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一石二鳥

「それで?お主の話とはなんだ?」


ガレオ・ドルマンが泊まる宿で商人だと名乗り、話があると伝えると簡単に通された。


「はい。実はコレを買っていただきたいのです」


そう言って出したのは使い勝手の悪そうな手提げ鞄だった。


「・・・ただの鞄じゃ無いだろうな?そうなら要らんぞ」


「勿論です。見た目はアレですが魔法鞄です。しかも大容量の」


もちろんコウスケが作った物だ。わざわざ使い勝手が悪そうな汚い鞄を選んで作ったのだ。


しかも、大容量と言ったがコウスケが使っている物の半分もない。


「・・・ほう。どのくらいだ?」


「現在、公表されていて存在が確認されているどの魔法鞄よりも、です」


案内人に調べさせたので間違いは無いはずである。


「世界一と言うことか?信じられんな」


「調べていただいても結構ですよ」


「・・・そうか。おいっ、爺ッ」


ガレオは執事の様な人物を呼んだ。


「この鞄の容量を調べて公表されている魔法鞄の容量と比べてくれ」


「畏まりました」


執事は鞄を持って下がって行った。


「疑い深い性格なものでな」


「いえ。商人なら当然かと」


「しかしお主の話が本当ならとんでもないお宝だぞ?手放してよいのか?」


「私は駆け出しの商人でして、先日やっとの思いで丁度いい容量の魔法鞄を買ったのです。その後でアレが手に入りまして」


「これからの商売の元手に売ってしまおうと?」


「その通りです。私が持っていてもあの容量は使いきれませんから」


「アレが本物ならこの街に来て正解だったな。掘り出し物の二つ目だ」


「もしやガレオ様はエルフを?」


知っているが白々しく聞いてみる。


「流石にお主の様な駆け出しの耳にも入っているか?そうだエルフだ」


(少し探っとくか?)


「しかし、今回のエルフは滅多に出ないほど条件が良く、2億程まで行くんじゃ無いかとの噂ですが?」


「問題は無い。余裕を持って5億程持ってきたのだ。お主の鞄を2億で買おうとも十分競り落とせる」


ガハガハと笑っているが


(2億を俺に渡すと競り落とせなくなるぞ)


と内心ほくそ笑む。そこにトントンとノックの音。


「入れ」


ガレオが短く告げると鞄を持った執事が入って来た。何やらガレオに耳打ちし鞄を置いて出て行った。


「確認が取れた。確かにお主の言った通りだ。しかし、すごいな。どこで手に入れた?」


「申し訳ありません。それは言えないのです」


「・・・確かに。仕入れのルートは商人の命だ。不躾な事を聞いた」


「いえ。ありがとうございます」


「・・・して、値段だが・・・相応の値段で買い取りたいがいくら欲しい?」


(言い値で買ってくれたら有り難いが)


「・・・先程、お話に出たので2億でいかがでしょう?」


(どうだ?買え!買え!)


「・・・フム・・・2億か?まぁ世界一の容量となれば高くは無いか?エルフの方も問題は無いな。・・・分かった。2億で買い取ろう」


(掛かった。これで一安心かな?)


出された2億ギルを背中の魔法鞄に詰め、ギリギリだと演技をしてから宿に帰って来た。


「どうでした?旦那」


宿の前まで来ると何処からともなく案内人が現れた。


(どこから湧いてんだコイツ?)


「・・・上手く行ったさ。これで安心できる」


「しかしあんなすごい物何処から調達してきたんで?」


「優秀なんだろ?自分で調べろ」


「これは手厳しい」


そんな軽口を叩きながら案内人と別れ宿に入った。


部屋では明日のオークションの事をタバコを吸いながら考えていた。


「フゥ~~~」


(競り落とすにしてもなるべく安く済む方法は無いかなぁ?)


「フゥ~~~」


(・・・問題はドルマンだよな?確実に3億までは競って来るし。ドルマン帰ってくんねぇかな?)


「フゥ~~~」


(・・・無理だろうなぁ)


グリグリ、火を消した所で


(・・・!ドルマンがちゃんと商人ならもしかしたら・・・行けるか?)


何か思い付いた様だ。



~~



昼過ぎにオークション会場に入った。早速ドルマンを探す。


(・・・おっ居た居た)


それとなく前を通り過ぎる。


「お主は昨日の・・・コウスケだったか?」


案の定話掛けてきた。


「これはドルマン様。昨日はありがとうございました。」


「今日はどうした?お主も何か目当てがあるのか?」


(フッフッフッ。聞いて驚け)


「はい。持ち合わせが出来たので護衛にエルフでも、と」


ドルマンの表情が一気に曇る。


「・・・2億程度ではワシには競り勝てんぞ」


「分かっております。しかし私は元々2億5000程用意していましたので」


ドルマンの表情が一層険しくなった。


「・・・初めからエルフが狙いだったか」


「・・・」


何も答えず、ニヤリと笑う。


「・・・フッ。何が駆け出しだ?いっぱしの目をしおって・・・爺ッ!帰るぞ。エルフは落とせん」


「畏まりました」


ドルマンと執事は会場から出て行った。


(緊張したぁ~・・・もう2億準備しに行った訳じゃ無いよな?)


ヒヤヒヤしながらドルマンが戻って来ないかキョロキョロするコウスケ。しかし、ドルマンが戻って来ることはなかった。


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