的中
噂のエルフはやはりエルネだった。
「・・・こんなトコで何やってんだ?」
小声で話しかける。
「ッッ!?・・・誰?」
急に話掛けられ驚くが周りを見渡した後、誰かが居る気配を感じたのかそう聞いた。
「次会ったらまた酒でも飲もうって約束忘れたのか?」
「・・・コウスケ?コウスケなの?」
「久しぶり・・・って程でもないか?」
「そんな事よりどうしてこんな所に?」
「そりゃこっちの台詞だよ。この街に入った途端エルフがオークションに出るって噂を聞いてエルネじゃ無い事を確かめに来たんだよ」
「・・・残念ながらそのエルフは私よ」
「あぁ今見てるから知ってる。何で逃げないんだ?エルネなら簡単に逃げられるだろ?」
「これのせいよ」
そう言って首輪を指差した。
「この首輪は魔封鉱っていう金属で出来ているの」
「魔封鉱?知らないな」
「触れた物の魔力を乱してしまう金属よ。こんな風に人に使えば魔法を使えなく出来るの。魔法さえ使えれば私だって逃げてるわ。もう諦めてるのよ」
「・・・それでいいの?」
「いいわけ無いじゃない。でももうどうする事も出来ない。この首輪が有る限り逃げられないし、売られた後は奴隷紋で縛られる。手詰まりよ」
奴隷は売られる前は鎖や首輪で捕らえておくが、売った後は動けなかったり魔法が使えないと困る場合があるので奴隷紋という魔方陣魔法の一種で逆らえないように縛るのである。
「・・・助けようか?」
「ッッ!?出来るのッ?」
「まぁ今すぐは無理だよ。ここでやらかしたらオレも捕まりそうだし」
「・・・じゃあどうやって?」
「まだ確実じゃ無いけど計画通りに行けばね。・・・ただその場合ひとつ問題が・・・」
「問題って何?助かるなら、また旅に出れるなら何だってするわ」
「・・・・・・エルネがオレの奴隷になってしまう」
自分で言ってて罪悪感が半端ない。
「・・・え?今何て?」
「・・・エルネがオレの奴隷になってしまう」
二度も言わされた。
「・・・・・・わかったわ。それでいいわ」
じっくりと考えてそう答えた。
「うわぁ・・・乗っちゃうんだ?」
「助かるなら当然よ。捕まったのは私のミスだし。・・・それにコウスケなら奴隷を酷い扱いはしなさそうだし」
「・・・じゃあやってみますかね」
「ありがとう。待ってるね」
「おう。待ってろ。じゃあ行くわ」
そう言って別れ、倉庫を出た。
近くの建物の影で待っている案内人の隣まで来ると、石ころを鞄に戻す。
途端に消えていた姿が見える様になった。油断していた案内人が
「オワッ!?・・・旦那脅かさないでくだせぇ」
「エルフを競り落とすのにいくらいる?」
「ハァ?」
「だから今回のエルフを競り落とすにはいくら必要なんだ?」
「買うんですかい?ってこたぁお知り合いだったんで?」
「あぁ。知り合いだった。助ける為にいくら要るか教えてくれ」
「・・・普通の奴隷でも1000万~2000万、今回はエルフで若い女で魔法の腕も確か。1億5000~2億って言われてますぜ。旦那、そんな持ってる様には見えませんぜ」
「2億5000あれば確実か?」
色々使ったが3億は殆ど減ってない。2億5000万使った所で5000万近く残るのである。
「・・・まぁそれだけありゃ競り落とせるでしょうけど・・・あるんですかい?」
「・・・ある」
案内人は目を見開いていた。
その後はオークションまでする事も無いので当初の予定通り街を案内してもらう。
自分から売り込んで来ただけあって案内人は本当にこの街に詳しかった。
各ジャンルの人気店は勿論。知る人ぞ知る名店、違法スレスレの迷店まで。
途中オークション会場を下見して、宿に戻った。
宿に戻る途中でいなくなった案内人が宿の前で戻ってきた。
「宿はすぐそこだ。もう帰ってもよかったんだぞ」
「いやなに、少し気になる情報が入ったんで確認に言ってたんでさ」
「気になる情報?」
「何でもかなり有名な豪商がこの街に入ったと。噂じゃエルフ狙いらしいですぜ」
「・・・それはマズイのか?」
「ガレオ・ドルマンてぇ商人で、価値ある物ならどんな地位の人からも、どんな値段でも買い取るって話でさぁ。懐的には旦那と同じ位出してもおかしくない人物だそうですぜ」
「それはマズイな・・・さてどうするか?・・・まぁこっちで何とかしてみる。情報助かったよ」
「それじゃあっしはこれで」
そう言って路地に消えて行った。
(価値ある物なら何でも、誰からでも、いくらでも、か?やってみるか?)
何やら考えながら宿に入って行った。
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翌日、コウスケはガレオ・ドルマンの前に座っていた。




