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二人旅

ビーサスを出発したふたりは御者席に並んで座り、これからの事を話ながら馬車を走らせていた。


「次はどんな街なの?」


「えっ?俺は知らないよ。エルネに聞こうと思ってた」


「私だって知らないよッ!・・・大丈夫かな?迷ったりしない?」


「・・・大丈夫だろ?太い道を選んで行けば何処かには辿り着くさ。・・・きっと」


自分達が今いる大陸の地理さえ把握せずにこのふたりは旅をしていた。


もっとも、それを知りたくて旅をしていると言う側面もあるのだが。


お互いに責任を擦り付け合う事に疲れたふたりは、取り敢えず気にしない、楽しみが増えた、と言う事にしようと問題を棚上げにした様だ。


そんな事よりも旅を楽しもうとエルネは景色を眺め、コウスケは咥えタバコで馬車を操作する。


長閑で穏やかな時間が過ぎる。コウスケは満足していたが、エルネには延々と同じ景色にしか見えなかった様だ。


「飽きたッ!ねぇコウスケ。飽きたッ」


「いや知らねぇよ」


「・・・魔物でも出てこないかな?」


「怖ぇ事言うなよ・・・あっ!じゃあコレやってみる?」


そう言って握っていた手綱を見せる。


「いいのっ?やりたい」


「エルネも操縦出来るようになれば交代できるしな」


席を代わり手綱を渡した。初めはヒヤッとする事もあったがすぐにコツを掴んで上達した。


相当気に入ったのか、その後コウスケが手綱を握る事は無かった。


今度はコウスケがヒマになってしまった。


「後ろでちょっと作業しててもいい?」


馬車を任せても大丈夫な程エルネが上達したので、暇潰しに荷台で何かを作る様だ。


「うんっいいよ!こっちは任せて」


「何かあったら直ぐに言えよ?」


任せはするが、信用はしていない様だ。


エルネの「はーい」と言う返事を背中に受けながら荷台に移った。


その後は何事もなく、日が傾き始めるまでコウスケは荷台に籠っていた。


「コウスケェ~?そろそろ夜営場所探した方がいい?」


「・・・うわっ!もうそんな時間か?」


そう言いながら御者席に出てきた。周りが見えなくなる程没頭していたのだろう。


「あっ!あそこなんていいんじゃない?」


エルネが指差したのは川のほとり、丁度良く開けている場所だ。


「川も近いし便利そうだな。あそこにしよう」


轍を逸れた所に馬車を停めて夜営の準備をする。テントを張って、火を起こすだけだが。


「・・・これどうやって使うの?」


エルネはテントの張り方が分からない様だ。


(今までどうしてたんだよ?)


そう思いながらも教える事にした。


コウスケのテントをふたりで張りながら教える。


「ここはこう」


「こう?」


「そうそう。でこっちをこう」


「こっちを・・・こう?」


「最後に・・・これで完成。簡単だろ?」


「えぇ。もう覚えたわ!中はどんな・・・」


自分で張った初めてのテント。中を確認したくなった様で、コウスケのテントだと言う事も忘れて顔を突っ込む。


「あっ!ちょっ」


「ッ!!何これッ?どうしてこんな広いの?」


「いやまぁ・・・色々弄った・・・から?」


「ベッドを買った意味が分かったわ。まさか夜営でベッドに寝れるなんて!私も急いでテント張らなきゃ」


ワクワクが止まらないと言った様子だ。


「いやその・・・あの・・・ちょっ」


エルネの物覚えは凄まじく教えたばかりのテント張りを瞬く間に終えた。


(マズイ・・・マズイぞぉぉ)


輝かんばかりの笑顔がテントの中に突っ込まれ、出てくると光を失った目に無表情という変わり様だ。


「・・・私のは普通のテントなのね?」


全くの感情が乗っていない。怒りすら感じられない。それがまた怖かった。


「いや違うよ?エルネのも広くしようと思ってたんだよ?ただ、じ、時間が、無くて」


後半は何故か詰まってしまった。


「・・・さっきまで荷台に籠ってたのに?」


「いやそれは・・・わ、忘れてた・・・というか」


別の物を作っていただけである。


(マズイ!コワイ!どうにかしないと・・・!!)


コウスケは閃いた。


「ウソウソ、嘘だよ。ちゃんと用意してあるよ」


そういって魔法鞄に手を入れた。そして、中で【創造の産物】を発動し自分のテントと同じ物を作りだした。


「ホラこれだよ・・・」


取り出して恐る恐る差し出す。


「・・・今コピーして作ったんでしょ?」


(バレてたァァァ)


「・・・まぁいいわ。許してあげる」


「うん。ごめん」


手早くテントを張ると、エルネは中に入って行った。


(・・・アレ?立場逆じゃね?)


奴隷に怒られ、謝る主人。


なにかモヤモヤするが気分を切り替え夕食を作るコウスケであった。


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