表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/230

エルネ再び

少しして走る音が聞こえる。


(なんか前にもこんな事があった様な・・・確かあの時はこの後・・・)


バタンッ


「コウスケ様!!この奴隷紋を譲っては頂けませんか?」


(やっぱり)


職員が飛び込んで来た。


「すみませんがそれは出来ません」


即答だった。


職員は少し考えて


「・・・一度見せて頂いたのです。こちらを勝手に使う事も出来るのですよ?対価を受け取り売った方が得ではないですか?」


この職員は何も分かっていない。


「出来るならどうぞ」


この複雑怪奇な奴隷紋を一度見ただけで理解し複製するなど、それこそコウスケにしか出来ないだろう。


職員は悔しそうだった。


「それで?コレ、使ってもいいんですか?」


「・・・機能することは確認できました。構いません」


諦めた様だ。


「エルネ。こちらへ」


職員に呼ばれ近付いてくる。不思議に思っていた事があったので職員に聞く。


「エルネはなぜ一言も?」


「受け渡すまでは余計な事を話さない様言ってありますので」


「奴隷紋を入れる場所を聞きたいので話をしてもいいですか?」


「・・・奴隷の意思など確認せずとも持ち主の好きな場所に入れればいいかと思いますが」


職員は少し不満気だ。


奴隷紋は奴隷を魔法的に縛る効果を持つ魔方陣であると共に、その人物が奴隷である証しでもあるのだ。


「奴隷紋って奴隷で無くなった後も消えない物なんでしょう?変な所に入れたら後で困るでしょう?」


奴隷紋は消えないのである。奴隷でなくなった後も消えない奴隷紋のせいで蔑まれる人が多く、結果再び奴隷に戻される事がある、と案内人から聞いていたのである。


「・・・まさか奴隷紋をこの様な形にしたのは・・・」


「あぁ。どんなに隠しても見付かる時は見付かる。なら見られても奴隷紋だと分からなければいい。」


「譲って頂けない理由も?」


「あぁ。コレをアンタ達に売って、コレが奴隷紋だと広まるのは困るんだよ」


奴隷である事を隠すと言っているも同然である。それはつまり奴隷扱いしない、周りにも奴隷扱いさせないと言う事だ。


職員はエルネが買われたのでは無く、助け出されたのだと気付いた様だ。


「・・・エルネ、話して構わない」


職員が許可を出した。


「コウスケ、ありがとう」


「別にいいよ。それよりさっさと済ましてここを出よう。・・・コレなんだけど何処に入れる?」


そう言って奴隷紋を見せる。


「見れば見る程奴隷紋に見えないわね。・・・むしろカワイイ?これなら堂々と肩に入れたいくらいだわ」


エルネは奴隷紋が気に入った様だ。・・・文字にするとヤバイな。


「じゃあ肩に入れるぞ」


そう言うとエルネは左腕の袖を肩まで捲り上げた。奴隷紋の書かれた紙を押し当て魔力を流す。


「うっ!」


一瞬苦しそうな声を出したがすぐに収まった。


「これで受け渡しは終わりです。連れて帰っても結構ですよ」


職員の言葉に目礼だけ返し、エルネを連れてオークション会場を後にした。



~~



とりあえずエルネの為に宿をもう一部屋借りるため宿屋に向かっている。


「コウスケ、本当にありがとう。一生懸けても返せない恩が出来たわ」


「エルフの一生を懸けても返せない恩なんてあるのか?」


1000年掛かる恩返しなど最早呪いである。


「言葉の綾でしょ。それくらい感謝してるって事よ」


「ヘイヘイ・・・それよりエルネ。武器はどうした?確か細剣と大層な弓背負ってなかった?」


軽口を叩いていたエルネの顔が曇る。


「・・・わたしを拐ったヤツに取られちゃった。細剣の方は別にいいの、良い物だったけどまた手に入らない訳じゃない。問題は弓の方。あの弓はエルフがこの世界で最初に生まれた場所にあると言われている世界樹の枝で作られた貴重品なの。無くしたなんてバレたら怒られちゃう」


(怒られるだけなんだ?)


「そもそも何で捕まったの?エルネ大分強いよね?」


「付けられている事は分かっていたの。でも、大した実力じゃなかったから例え襲われても大丈夫だって油断しちゃったの。まさか全く関係無い村人に痺れ薬を盛らせるとは思わなかったのよ」


「知らない人に貰った物を食べちゃダメだよ?わかった?」


「分かってるわよ!子供に教えるみたいに言わないでッ」


「ハイハイ。大きい声はやめようねぇ~・・・とりあえずの問題は弓だな」


「もうッ‼・・・ハァ・・・何か当てがあるの?」


「その拐ったヤツがエルネをここまで連れてきた?」


「そうよ」


「その時弓は?」


「ソイツが背負ってたわ」


「なるほど・・・」


「何よ?教えてよ」


「この街ほど物を売るのに適した街は無い、何たって商業都市だからね」


「この街で売ったって事?でも盗品を扱ってる店も人もきっと隠れてやってるわよ?見付けられるかな?」


「大丈夫。当てがある。おっ丁度いいな」


丁度宿屋に着いた。


「とりあえずもう一部屋取ってくるよ。待ってて」


「何から何までありがとう」


「いいよ。どうせ金なんか持ってないだろ?・・・〈そんなで旅なんてできるの?〉」


いつか言われた台詞を強調して言った。エルネも気付いた様で


「分かった!分かったから、もう揶揄わないでッ」


顔を真っ赤にして騒いでいる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ