鉱山都市ガラルクラフト
ある日の道中。
「・・・ねぇコウスケ」
馬車を操作しながらのエルネ。
「うん?」
その隣で咥えタバコのコウスケ。
「荷台にある大きな箱、何?」
「あぁアレ?道具箱だよ」
「荷台を工房にでもする気?」
最近、コウスケは物作りをする時は荷台を使っている。
「まさか。アレはたまにしか使わない物とか、作った物を入れようと思って。そう言うの魔法鞄に入れとくのは邪魔だろ?あっエルネも使っていいよ」
「って事はアレも魔法?道具箱なの?」
「あぁ。安心の大容量さ!それとその内、更に弄って離れていても中身を取り出せる様にするつもり」
【空間接続】の効果がある魔方陣を蓋の内側に刻むらしい。
「・・・何でもアリね?そして、それに驚かなくなった自分が怖いわ」
「便利になるんだから、気にしない気にしない」
この様に、この馬車では暇潰しに世界を揺るがす様な大発明の報告が度々交わされていた。
~~
「やっぱり道なりに進めばちゃんと着くのね?」
「あぁそうだな。正直驚いてるけど」
どこに向かっているのかも分からず進んでいた二人は今、城門へと続く人や馬車の列に並んでいた。
「よしッ!次ッ」
コウスケとエルネはギルドカードを門番に見せる。
「よしッ!次ッ」
何事も無く街に入った。
「ここは・・・鉱山都市ガラルクラフト?だって」
「あっそれ聞いた事ある!小さい頃、ドワーフが沢山居て恐い所だって教わったよ?」
「えつ?ドワーフって凶暴な種族なの?」
「会った事無いから分かんない」
「酒好きで、頑固で、手先が器用なんじゃないの?」
正しいのはコウスケである。エルネの話はエルフとドワーフの仲が悪い事が原因である。
エルネの周りの大人がドワーフへの嫌がらせとして行った、ただの洗脳教育である。
「きっと、会ってみれば分かるよ」
エルネにはそこまで効かなかった様だ。
「まぁまずは宿を取ろう」
二人は歩き始めた。
宿を見つけ中に入った二人は目の前の光景に驚く。
「・・・何だこりゃ?祭りの日か何かか?」
「スゴ~イっ!これじゃ食堂って言うより、酒場だねっ」
宿屋に併設されている食堂は満員だった。それだけなら繁盛している宿屋の食堂なのだが、ここでは何故か至る所で宴会が行われていた。
髭もじゃのズングリした何かが酒を片手に大盛り上がりである。
「・・・ほぼ俺のイメージ通りだな。それにしても、まだ昼前だぞ?」
「えっ?あれがドワーフなの?聞いてたほど恐く無いみたい」
宴会場を横目に二人は受け付けに向かった。
「いらっしゃい!」
恰幅のいいおばちゃんだった。
「取り敢えず2~3日、二部屋で」
「一部屋じゃダメかい?空いて無いんだよ」
「同じ部屋は流石に・・・」
諦めようと思ったが、取り敢えず、一応、念のためエルネに聞いてみる。
「エルネ」
「んつ?どうしたの?」
付いて来てはいたが宴会が気になるのか、そちらを向いていて話を聞いていなかったらしい。楽しそうだもんね。
「一部屋しか空いて無いんだって。どうする?他を探す?」
「??・・・どうして?いいじゃんっ」
「えっ?・・・いいんですか?」
一瞬自分の顔が劇画調になった様な気がしたコウスケ。思わず敬語にもなっている。
(190歳って言ってもまだまだお子ちゃまだな。危なっかしいぜ)
「コウスケがテントで寝てくれれば、私は問題無いわよ?」
「ですよねぇ~」
意外としっかりしている様だ。
「じゃあ一部屋で」
「あいよっ!・・・まぁ頑張んな」
一連の会話を聞いていたおばちゃんが励まして来る。何を?とは聞かない。
話を変えようとドワーフの事を聞く。
「あそこで宴会してるのってドワーフですよね?」
「そうさ。鉱山に出稼ぎで来てるドワーフ達だよ」
「今日は祭りか何かで?」
「いんや。毎日あの調子だよ。騒がしくて敵わないね。まぁお金はちゃんと払ってくれるからいいんだけど」
「大変ですね?」
「この街に居りゃ嫌でも慣れるよ。悪い奴等でも無いしね。」
ここでおばちゃんの視線がチラチラとコウスケの背後を見ている事に気付きコウスケも後ろを見る。
「止めた方が良いんじゃないかい?」
そこには宴会に参加しようとスキップで向かって行くエルネの姿が。
「・・・そうします」
会話を切り上げ、エルネを捕獲して部屋に上がった。
「いいじゃん別に!少し位飲んだって」
プンプンと怒っているエルネ。
「あんなのに参加したらすぐに潰されるぞ?」
「私結構強いんだよ?大丈夫だよ」
「普通の「強い」は、ドワーフの「弱い」なんだよ」
コウスケのイメージでは、であるが。
「?・・・意味分かんないっ」
尚もプンプンしているエルネをなだめる。
「どうせ夜は食堂で食べるんだからその時に飲めばいいだろ?なっ?」
「・・・分かったわよ」
なんとか納得してくれた様だ。
「じゃあこの街での目的を決めておこうか?」
「宴会よッ!!」
「一回そこから離れろッ」
エルネは意外と酒好きなのかもしれない。
「・・・だってそれ以外にこの街の事はドワーフが居るって事ぐらいしか知らないもん」
「・・・そりゃそうか」
宿までの間と受付のおばちゃんから仕入れた情報を教えることにした。
曰く、この街は近くにある良質な鉱山のお陰で栄えた街だと言う事。
その鉱山から取れる金属や宝石類を加工する産業がこの街を支えている。
そこに採掘や鍛冶、彫金等が得意なドワーフ達がワラワラと集まって来たのが今のこの街の姿である。
因みに、鍛冶や彫金等の職人をしているドワーフを居住組、期間限定で鉱山に採掘に来るドワーフを出稼ぎ組と呼んでいるらしい。
居住組は、店や工房等を構える事を考えればこの街に住み付く事は当然だ。
出稼ぎ組は、周りの村や集落から冬越えの資金を稼ぐ為に来る者がほとんどらしい。
そんな物作りに特化した街だ。逆に言えばそれ以外は弱いとも言える。
ドワーフが居るせいか、酒の種類が意外に多い事はあまり知られていない。
ここまで説明して、エルネに再度問う。
「さて、じゃあこの街で何をしようか?」
「そうねぇ・・・あっじゃあ私、細剣を作りたいわッ!どうも無いとバランスが悪いみたい」
(遠慮が無くなって来たな・・・まぁいいか?あんまり金遣いが酷くなったら野生のエルフに還せばいいしな)
等と怖い事を思う。
「そうだな。近接武器もやっぱりあった方がいいよな」
「それに、コウスケには私が魔法や弓だけじゃ無いってトコを見せてあげなくちゃ!」
「・・・それは別にいいよ」
戦闘スタイルの関係で刺突攻撃には滅法弱いコウスケは冷や汗を流した。
「遠慮しなくていいよ?弓と素手とじゃ訓練出来なかったもんねっ!」
(穴だらけにされそうだ。全身鎧でも買っとくか?)
そんな事を一瞬思うも、話を続ける。
「じゃあエルネは細剣だな?俺もいくつか作ってもらいたい物があるし、目的は決まったな」
「そうね!・・・でもコウスケなら自分で作った方がいいんじゃ?」
「どうせならプロに作ってもらう方がいいだろ?」
ドワーフ製の武器と言う物に少なからず憧れのあるコウスケ。結局は自分でも弄るのだが。
「それもそうね。・・・さっ!そうと決まれば急ぎましょ?私楽しみだわっ」
二人は宿を出て、工房街へと向かって行った。




