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ひまつぶし

観光は済ませた。王城も見たし、貴族街も眺めたし、街中もブラついた。


お金は使いきれないほどあるので働く必要は無い。


宿の事があるのでこの街からはまだ出られない。元貧乏のせいか払ったお金に目を背け宿を引き払う事などできない。


つまり、ヒマである。


街の中央にある広場の噴水の前、石で出来たベンチでタバコを吸っていた。


「フゥーーー・・・はぁ・・・」


「昼間っから何やってんだ?ため息までついて、辛気くせぇ‼」


上から声が降ってきた。顔を上げると


「・・・おっちゃん」


「なんてツラしてんだ!女にでもフラれたか?」


「やる事が無くてヒマなんだ」


「旅はどうした?」


「宿に一週間分払って、あと5日残ってるから」


「引き払うのは・・・もったいねぇか。じゃあ金でも稼いで来ればいいじゃねぇか」


「使いきれないほど、もう稼いだ」


「じゃあ、観「した」こ、う・・・そうか」


「まぁ、なんだ。がんばれっ」


「・・・」


「そうだオメェ、ギルドには行ったんだろ?どっちにしたんだ?」


「両方だよ」


「両方って、冒険者と商業両方か?」


「うん」


「冒険者も物作りもそんな甘かぁねぇぞ?」


「わかってる。物作りがメインだよ。素材集めに冒険者は便利だから」


「ってかオメェ、生産系のスキル持ってたのか?」


もう、このおっちゃんにならある程度の事を言ってもいいと思った。


魔法鞄からマントを取り出し、おっちゃんに渡す。


おっちゃんは鑑定系のスキルは無いが商人だし見る目はある。所謂、目利きというやつだ。


「マントか・・・あぁ?なんだこりゃ、魔法陣・・・か?」


背中の内側にある魔法陣を見つけ驚く。


暫し無言で観察し


「オメェがやったのか?」


「魔力を通し易い糸でね。そりゃあ大変だった」


「オメェ魔法陣使えんのか?」


「まぁね」


「ちゃんと動くのか?これ」


「もちろん。羽織ってみれば?」


「?・・・ホントに動いてんのか?何も起きねぇぞ」


「暑い時は涼しく、寒い時は暖かくする魔法陣だよ。今はちょうどいい気温だから、わかりにくいけど」


「これをギルドに売ってんのか?」


「まさか。これ作るの面倒なんだよ」


「人に作らせりゃいいじゃねぇか」


「無理無理」


「どうしてだ」


「これを作るには魔法陣に詳しい人が必要だろ?」


「そりゃそうだ。でも探しゃいくらでも居るだろ?」


「そして、裁縫が得意な人も要る」


「それも当然だな。二人居りゃ出来るじゃねぇか」


「一人じゃないとダメなんだ」


「??・・・とんちか?」


「魔法陣に詳しく、裁縫も得意な人を探さなきゃならない」


「両方できるヤツか・・・まぁいねぇわな」


「魔力が通ってるか確認しながら縫わなきゃダメなんだ」


「そりゃ量産は無理だわな」


「自分用に作ってはみたけど正直もう二度とやりたくないね」


「・・・この魔法陣ってヤツは常に動いてんのか?」


「羽織ってる間はその人の魔力を使って発動し続けるけど、脱ぐと止まるよ」


おっちゃんは脱いだマントを見つめている。


「・・・なぁこのマント他になんか付いてねぇか?俺には魔法とか魔力とかちんぷんかんぷんだが、このモヤモヤッと感じるのがそうなんだろ?でも今は羽織ってねぇのに感じるぜ?」


鑑定系のスキルが無いのにそれを見抜くこのおっちゃんはいったい何者なのだろうか?目利きなんてレベルじゃない。あぁそうだった。・・・あんたが神か!?


「付与魔法だよ。物理的、魔法的攻撃をある程度防いでくれる防御魔法を付与してある」


「そんなモンまで使えんのか?・・・オメェ規格外だな」


「これもそうだよ」


「・・・そりゃぁウチで買ってったカバンじゃねぇか?」


「ほら」


中から荷物を沢山取り出す。


「ッ‼・・・魔法鞄になってやがる」


「これが付与魔法だよ」


「とんでもねぇなオメェは‼」


この後、おっちゃんとこんな道具があったらいい、こんな機能を付けてみたい、こんなの便利じゃねぇか、等と陽が傾くまで意見を出し合った。


おっちゃんと別れ、宿に戻ってきた。ベッドに寝転がり


(おっちゃんに話してよかったな。面白い物も作れそうなアイディアも沢山思い付いたしな)


街を出る事を考え、この街に来てからの数日間を振り返ってみた。


(・・・ッ!!ちょっと待て、おっちゃんとばっかり仲良くなってんじゃねーか!?・・・まさかッ。おっちゃんがヒロイン?・・・だと?無理無理それだけは無理)


ヒマだと言う恐怖が続くと人は頭がおかしくなるのだろうか・・・


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