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商業都市ビーサス

数日移動し、次の小さな村を経て、また数日移動。道中、何度か魔物に襲われはしたが護衛の冒険者達がしっかりと仕事をしてくれた。


「いいかッ!!馬車を死守しろッ!!アレにはコウスケさんが乗ってんだッ!!うまい飯が食いたきゃ死ぬ気で守れッッ!!」


図らずも餌付けが効いたようで気合いの入り方が違った。あの後も何度か夜だけ振る舞ったのだ。


そして、最終日。その頃になると護衛の冒険者や商人達ともそれなりに打ち解けていた。


「ほらコウスケ君、見えてきたよ。あれがビーサスだよ」


隣に座っていた商人が前方を覗き込み言った。コウスケも見る。


「すごい城門ですね!首都と変わらないんじゃないですか?」


「そりゃそうだろ。この大陸の商業の中心だからな。広さは首都と変わらないさ」


顔を出した時に隣を歩いていた冒険者が言った。


「しかし、こちらは王城が無いですから、その分街としては広いと言えるかもしれませんね」


一緒に顔を出していた商人が補足した。


「王城もかなり広れぇからな、そりゃそうか」


冒険者の言葉に納得した。


「皆さんッ、そろそろ街に入る準備をしておいてください」


御者が前からそう声を掛けると皆、自分の荷物を確認し身に付け始めた。


コウスケは鞄を背に、マントを手に持つ位である。



数分後、一行は城門に続く列に並んでいた。


「すごい列ですね?」


「コウスケさんはビーサスは初めてですか?いつもこのくらいですよ」


「毎日こんなに並んでいるんですかッ!?」


「そうですね。今日はまだ少ない方かもしれませんね。それに城門は四方にあるので他の門にもこの位は並んでいるのではないでしょうか?」


「この四倍!?すごい・・・」


人の量を想像して呆けていると


「コウスケさん!オレ達の番です」


冒険者に言われ我にかえる。門番がもう目の前だった。


「よしッ!次ッ!」


あの頃のオレでは無いのだ、と胸を張り商業ギルドのカード掲げた。


門番はギルドカードに少し顔を近づけ内容を読み取り問題が無いと判断したのか


「よしッ!次ッ!」


そう言った。漸くこの世界に馴染めたような気がして感動するコウスケであった。


無事に街に入り、城門近くの広場で解散する。


「コウスケ君、この街は商人として学ぶ事が多い。頑張りなさい」


一緒だった商人達が駆け出し商人のコウスケにエールを送り去っていく。


「コウスケさんッ!飯マジうまかったです。教えてもらったレシピもやってみます」


冒険者達は胃袋を掴まれていた様で、口々にお礼を言い去っていった。


「・・・さて、みんな行っちゃったしオレも行きます」


独り言では無い。残った御者への挨拶だ。


(・・・まずはやっぱ宿だな)


キョロキョロしながら歩き出す。田舎者丸出しだろう。


さすがに商業都市と言うだけあって、店の数が半端では無い。その種類も多岐に渡り、大陸中の物が集まると言うのも頷ける。


いろんな店に目移りしつつも宿を探していると


「旦那、街案内なんて如何ですかい?」


路地から揉み手をした小男が現れた。怪しさ満点である。あまりの怪しさに直ぐ様【鑑定眼】を使ったが犯罪者でもなければ、実力者でもなかった。


なにせ説明文の最後に「ごますり案内人」とあるくらいだ。本当にただの案内人なのだろう。


害は無いと言ってもこう言う輩には下手に出ない方がいいと思い、意識的に敬語をやめる。


「案内なんて必要な街なのか?」


先程の田舎者丸出しの雰囲気が一変した事に少し顔を引き吊らせながら


「・・・へへッ、まぁ場所によっては」


「例えば?」


「この街には綺麗な商売だけじゃありませんからねぇ。盗品やら奴隷やらを扱う人間も居る。そんな所は案内が必要ですぜ」


「・・・盗品、奴隷か・・・どっちも興味は無いな」


さすがにどちらも気が引けて関わり合いになりたく無い。


「・・・噂を聞いてこの時期に来た訳じゃないんですかい?」


「・・・噂?」


「知らないんですかい?・・・何でも奴隷オークションに若いエルフが出るって噂が流れてましてね。数日前から人が集まって来てますぜ」


(・・・おいおいッ!たしか人拐いに狙われてなかったっけ?いや、チート並みに強いはずだし・・・でも・・・)


迷ったが確認しておくに越した事はない。


「・・・いつだ?」


「ハイ?」


「オークションはいつだ?」


「あぁ・・・出ると噂されているのは三日後のやつですぜ。・・・興味が御有りで?」


「・・・良心的な宿、明日一日の案内、三日後のオークションの案内。これでいくらだ?」


「・・・宿の情報に二日間の案内、それにオークションの情報・・・一万ですかね?」


「後払いで二万やる。そのエルフの情報と居場所を調べてくれ」


「旦那太っ腹ですね。でもエルフを競り落とすには相当必要ですぜ?」


「ただの確認だ。やるのか?やらないのか?」


「やりますッ!もちろんやります」


宿の情報を教え、明日宿の前で待っていると言い残し、案内人は元の路地に消えて言った。


教えられた宿に向かいながら


(・・・厄介事の予感が・・・)


等と考えながら宿を取り、部屋に入った。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 簡潔で読みやすい小説でした
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