4話 暗闇の少女
バイクは、夜風を切って荒野を駆け抜け、平原を過ぎ、森の細道を走る。ただの荒れ地を走っている時に比べ、バイクの揺れもおさまっていたので真世は口を開いた。
「ところでさー、どこに向かってるの?」
「ああ・・・今からお前を売りに行くんだ!」
「はい!?」
「冗談だよ冗談だから揺らさないでくれ本当に事故っちまう!」
タチの悪い冗談を聞かされ、真世は本気で焦ってラレアを全身で揺さぶった。
「何考えてんだ!・・・ってのもあたしが悪かったけどさ、転んだらメット被っててもタダじゃ済まんからな!?」
「こんな右も左もわからない状況でそんなこと言っちゃやだよぅ!」
「いやー、ほんとすまんかった」
「冗談ならいいんだけどネ」
会ってから短時間で打ち解けた彼女たちはなんだかんだドライブを楽しんでいた。
「つか右も左も分からねーって話だけど妙に落ち着いてるよな?正直質問責めにあうのも覚悟してたんだけど」
「私って考えるの苦手だからさ、何が起こってるのか未だに頭が追いついてなくてね」
「まあ大体そんなもんだとは思ってたけどマジか・・・」
「知りたいことなんて帰れるかどうかってくらいだしね」
「あたしには分からないし、そのくらいの気持ちならこっちも気楽でいい・・・っとぉ!?」
ラレアが急にブレーキを踏む。真世が前のめりになり、ラレアの後頭部に激突した。
「いってぇ!なんなんだよ!」
「なんだって聞きたいのはこっちだからね!?急ブレーキは危ないって!」
「いや、そいつが飛び出してきたから、ブレーキ間に合わせただけマシだと思うぜ?」
そう言いつつラレアが指さす先にはボロボロの布切れをまとった小さな女の子が尻もちをついていた。ラレアは少女に話しかける。
「おい、大丈夫か?なんでこんな時間にこんなところ歩いてる」
「・・・!」
その少女は、辺りを見回すと、足を引きずるようにして森に入っていこうとする。
「おい、待てよ、せめて返事くらい」
「見つけたぞッ!こっちだ!」
突如男性の怒号が飛び交い、複数の足音が近づいてくる。男性の集団の先頭に居た人物が問いかけてくる。
「おいお前ら、ボロきれまとったメスガキ見なかったか?」
「なんだお前ら」
「我らはグッネム商会の自衛団である」
知らない名前が出てきて話についていけなさそうな真世はラレアに問う。
「誰なの?」
「ああ、大雑把に言うと人身売買を主にして荒稼ぎしてるクズ共だよ・・・おい真世、お前ちょっとさっきのガキ追いかけて来い」
「え?心配だし別にいいけど、ラレアちゃんは?」
「奴隷制度はこの国には無いんだよ・・・!そんであたしは奴隷商人が大ッ嫌いだッ!行け!」
「う、うん、後で私のところに来てね?絶対だよ!」
あまりのラレアの気迫に圧された真世は、そそくさとバイクを降りる。
「追え!横取りする気だ!」
「お前らはあたしと遊んで行けよなあ!SIVADINE、起動!」
背後で派手な乱闘が起こりだしたのを尻目に、真世は少女を追うのだった。
「おうい、どこに行ったかなあ」
「・・・」
「あ、そこにいたんだね」
真世は、木陰でうずくまって、じっとこちらを見据える少女を見つけた。
「こな・・・いで・・・」
「怖がらなくていいよ、さっきの人たちとラレアちゃんが喧嘩始めちゃったけど、ラレアちゃん強いんだから」
真世が怯える少女を抱き寄せようとしたところで、ラレアの声が聞こえる。
「一人そっち行ったぞマヨ!とりあえず隠れろ!」
「ええ・・・えっと、今はとりあえず一緒に隠れよっ」
「・・・」
睨みつけながらも従う少女を連れて、忍び足で隠れられる場所を探す。が、足をひきずっていた少女が転び、音を立ててしまった。
「そこか!逃がさんぞ!」
「クソッ、待てよ!」
こちらの位置を掴めていなかった自衛団員がこちらに向かってくる。それに気づいたラレアもこちらに向かっているようだが、足音が少し遠い。
「大丈夫?動ける?」
少女は、顔を引きつらせて足を押さえている。足音はすぐそこまで来ている!
「うまくいくかな・・・」
おもむろに立ち上がった真世は、自分にできることを考えていた。
忙しくなくなったので更新頻度上げていく予定です。酷評でもおkなのでコメントをくださるとうれしいです