるコウスケ。


「どうしたのコウスケ?そんなに嫌なの?」


真面目に考えてしまっていたコウスケを、嫌がっていると思ったエルネ。


「・・・あっ!じゃあ私もコウスケにプレゼントするよっ」


とてもいい考えだ!と言わんばかりに胸を張るエルネ。


(それも俺の金で買うんだろ?俺へのプレゼントを俺が買うってどうなんだ?)


体全体で喜びを現し歩くエルネ。その後ろを肩を落とし歩くコウスケ。




「これなんていいんじゃない?」


「ちょっと派手じゃないか?こっちのは?」


「これもいいね!これにしようかな?」


「あぁそれならこっちの魔石のやつの方がエルネに似合うんじゃないか?」


「そう?じゃあこれにするっ!コウスケはどれがいい?」


「俺はあんまり派手なヤツはなぁ・・・あぁこういう地味な指輪とか」


「あっ!じゃあこれは?」


「う~ん・・・おっ!こっちの魔石のヤツにしようかな?」


「いいじゃん!じゃあそれねっ!」


結局、装飾品店で指輪とピアスを買わされたコウスケ。


宝石の付いた物を買おうとしたエルネを、何とか魔石の付いた物に誘導したのはコウスケに考えがあっての事だ。


「はいっ!コウスケ!プレゼント」


コウスケが買った物をエルネに渡し、それを再びコウスケに渡す。どうしても納得の行かないコウスケ。


「あぁ・・・ありがとう、う、嬉しいよ・・・」


さぁ来い、と言わんばかりのエルネ。


「・・・これ、エルネにプレゼントだよ・・・」


「やったぁ!ありがとっ!」


コウスケが少し泣いたのは秘密だ。



~~



その日の夜、宿の食堂で夕食を食べていた時だった。


「エルネ。今日のプレゼント魔道具にしたいから、一晩預けてくれない?」


「えっ?変なのにならない?」


「大丈夫だよ。見た目は変わらないし、便利な魔道具にするから」


「約束よっ?大切なんだからっ」


そう言って差し出して来た。


「大丈夫、大丈夫」


そう言って仕舞った。


部屋に戻るとエルネはベッドに直行した。コウスケもテントに入るが、まだ眠る訳では無い。


今日買ったプレゼントを魔道具に魔改造するのだ。


魔方陣魔法の中には、魔石の中に細かな魔方陣を刻んで魔道具にするという魔法がある。


この魔法を使って魔道具にしようと考えたのだ。魔石にしたのもこの為だ。


「よしっ!やるぞッ!」


そう気合いを入れて作業を始める。


今回、作る魔道具は「念話」の魔道具だ。念話とは、離れた相手と会話できる魔法だ。


これは、エルネの性格が分かっていく過程で


「もしエルネとはぐれる様な事があったら大変だ」


「何かやらかす前に見付けられるだろうか?」


「いや、無理だ」


「ケータイが必要だ!!」


となったからである。


ケータイは無理だが、それに代わる魔法は無いかと探して見ると「念話」を見つけた。


これはなるべく早く作らねば!と思っていたのだ。


作業はとても繊細で、技術が必要だが掛かる時間自体は短い。


まずは、使用する魔方陣を思い浮かべる。次に、思い浮かべた魔方陣を魔石の中に魔力を使って刻んで行く。


最後に、魔力を流して上手く出来たか確認する。以上だ。


まぁ魔方陣を刻む作業が恐ろしく神経を使うので中々見ないタイプの魔道具だ。


程なくして完成する。


「エルネ驚くだろうな」


そうして、少しワクワクしながら眠りについた。


結局、本当のプレゼントになっている事にも気付かず。


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