ヒロイン確定!?いや、まだ油断禁物
新たに一部屋取り、宿屋の前で待っていたエルネの元に向かう。
「それで?どうするの?」
「もちろんエルネの弓を探すさ」
「当てがあるって言ってたけど本当に大丈夫なの?」
「あぁ。でもひとつエルネに協力して貰いたい」
「あの弓が戻って来るなら何でもするわ」
「じゃあちょっとあの路地の近くで迷子みたいにキョロキョロして来て」
「何それ?弓を探すのとどう繋がるのよ!」
「いいから騙されたと思って、ほら」
軽く背中を押した。
「分かったから押さないでよ」
文句を言いながらも路地に近づいて行く。その後を少し離れて付いて行く。
言われた通りキョロキョロしているエルネの背後から声が掛かった。
「そこの嬢ちゃん、街案内なんて如何ですかい?」
「キャア!!何ッ?」
後ろから急に声を掛けられ悲鳴を上げながら振り向くエルネ。
「アレ?嬢ちゃんは確か・・・」
すると今度は案内人の背後から
「街案内はいい。情報がいる」
「うわっ!・・・って旦那ですかい?じゃあやっぱりこの嬢ちゃんは・・・」
「あぁ助けたエルフだ」
「コウスケ、この人は?」
「エルネを助けるのに世話になった情報屋だ」
「旦那、あっしは街を案内する案内人でさ。情報屋じゃないですぜ」
「そんな事より調べて欲しい事があるんだ」
「・・・どんな情報がお望みで?」
「盗品を扱っている店に最近珍しい弓が持ち込まれなかったか調べて欲しい」
「奴隷の次は盗品ですかい?旦那も染まっちまいやしたねぇ」
「訳のわからん事言ってないで早く行け」
「ヘイヘイ・・・じゃあ明日の朝またここで」
そう言って路地に消えて行った。
「・・・大丈夫なの?あの人。スゴく怪しかったけど」
「腕は確かだと・・・思う」
「思うって・・・まぁ仕方ないか?今はあの人に頼るしか」
「そう言う事だ。果報は寝て待てってな」
「ヒマになっちゃったね。どうする?」
この後の事を聞いてくるエルネ、そんなエルネの全身を見て
「魔法鞄取られちゃったの?」
「うん。容量のちっちゃい安物だったけど気に入ってたのに・・・」
「じゃあ必要な物揃えに買い物でも行く?」
「それはダメだよ」
「でも魔法鞄は必要だろ?それにエルフって事隠す為のマントも要るんじゃ?」
「でもこれ以上コウスケにお金を使わせるのは悪いよ」
「じゃあ貸すってのは?」
「貸す?」
「そう。取り敢えず今はオレから借りて最低限必要な物揃えた方がいいんじゃない?」
「・・・でも」
渋るエルネ。その時コウスケは思い付いた。
(マントはタダじゃん。魔法鞄も普通の鞄で済むし)
「じゃあマントはオレの予備をあげるよ」
そう言って背中の魔法鞄に手を入れる。
地獄のチクチクはもうやりたくないと言っていたのだ。予備など有る筈が無い。
(【創造の産物】・・・出来たか?)
取り出したマントが自分用と同じになっているか確かめる。
(スゲェ!?魔方陣も付与魔法も思った通り同じだ)
おっちゃんに無理だと言った量産が出来てしまった。
それをエルネに渡す。
「いいの?・・・薄々気付いていたけど、コレって凄い物よね?どんな効果か分からないけど魔方陣に付与魔法まで・・・」
やっぱり気付いていたらしい。
「魔方陣は温度調節で付与魔法は防御魔法を付与してあるんだ」
正直に教えた。
「ナッ!!買ったら幾らすると思ってんの?こんな物貰えないわよッ」
「いやいや。お手製だからほぼタダだよ。心配しないで貰ってよ」
「お手製ッ!?魔方陣は知ってたけど付与魔法まで使えるの?コウスケ、あなた一体・・・」
バラしてしまったら後は楽だ。
「まぁそーゆー事だから鞄も気に入った物を買うといいよ。魔法鞄にしてあげるから」
「・・・頭が痛くなってきたわ。他に隠し事は無いでしょうね?」
「このくらいで頭が痛くなるようじゃ危ないから小出しにするよ」
「・・・あるのね」
ゲンナリしているエルネをさぁ鞄だ、と連れていく。
「考えるのはやめるわ。疲れちゃった」
結局エルネは前と同じ様なポーチを買った。
「何コレ!?一体どれだけ入るの?」
【拡張】を付与した後のエルネである。
~~
翌朝、宿屋のロビー
「いや~ココに魔法鞄があると安心感が違うわね」
腰のポーチを触りながらどこか吹っ切れた様なエルネが言った。
「昨日はブツブツ言ってたのにスゴい変わり様だな?」
「私決めたの。これは貰うんじゃ無い。借りてるのよ!そして、欲しくなったらお金を貯めてコウスケから買い取るの」
自分をそう説得し、それで折り合いを付けたらしい。
「あぁ心配しないで。ちゃんと1億7500万の方も少しづつになるだろうけど返すから」
一晩考えてそうする事にしたらしい。
「まぁそれでエルネが納得するならそれでいいけど・・・俺が死ぬ前に頼むよ」
1000年掛けてとか無理である。
「分かってるわよッ!!・・・まぁでも長生きする事に越したことは・・・無いんじゃない?」
「ギリギリまで掛けるつもりじゃねぇかッ!!」
「大丈夫よ。大丈夫ッ!さぁモリモリ稼ぐわよぉ~!アッそれと返し終えるまでコウスケに着いてくから、ヨロシク」
コウスケは【奴隷・エルフのエルネ】を仲間にした。
「・・・それはまぁいいけど・・・それよりまずは弓だろ?」
コウスケも意外とすんなり受け入れた。
「そっか。忘れてた」
オイオイ。
「じゃあ行くか?」
「あの怪しい人もう来てるの?」
「さぁ?でも来てると思う」
そんなやり取りをしながら宿を出た。
「旦那、御早いですね」
「・・・お前もな」
やっぱり来ていた。
「ホントだ!来てる」
エルネは初めてなので驚いているがコウスケは二度目なのでウンザリしている。
「それで?見つかったのか?」
「へいッ!言われた条件に合う弓が二つ程見付かりやしたぜ」
「二つか?それぞれ違う店か?」
「両方とも同じ盗品屋ですぜ」
「手間が省けたな。どちらかならいいんだが」
「大丈夫!きっとどっちかだよ!これで見つかったも同然だね」
中々に気楽なエルネである。それを買い戻せば君の借金がまた増えるのだよ?分かっているのか?
返って来ないと思おう。と決め
「じゃあ案内してくれ。案内屋」
「やっと本業ですかい?まったく・・・」
案内人の後を路地へと付いて行った。




