5話 勇気と信頼
ラレアは隠れろというが、動けない少女と真世がいた場所はちょうど自衛団員が向かっていた方向に居た。隠れていてもどうせ見つかったのだが、それを言うと少女の場所がほぼ明らかになってしまう。真世は、自衛団員の気を引くために、目立つ逃げ方をしつつ煽ることにした。
「見つけても捕まえられなくちゃ意味ないよっ!」
「このガキ・・・!貴様も捕まえて商品にしてやる!」
月明かりが照らすとはいえ、深夜の森の中は視界がとてつもなく暗い。音を頼りに追跡してくる自衛団員を、真世はうまく少女から離していたが・・・
「あいでっ」
真世は足元の木の根っこに足を取られ、転んでしまったのである。当然、自衛団員に追いつかれてしまい。首根っこを掴まれる。
「やっと捕まえたぞガキ・・・さっきのチビほどじゃねえがまあまあの値段になりそうだから顔には傷つけないでおいてやるよ・・!」
そう言って警棒のようなものを取り出し、大きく振りかぶる。その腕は、振り下ろされることはなかった。
「今から全身に満遍なくケガすんのはお前だけどさ、なんか言いたいことあるか?」
自衛団員の後ろから追いかけてきていたラレアが、後ろからその腕をつかんでいる。
「くっ、コイツ、離せ!なんて腕力だ!」
「それが遺言にならねえよう祈るだけ祈っておいた方がいいぜ?オラァ!」
彼女は自衛団員を自分のほうに振り向かせ、腕に装備された装甲で側頭部を強烈に殴打した。男は、一撃で気を失いその場に倒れた。
「チッ、情けねえ野郎だな」
「ラレアちゃん!また助けられたね!」
「なんでピンチになるたび笑ってるんだお前は・・・」
「ピンチを脱出したから笑えるのさ!」
胸を張る真世に呆れてラレアはため息をついた。
「ま、トラウマみたいになるよかマシか。ところで、さっきのガキどこにいった?」
「ええっと、私どっちから来たっけ・・・?」
「おいおい」
「・・・私なら、ここに居ます」
ボロきれを被った少女が、真世達の近くの木の後ろからふっと顔を出す。
「あ、よかったー!無事で本当に良かったよ!ええっと・・・」
「・・・ラウ」
「え?」
「私は、ラウ・ハイジュと言います」
「ラウちゃんって言うんだね!よろしくね!」
ラウに抱き着こうとしている真世に向かって、ラレアが水を差す。
「自己紹介もいいけどさ、そろそろ移動したいんだが」
「ええ、どうして?」
「さっきの連中、全員殺してないからさ。気が付かれたら困る」
「なるほどね・・・?じゃあ、移動しよっか、ラウちゃん」
「はい」
「つっても3人じゃさすがにバイクで移動するのは危ないよな、マヨ運転できる?」
「まあ、できるわけないよね」
「だよな」
「・・・あの、私をこの森の奥の湖まで連れて行ってもらえませんか」
「なんだよ突然」
「まあ、ここに居ても何も始まらないしいいんじゃないかな?気になることは後で聞けばいいよ」
「それもそうか、じゃあさっさと行こうぜ」
「ありがとうございます」
謎の集団から謎の少女を救った真世たちは、こうして森の湖へと歩を進めることとなった。