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装備を揃える

宿泊を延長してしまってから6日目、今日も噴水のある広場で座っている。行き交う人々を観察しながらタバコを吸う。


(フゥーーー・・・皆忙しそうでいいな。あのおばあさんは散歩かな?おっ子供が元気に遊んでる。あっちの奥さんは買い物だな)


人間観察だ。もう末期なのだろう。


(あのおっさんは・・・何やってんのかわかんねぇな。うぉッ!あの冒険者ガチガチに装備固めて、何と戦う気だよ。スパスパグリグリ・・・フゥーーー・・・装備?・・・装備‼)


フード付きマントがあるとは言え、自分が装備品の類いを揃えていない事に気づいた。まぁ武器は必要無いので主に防具だが。


(人間観察なんかしてる場合じゃねぇ。明日出発じゃねぇか‼オレとしたことが、装備を疎かにすることがどれ程危険か「龍のクエスト」や「最後のファンタジー」でいやと言うほど教わったのに・・・揃えねばッ‼)


それはゲームの話である。まぁ間違いでは無いが。


そうと決まればまずは何を装備し、何を装備しないか決めなければならない。この世界はゲームでは無いのだ。装備箇所や、装備出来る種類は決まっていない。


(メインは格闘と魔法だから武器はいいか?)


そもそもまともに使えないだろう。


(なら防具は・・・格闘の邪魔にならない物、動きやすい物がいいだろうしガチな鎧は・・・無いな。)


戦闘になった事を想像し、何が必要かを考える。そして、気づく。


(まてよ・・・オレは避けられない攻撃の場合どう受ければいい?)


武器がある場合はその武器で受ければいい。武器を武器で受けたり、弾いたり、押し合えばいい。


だが、こちらが格闘、相手が武器。魔物は爪、角、牙等であった場合は?無論、手か足になるだろう。


想像してみて欲しい。侍が振るった刀を腕を出して受けようとする様を。


(唯一の武器が無くなるじゃねぇかッ)


腕は切り飛ばされるだろう。そうなれば残った腕と二本の足しか使えない。4度受ければ終わりである。


(手甲と脛当ての二つは決まりだな。後は胸当て、膝当てくらいでいいだろ)


その二つがあれば受ける事は出来る様になるだろう。


早速、この街で一番大きな武器防具両方を扱う店に買いに走った。



~~



店員のいるカウンターに、ガチャンっと両腕に抱えていた手甲以外を置いた。


「胸当てが1つに、膝当てが1セット、脛当ても1セットっスね?毎度あり」


手甲がなかったのだ。


「すいません。手甲って無いんですか?」


「手甲?手甲なら向こうの武器売り場っスよ」


(武器?なぜそっちに?)


背中の魔法鞄に買った物を入れ武器売り場に向かった。


(なるほど。確かに武器だ)


並べられた手甲の数々を見てそう思う。どれもが指先までおおわれるタイプで、拳の部分は鋲付きや厚みを出した物など武器としての工夫が施された物ばかりだった。


(違うんだよなぁ、手の甲から肘の手前くらいまででいいんだよなぁ)


聞いてみたが無いそうだ。


(これは自分で作るしかないか?)


自作する事に決め、素材は何がいいかな?等と考えながら店を出ようと歩いていると「試し切りはこちらで」と書かれた扉を見つけた。


気になったので扉に付いている小窓から中を覗いた。そこには藁で出来た人型に金属製の鎧を着せた物が並んでいた。


(巻き藁とかじゃ無いのか?あんなの着てたら切れるわけないじゃん)


一番手前で冒険者らしき女性が試し切りをするところだった。扉越しで音は聞こえなかったが女性が振り抜いた後、人型と鎧は斜めにズレる様に落ちた。


(オイオイッ!この世界にはあんなのがゴロゴロいんのか?・・・防具意味あるかな?)


一瞬思ったが、もっと硬い金属なら切れないだろうと考え直し店を出た。


さてどうするか。硬い金属と言っても全く見当がつかない。こう言う時に相談する相手は一人しかいない。




「おっちゃ~ん‼」


「・・・今度はなんだぁ?」


一通り説明した。


「硬い金属。切れない防具。ねぇ・・・鍛冶屋でも冒険者でもねぇオレには分かんねぇな。」


当てがハズれた。


「・・・高ランクの剣を得物にしてる冒険者に聞くってぇのはダメなのか?」


「・・・?ドユコト?」


「あなたが切れない金属は何ですか?ってな。冗談だがな‼」


ガハガハ笑うおっちゃん。


「それは・・・アリだな」


「えっ?冗だ「おっちゃん!ありがと」・・・知ぃらねぇっと」


おっちゃんの冗談だったとも知らずに真に受け、冒険者ギルドに走ったのだ。



「おばちゃん‼今このギルドにいる一番高ランクの冒険者を教えて‼」


「あぁコウスケかい?そんなに慌てて」


「いいから教えて」


「・・・高ランクねぇ?・・・」


ギルドを見渡すおばちゃん。


「・・・酒場に一人で座ってる娘が居るだろう?今居る中ではあの娘が一番ランクが高いよ。AAランクだよ」


「AAランク!?剣は?・・・持ってるな。よしっ」


意を決して近づいて行く。そして、隣に立ち


「あなたがAAランクの冒険者の方ですか?」


声を掛けた。と同時にまわりが僅かにザワついた。


「アイツ、イーナに話掛けたぞ。」

「命知らずだな。」

「ありゃバラバラだな」

「いや細切れだな」


コウスケには聞こえない。


「・・・そうだけど。君は?」


「オレはコウスケ。Eランク冒険者です」


「・・・そう。私はイーナ。それで何の用?」


「実は聞きたい事があります」


「・・・何?」


「あなたは鉄製の防具を切る事が出来ますか?」


「・・・出来る」


「ならあなたが切れないものは何ですか?」


「・・・それを聞いてどうするつもり?」


僅かに目が険しくなった。


「新しく防具を作ろうと思って、どうせ作るなら簡単に切られない様ないい物をと」


「・・・当たらなければ問題無い」


「それはそうなんですが・・・それじゃ困るというか」


「・・・受ける為の防具」


「そうなんです。だから簡単には切られない素材を探していて」


「・・・私よりランクの高い冒険者」


「はい?」


「・・・皆防具に防御系の付与魔法」


「ッ‼ありがとうございました。参考になりました」


「・・・うん」


(そうだよッ。付与魔法だよ。マントで既にやってんじゃん。)


イーナは既にこちらへの興味を無くしたのか、目の前の食事に集中していた。そんなイーナに軽く一礼するとギルドを後にした。


余談だが、コウスケとイーナが普通に会話している光景を見ていた回りは終始驚いていた。


その後、日付が変わる頃まで部屋に籠り、買ってきた防具と作った手甲に付与魔法をかける作業を続けた。


出来上がった物が破壊不能物質になった事などコウスケは知らず、満足そうな顔で眠りについた。


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