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初めての人 初めての街


それから数日間、薪を拾い、うさぎを狩り、オオカミから逃げ、イノシシから逃げ、イノシシがオオカミに襲われ、イノシシを助け、そのイノシシに襲われ、・・・イノシシを食べ、野宿をして、たまにヒロインを探し・・・そんな日々を過ごしついに


「・・・いい加減会話がしたい」


人恋しくなっていた。精神の限界を迎えていた。

半泣きでトボトボと歩いていると急に森が開けた。


「・・・今日はここで野・・・!終わった・・・森を、森を抜けたァァァ!!」


ようやく森を抜けたのだ。遠くない距離に道のようなものも見える。


「人が居る!きっとあの道を辿れば、人に会える!会話ができる!!」


さっきまでと違い生き生きと歩く、程なくして道に辿り着いた。


「轍みたいだ、車・・・じゃなさそうだな。馬車ってトコかな?」


森から見えていた道はどうやら車輪のある乗り物が付けた轍だった様だ。


「どっちに行こうか?誰か通ってくれれば話が早いけど」


パカッパカッパカッ  


音速で振り向くと少し距離はあるが向こうから馬車がゆっくりと近づいて来ている。


初異世界人との接触を楽しみに少し待っていると、ついに馬車が目の前までやって来た。御者席には小太りのおっちゃんが一人。


「あのー!スイマセンッ!」


ギシギシと音をたてて馬車が止まった。


「どうした若造!こんな何も無い所に一人で、危ねぇぞ!」


(マズイ!理由を考えて無かった・・・迷った設定で行けるか?)


「イヤァ~道に迷っちゃって」


「迷うも何もここは一本道じゃねぇか、まさか追い剥ぎか?」


眉を寄せ警戒するおっちゃん。


「違いますよ!実は迷ったのはあっちの森の中でなんです。で、ようやく森を抜けたんですが土地勘が無いのでどっちに行けば街につくのかわからなくて」


「あの森で迷って出てこれたのかっ!?あの森は魔物はたいしたのは出ねぇが人を惑わせる森だって噂の森だぞ」


(いやいや、森自体は普通の森だったよ?)


「数日間、彷徨いましたよ」


苦労したアピールをしておく。


「お前運がよかったな。乗ってけ!街まで送ってやるよ」


「いいんスかッ?ありがとうございます」


正直、泣きそうだった。おっちゃんの優しさと久しぶりの会話で。


おっちゃんの隣に腰を下ろし馬車に揺られながら雑談を交わす。

おっちゃんは商人であること、オレは旅人(異世界からの)であること、森でうさぎを倒した武勇伝、この世界でそれは子供でも出来ること、街に着くまでにおっちゃんとは意外に仲良くなってしまった。


今、目の前には立派な城壁と大きな門が見えている。


「ここがこの国の首都、ガーランドの街だ!」


おっちゃんが自慢げに胸を張る。


ワクワクしながらおっちゃんと一緒に門を通ろうとすると、門番が一言「許可書を」と短く告げた。


おっちゃんはいつもの事の様に紙の様な物を見せる。


「よしっ!次っ!」


「無いです」


「では何か身分を証明できる物を」


「・・・無いです」


「では担保金を払って入り、三日以内に各ギルドのギルドカード、又は領民証の提出を」


「・・・お金も無いです」


「・・・ではお引き取りを」


門の外でオレは崩れ落ちていた。


(・・・どうすんのこれ?最初の街に入れないとか詰んだでしょ)


道を逆走し反対側の街に行こうかと考えていると


「ほらよ貸してやる」


おっちゃんが戻ってきてお金を貸してくれた。あんたが神か!?


先程の門番に怪しまれながら無事、街に入る事ができた。





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