ヒロイン!?戦闘!?そして、野宿
「キタコレ!ヒロインイベント!!」
ワクワクを抑えつつ音のした方へと走り出した。徐々に近くなってきたのか音が大きくなる。しかし、様子がおかしい。
「キャャァァァァ」
「キャァ!」
「キャァァァ」
辿り着いたその場所には、襲われている女の子などは居なかった。居たのは角を生やした二匹のうさぎだった。
二匹はケンカに夢中で走り寄ったオレに気付かなかった。
「オレのワクワクを返せッッ!!」
そう叫ぶのと同時に、勢いのまま強く握りしめていた拳を二匹に放っていた。
格闘マスタリーのおかげか、どう体を動かせばいいかが自然にわかる。二匹の内遠い方のうさぎの首目掛けて右拳を振り下ろす。ボコッ!
突然の事に一瞬固まったもう一匹に間髪入れず左手を伸ばした。角を掴み持ち上げると、そのまま首の後ろをぶん殴った。ゴリッ!
一発づつあたった攻撃で二匹は動かなくなった。
「紛らわしい鳴き声してんじゃねよ!!」
期待を裏切られそう叫んでいた。そして、動かなくなった二匹を見て気付いた。
「ヤベッ!勢いで殴っちゃった!死んじゃ・・・いましたよね?そりゃそうだよね。格闘マスタリーあるもんね!」
(魔物だったのか?それともただの動物だったのか?そうだ【鑑定眼】)
目の前に情報が表示された。
一角兎
ランク G
角が一本生えたうさぎ。角、毛皮、肉、魔石が売れる。魔物。食用。
どうやら魔物だったようだ。初戦闘を終え、素材と食料を手に入れたがお金は落ちない様だ。情報を確認して食べられる事が分かったので、とりあえずボックスに放り込んだ。
(まぁいいか。まだ森からは出られそうもないし。食料は手に入るようだし、これからはうさぎを狩りつつ、薪を拾いつつ、ヒロインを探しながら森を出る!これを目標にしよう。)
これからの方針を決め野宿の準備を始めるため開けた場所を探す。
しばらく歩いて日が傾いてきた頃、ちょうど良く開けた場所に出た。
(ちょうどいいな。ここにすっかな。)
まずは火をおこす、ボックスから薪を取り出して火魔法で火を着ける。その後、焚き火の回りに近くにあった石を積み、使い易いよう弄っていく。
(これはどうすっか?)
ボックスからうさぎを一匹取り出して眺める。食べるためには解体しないといけない。幸い、生産マスタリーのおかげか、解体の仕方は頭に浮かんでくる。しかし、解体するには道具が欲しいところである。
(ナイフが要るな、作るか?・・・いや、ナイフなんて触ったことねぇよ!・・・あっ、包丁でいいのか?)
創造の産物を使って包丁を作り出す。
(よしっ、じゃやりますか。)
作り出した包丁を使って解体を始める。まずは、毛皮をキレイに剥がす。次に、角を傷付けない様に取り外し、内蔵もキレイに取り出す。
(こんな事がオレに出来たなんて!)
感動しているが生産マスタリーのおかげである。
生産マスタリーは、すべての物作りをレシピも含め行える他、素材に関しての知識も含まれるのである。解体が出来たのもそのおかげでだ。
解体した角、毛皮、魔石(内蔵を取り出した時に見つけた)をボックスに入れ、残った肉を食べやすいように更に解体していく。
内蔵は少し離れた所に魔法でチョット引くほど深い穴を掘り、そこに放り込んだ。
辺りはすでに真っ暗になり、焚き火の光が届く範囲しか見えなくなっていた。
(この状況で寝るのは流石に怖ぇな。テントとか・・・いや、魔物が居るこの森じゃ役に立たねぇか。)
焼いたうさぎ肉を食べながら、火を見つめどうするか考えていた。
(テントじゃ普通に入って来て襲われるだろうし・・・入って来れない様にする?どうやって?・・・魔法で土の壁でも作るか?いや、周りが見えないのは不安すぎる。じゃあ・・・!)
「そうか!魔法全部使えんだから結界みたいな、防御魔法みたいな魔法きっとあんだろ!」
そう思い、頭の中で探してみる。見つけたのは無属性中級防御魔法だった。これは、物魔両方の攻撃を防いでくれる魔法だ。しかし、問題がある。
「・・・ありゃ?消えちゃった?」
とても一晩中張っておけるような魔法ではないのだ。一度発動すれば魔力を注いでいる間は守ってくれるが、眠ったりして魔力が途切れれば消えてしまうのである。
何かいい方法が無いか頭の中を探っていると、生産ページの中に魔道具というのを見つけた。
魔道具とは、特定の魔法を発動することが出来る道具である。魔道具には二種類あり埋め込んだ魔石からの魔力を使う物と、使う人間の魔力を使う物の二種類だ。
この魔道具は魔方陣なるものを道具に刻み込み作られていることもわかった。さらに読み進めて行くと
(なるほど・・・魔道具は作れるけど材料が無いな。魔方陣は・・・おっ!発動する時に込めた魔力の量で発動期間が変わる。って事は一晩持つだけの魔力を最初に込めれば大丈夫そうだな。)
地面に魔方陣を書き始める。魔方陣は、魔方陣魔法等と呼ばれ魔法に分類される。従って問題なく使える。
広場の真ん中あたりに陣を描き、広場全体を発動範囲にする。そして、魔力を一晩持つだけ注ぎ発動させた。
なぜだか一晩分の魔力量がわかった。まぁ魔法系のスキルのどれかの効果だろうとあたりをつけ、発動した防御魔法の効果を確かめ、寝た。
安心感がハンパ無くそれはグッスリと。




