奴隷オークション
オークションが始まって、しばらくボォ~と眺めていた。いろんな奴隷が紹介され、落札されていく。
「・・・これ、エルフが出るのいつになるんだ?」
「今日の目玉ですから最後でさぁ」
案内人はそこまで調べていたようだ。
「夜までかかるとか?」
「そこまでじゃありませんぜ。一時間ってとこでさ」
「安心したよ」
それから一時間後・・・
「それでは本日最後の商品にして本日の目玉商品のご紹介です」
壇上の司会者が興奮気味に叫んだ。
「・・・いよいよか」
「こちらは人間にして19歳のエルフ。性別は女。細剣、弓の腕も去る事ながら魔法を3属性も操る護衛としては破格の商品です。勿論、それ以外に使うも自由です。かなりの高額となる事が予想されますので開始価格も1億ギルからとさせていただきます。それでは・・・入札開始!」
司会者が説明をした後入札を開始した。
「1億と500」
「1億1000」
「1億2000」
「1億2500」
順調に値が上がっていく。
「さて、幾らから入るべきか?」
「1億5000位まで一気に上げてみて様子見するってのはどうでさ?」
「なるほど・・・1億5000!」
そう声を上げると少しザワついた。
「2500万も一気に上げたぞ」
「大丈夫か?アイツ、払えんのか?」
等とコソコソ話しているヤツらもいる。
少しして会場が静まり、司会者の
「1億5000!・・・他にありませんか?」
の声に少しして
「1億5100!!」
誰かが叫んだ。
(小さく刻んで来たな。・・・もうソロソロ無理って証だな。さっさと決めよう)
「1億7500」
そう声を上げた。どこからか歯軋りの様な音が聞こえ、静かになった。
「1億7500!他にありませんか?・・・ありませんか?・・・落札!1億7500で落札です」
司会者がコウスケの方を手で示し、そう叫んだ。
「無事に競り落とせやしたね」
「あぁ、しかもドルマンを帰らせた事で無駄な金を使わずに済んだ」
「それじゃあ、あっしの仕事はここまでと言う事で」
「そうだな。・・・約束の報酬だ」
そう言って案内人に金を渡した。2万の約束だったが5万渡した。
「・・・旦那、少し多い様ですぜ」
「お前には案内人以外の仕事もさせたからな。正当な対価だ。取っとけ」
「・・・次回もご贔屓に」
そう言ってニヤリと笑い去って行った。
(さて迎えに行きますかね)
支払い所へと向かって歩き出した。その瞬間、前を阻むように男が立ち塞がった。目がかなり血走っている。
「??・・・通してもらえますか?」
嫌な予感がするが一応聞いてみた。
「・・・お前さえ居なければ」
「えっ?」
「お前さえ居なければ俺がエルフを買えていたんだ!!」
オークションでコウスケに競り負けた男だろう。歯軋りの正体だ。
コウスケが居なければドルマンは帰らなかっただろう。そうなれば落札していたのはドルマンだ。
どちらにしろ、この男が競り落とす事は無かったのである。しかしそんな事は言わない。言う隙が無かった。
男がナイフを取り出し飛び掛かって来たからだ。
咄嗟にナイフと自分の間に左腕を滑り込ませる。
ガキンッ
(ナイス手甲ゥゥゥ!!ナイスオレェェェl!刃物恐ェェェ!!)
恐怖で心の声がおかしくなりながらも、無意識に右腕を振り抜いていた。
チッ
拳は男の顎を撫でるように掠った。外したかと焦ったその時、男は膝から崩れ落ちた。
ドサッ
(・・・格闘マスタリー恐ッ)
威力が高かったのか掠っただけで脳を揺らされたようだ。
(コレ・・・どうしよ?)
倒れている男を見下ろしながら考える。
(死んで無いし大丈夫だよな)
周りでオロオロしながら見ていた人達に会場の警備を呼ぶよう頼んでから、男を放置して支払い所に急いだ。
~~
「1億7500万ギル、確かに」
数え終わった支払い所の職員がそう言った。
「それではご購入された商品をお持ち致しますのでこちらの部屋でお待ち下さい」
案内された部屋に入り、中にあったソファーに腰を下ろす。
柔らかいな、等と思っている内にエルネが連れて来られた。
「こちらが今日からお前の主人になるコウスケ様だ。コウスケ様、こちらが今回ご購入された奴隷のエルネです」
一緒に入って来た男がコウスケ、エルネ両方に紹介する。
「・・・あっはい」
慣れてないコウスケは少し挙動不審である。エルネは黙ったままだ。
「それではコウスケ様、エルネに奴隷紋を」
そう言って一枚の紙を差し出して来た。
受け取って見てみるとそこには魔方陣が描かれていた。コウスケにはどんな効果の魔方陣なのかがすぐに分かった。
しかし、コウスケの目には雑で、効率が悪く、出来の悪い魔方陣に見えた。
ある意味魔方陣を極めていると言っていいコウスケがその不完全さに使うのが怖いと思う程に。
「・・・こんな出来の悪い魔方陣を使うんですか?」
少し嫌な顔をした職員だが
「これが奴隷に使う一般的な奴隷紋ですが」
「自分で作ったりしたらダメですかね?」
「魔方陣学者か何かなので?」
「・・・まぁそんなトコです」
「こちらで機能すると確認出来れば構いませんが・・・出来上がるまでの間は奴隷をお渡し出来ませんし、預かっておく為の代金は頂きますよ?」
「あぁ大丈夫です。今チャチャっと作りますから」
そう言って奴隷紋の書いてあった紙を裏返し真っ白な面にサラサラと書き始めた。
(えーと・・・ここは無駄だな。ここは・・・こっちに繋げた方がいいな。・・・ここは書き直した方が早いな)
そんな調子で裏の奴隷紋の気になる所を直していく。見ていた職員とエルネは目を剥いている。
(・・・よし、こんなモンかな?)
出来上がった奴隷紋は最早、魔方陣にすら見えなかった。まるで蝶が羽を広げた絵のように、どちらかと言えばタトゥーの様である。
「これでお願いします」
「・・・これが奴隷紋ですか?」
「調べてみればわかりますよ」
「・・・わかりました。少々お待ち下さい」
職員は出て行った。




